ぼくたちと駐在さんの700日戦争

 

  
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お待たせいたしました。どれだけの方が待っていたのか、よくわかっていませんが、2章スタートです。

最近、犯罪の若年化がすさまじいですが、こうやって読み返すといい時代でした。
こんなことが許されていたんですからねぇ(許されてませんでしたけど)。


ぼくたちと駐在さんの700日戦争

2章『万引き疑惑』


第1話 バター騒動



butter.gif

僕たちは、宣戦布告の回答として、駐在さんの机の上に12冊の○○ファンを並べてきました。
西条くんは、僕の自転車の後ろに乗り、逃げろ、だの、飛ばせ、だの好き放題言っていましたが、しばらくすると、またなにやら悩んでいるようでもありました。

「西条、よかったのか?あの本、高いんだろ?」

すると西条くん、
「え?大丈夫。あれくらい暗記してるから」

どうやら悩みはそれではないようです。
しかし暗記って、エロ本だから。しかも何百ページあるでしょう?

「お前なぁ。もっと他のもの覚えろよ。そんなもん暗記する脳細胞があるんだったらさ」

「うーん・・・・。まぁ、好きこそモノの上手なれってな。得意不得意があるんだよ。脳にも」

どういうモノの上手なのでしょう?
こいつの脳の9割は煩脳といわれる脳にちがいありませんでした。

しかし

「あ。お前らも読みたかった?」

う・・・・。そこを言われると弱い。

「たださ・・・あの本・・・」
西条くんが続けました。

「・・・こないだのより、もっとすげぇテクが書いてあるんだよなぁ・・・。大丈夫かな、奥さん」

またそっちか?
テクってなんだ?テクって?『縄に××××する女たち』より、すごいテクか?

「いや・・・・大丈夫ってのも困るなぁ・・・」

コイツがなにを困るのでしょう?

「またそれを悩んでたのか?お前」

「いやいや。今回は違うよ。もっと深刻なこと」

「なんだよ。話せよ」

コイツのことですから、作戦にどんな影響があるかわかりません。

「いやぁ。あの中で1月号だけな・・・・」

「うんうん」


「バターとか塗っちゃってるんだよね~」


「はぁあ?」

「そいつがさぁ、乾かなくて

なぜバターが塗ってあるか、と言いますと、一時期そうした本の「黒塗り部分」がバターで落ちる、と、まことしやかにささやかれたことがあったのです。むろん、とんだガセネタなんですが。
バターは油分なので、ずっとシミとして残る・・・・らしいのです。あくまで聞いた話ですが。

「お前ねぇ、それを置いてきたわけ?」

「え?12冊揃えろって言ったのお前らじゃん!」

いや・・・。確かに言ったけど。それなら11冊でもいいものを・・・・・・。

 はぁ~・・・・・

西条くん以外、全員が溜息をついた理由を、彼はまったく理解できないようでした。

「それもな、ほぼ全ページなんだよね~・・・」

1ページだめならあきらめろよっ!

なぜ全ページ試す!?

「え?試すだろ?普通」

コイツの「普通」がわかりません。

いずれにせよ、とんだ恥さらしな挑戦状となったことだけは確実でした。


  2章 第2話へ続く この「1月号」というのを記憶しておいてください


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第2話 バター騒動(2)


翌朝、僕たちは例によって駐在所を避けるために、回り道の急な坂を登らなくてはなりませんでした。
それにしても、高校生にして、すでに警察を避けて通るって・・・・。
人生にモワモワと暗雲がたちこめる気分が、さらにペダルを重くしておりました。

なにしろ「バター付き」の挑戦状です。よりによって・・・。
言うまでもなく、バターは黒塗り部分だけに塗られているわけで、その目的は、素人目にも明確。
そこだけ「シミ」・・・・・。
それが全ページ・・・・。西条・・・・・。

幸いにして、その朝、駐在さんと会うことはありませんでした。
しかし、あの駐在さんが、そのままなにもしない、というのは考えにくかったので、僕たちはさらに次の策をねっておりました。

