ぼくたちと駐在さんの700日戦争

 

  
最新話(3/24) 改訂中(8/7) 最新記事(3/18) ラジオ(3/20) アジト教室14 掲示板

この年、我が県警にも『少年課』なんてもんが設置された。

それだけ全国的に少年犯罪が深刻化してきていた、ということだ。

我々も少年による犯罪を報告しなければならないことになったわけだが、

「はあ〜?自転車で