予想は当たりました。

それは全授業が終わり、下校する時のことです。

ところで、僕の自転車がママチャリであることは、この戦いの前哨戦『俺たちは風』で書いた通りなのですが、覚えていらっしゃるでしょうか?
このために、僕は最後まで駐在さんから「ママチャリ」と呼ばれることになったのですが、当時の男子生徒の大半は、変速スポーツ車に乗っておりましたから、そういう意味ではちょっと変わっていました。

自転車を置く駐輪場は、特定の場所指定はなかったのですが、登校の時のグループ単位で停めていくため、男子と女子が奇麗に分かれていまして、それぞれ「男子置き場」「女子置き場」と呼ばれていました。

さて、部活も終え、友人と2人で下校しようとすると・・・

 自転車がない。

 WHY?


「なぁ、今日、自転車で登校したよな?」
「ほかに手段ないだろ?」

盗まれたのか?しかし、なぜ、とりたてて奇麗でもない、しかもママチャリが?

と、自転車置き場を見回すと、ありました。
なぜか、女子置き場にポツンと、僕のママチャリ。

 ?????

すると友人。
「おい、荷台になんか積んであるけど」。

ほんとだ。なんだろう?
と、自転車にかけよりますと・・・・。

なんと。それは『○○ファン』の束!
4冊ほどが、荷造り紐で、ガッチリと荷台に結ばれています。

 やられた!!

しかもそれは女子置き場。まわりのほとんどの自転車がない、ということは、まわりの女子のほとんどがそれを目撃した、ということ???

僕は顔面蒼白。クラクラしました。

「と、とにかくはずさないと!」

「そ、そうだな、まだ女子が来るからな!」

ところが。ゴム紐と違って、荷造り紐のとけないこと。相当にガッツリ結ばれているのです。

その間にも、ちょくちょくと女子達が自転車をとりに来るものですから、その都度、僕たちは、実に不自然な姿勢で荷台のエロ雑誌をかくすはめになりました。

「くそ~。とけねーーーーー!」
「駐在だな」
「やるもんだなぁ・・・」

感心してる場合じゃありません。

と、その時、ちょうど同級生の女子2名が、やはり自転車をとりにきて、僕たちに声をかけてきました。

「あれ?なにやってんの?」

 げ。。。

「な、なんでもねーよ!あっちいけよ!」

「あ。。アヤシ~~」

いつもはこっちから近寄りたい女子も、この時ばかりは違います。

「いいから、こっちくるなよ。さようなら。明日また会おうね!」

「なにかかくしてるゥ〜」

「かかか、かくしてねーって!あ、愛してるからコッチ来るなっ!また明日。ね!ね!」

ますます近づいてくる女子たち!絶対絶命!
こんなの見られたら、明日から学校に来れません。普通のエロ本ならともかくなんてったって「○○ファン」。そりゃ表紙からして違います。僕たちはガードを固めました。

しかし

「ナニかくしてん・・・・・・・・・・」




 目撃。


fm-fan.gif


あゝ、お母さん。
今日という日まで僕を育ててくださってありがとうございました。僕の人生は、今終わります。
せめて僕の葬式には、西条はぜったいよばないでください・・・・。
(ボヘミアン・ラプソディーより)







「サイッッッテ━━━━━━━!!!」






「ちがうんだ!これは・・・これ・・・・は・・・・!」

女子たちは逃げるように去っていきました。

「ちがうんだよー」 だよー・・・・  だよー・・・・  だよー・・・・ だよー

僕の声は、むなしく自転車置き場にこだまするのでした。


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第3話 大応援団(1)

よりによってクラスの女子に、超エロ本『○○ファン』の山積みを目撃されてしまったあわれな高校生「僕」。

山積みしたのは、言うまでもなく駐在さんであろうことは間違いありませんでしたが、あの制服で、学校に入って来てもくもくと自転車に結びつけてたんでしょうか?
想像を絶するおまわりです。

あゝ、そんなことはともかく、明日から学校では「変態」として過ごさなくてはなりません。
「前科者」の上で「変態」・・・・。もう青春のロマンスはクラス内にはいない、と覚悟しなくてはなりません。
オマケに、まだ紐はとけねーし。

と、そこに本来の「変態」、西条くんが部活を終えて仲間とともに下校してまいりました。

「西条ぉぉぉぉぉ~」

「お。お前ら、なにやってんの?そんなとこで?」

まったく同じシチュエーションでありながら、さっきの女子との差!
女子はピンクな声でしたが、こいつは黒です。

我々が事の成り行きを話しますと、彼は意外なことに爆笑するでもなく、腕組みなどして○○ファンの束を見つめているのでした。

「う〜む」

西条。考えなくていいから。はっきり言って無駄だから。

「う〜ん・・・・」
なお唸りつづける西条くん。

「あのさ」
「なんだよ?」

「その荷造り紐が荒縄みたいでなまめかしいよな」

だから・・・・考えなくてよかったのに・・・・。

しかし、メンバーの一人がやおらポケットからライターを取り出すと、その紐に火を放ったのでした。
めでたく雑誌たちは「緊縛」から解かれ、晴れて自由の身に。

西条君が仲間をひきつれてきたので、総勢6名となった僕たちは、男子置き場に自転車ごと移動し、さっそく対策を話し合うことに。

「なんかさぁ。今回のは、敵にタマあげただけみたいになっちゃったな」

「誰だ?まとめておいてこよう、なんて言い出したのは?」
西条くんの質問に、残りメンバー全員が一致して彼を指さすと

「え?俺だっけ?」

そうです。そもそものアイディアは西条くんでした。

「まぁ、作戦は失敗もあるさ。それより、次の行動にいつうつるか、だな」
と、とりなしたのも当の本人。

事実、僕たちは、度重なる失敗に、少々へこんでおりました。
なにしろ僕は、西条のおかげで「前科者」の「サイテー」の「変態」です。

「逆襲してくるってことは、ききめはあったってことなんじゃないかな」

確かに。それは言えていました。

しかし問題は残り8冊。
駐在さんが、これをどう使って来るかが問題でした。うち一冊はバター付き

そこで僕たちは、速攻で次の作戦に移ることにしました。

とりあえずは「駐在さんの一日」を調べること。

なんか、小学校の自由研究みたいな微笑ましい話ですが、目的が違います。

幸いにして、その6名の中には、面のわれていない2名がおりましたので名誉の抜擢。
作戦の成功を誓い合った我々でした。

 ところがところが!

思わぬことで、その日のうちにこっちの逆襲のチャンスがまいりました。
神様は見捨てていなかったのです。たとえ「サイテー」の「変態」の「前科者」(順不同)でも・・・・。

それは、この会議から、わずかに数十分後のことだったのです。



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第4話 大応援団(2)

我々が駐輪場でウダウダしていると、さらに下校してきたメンバーが加わり、ウダウダは、9ウダウダに膨れ上がりました。

そこにバレーボール部の連中がランニングからもどってまいりました。
そこには2名ほど我々の「メンバー」がいたのですが、彼らはランニングの列からはずれると、すぐさま報告に来ました。

「あのさー、駅に駐在さんがいたぞ。なにやら私服だった」

「え!ほんとか??」

これは聞き逃せません。速攻逆襲のチャンスです!

「間違いないだろうな?」

「ああ、たぶん、電車に乗るんだと思うよ」

我々は顔を見合わせました。そして言うまでもなく、即逆襲の準備にとりかかったのです。

「次の電車までは?」

「まだ30分以上はあるぜ」

田舎のことなので、電車の間隔は非常に長く、また行き先も「上り」以外は、ほぼ考えられません。

僕たちは、30分以内で一旦校内にもどり、「大道具」を用意する必要がありました。
しかし、僕たちには、シチュエーションごとにイタズラの「定番」がありましたので、その要領のいいこといいこと。これをもっと他のものに向ければ、きっと全員大成したに違いありません。

「あと10分だ!急げ!」

準備した大道具をかかえ、駅へととばす僕たち。
駅は、学校からは近く、自転車では、わずか5分もかからないところにあります。また、駅まではずっと下り坂であるため、2人乗りを混じえた僕たちには、実に便利でした。

駅前にすべりこむように到着すると、なにやら怒鳴り声が・・・。

「こらぁ!二人乗りはいかんぞ!
 ・・・・・って、またお前らかぁ・・・・・」

駐在さんです。
駐在さんは、2人乗りをしていたのが僕たちだとわかると、かなり落胆したように肩を落としました。

「おまわりさん、今日、非番なんですか?」

「当たり前だ。あんなこと公務中にできるか」

あんなこと、とは、自転車にエロ本を縛り付けたことでしょう。
私服でやってたとなると、もっと怪しいおっさんですけど。

「お?お前、西条!」

どうやら西条くんと駐在さんは初対面ではないようです。もちろん、原付での速度違反では面識があるはずなのですが。
それ以外にも、警察関係者とどういう面識があっても、まったく不思議じゃないやつでした。

「お前、死んでたんじゃないのか?」

「え?そうなんですか?」

西条くんは、我々が言い訳の為に彼を殺したことを知りません。

「そうなんですかって、お前、本人なのに知らないのか?」
ふふんと、にやつく駐在さん。

「おまわりさんも馬鹿だなぁ。本人だから知らないんじゃぁないですか」

「う・・・・」

西条、一本!

「おまわりさん、電車でどこかいかれるんですか?」

「あ?ああ。ちょっとヤボ用があってな。○○市までな」

○○市は、県庁所在地。電車では1時間以上もかかります。
我々は、おまわりさんがこの「長時間電車に乗る」ことに歓喜しました。なぜ?
すぐにわかります。

「ところでお前ら、せこいいたずらしてんじゃねーぞ!」

「おまわりさんこそ!僕はおかげで、学校じゃ変態扱いされそうなんですからね」


この時、駐在さんは、確かにニヤリとしました。
おそらく、自分の作戦が的を得たことがうれしくてしかたないのでしょう。

「お、ママチャリ。お前、トランペットなんかふくのか?」
僕の自転車のカゴのトランペットのケースを見つけて、話をそらす駐在さん。

「ええ。すぐにわかります」
「すぐ?」
「いえ」

「ふーん。どんなやつもひとつくらい芸があるもんだな」

カチーン!

でも今はがまんがまん。西条くんが僕の肩をポンポンとたたきました。

そこにのぼりの電車が到着し、話は中断。駐在さんも僕らもホームへと入りました。

「なんだ。お前らもどっか行くのか?」

「いえいえ。僕らは、ホームまで見送りだけです」

「ふーん。見送りねぇ」

実は、ホームに入る時、僕たちは駅員さんとひともんちゃくがありました。
手荷物が大きすぎる、という忠告です。
が、これはホームまでで電車には乗らないことを伝えて一件落着。
もちろん、駐在さんは、そんなことは気にもとめませんでした。

やがて駐在さんは、僕たちにさんざん小言を残して電車に乗りました。
僕たちは、ホームから電車の中の駐在さんにさかんに声をかけました。
実は大声を出しているフリだけで、たいしたことを話しているわけでもないのですが、さかんに指などをさして、駐在さんの気をひきました。

駐在さんは、電車の窓際にきて、窓を開けました。

「あ?なんだって?」

「おまわりさ~ん。こっちこっち~!!」

「だからなんだってんだ?あ?」

窓から身を乗り出す駐在さん。
そして発車のベルがホームに鳴り響きました。

それは逆襲のベルでした。

僕たちは、用意してきた横断幕を広げました。その長さ6m!
これは高体連用の応援団のものを拝借してきたものです。

そしてシンバルを高らかにならし、トランペットでファンファーレをおもいっきり吹き鳴らしました。
電車の中のひとたちがいっせいにこちらを見ています。

そして全員でエール!

「♪がーんばれ、がーんばれ、駐在さん!」

横断幕にはこう書いてありました。




 おまわりさんガンバレ!!エロ本ありがとう!!




直後、電車は扉を閉じ、
驚きで声も出ない駐在さんと、爆笑する乗客たち、
そして1時間にも渡る「恥ずかしさ」をつんでホームを後にしたのでした。


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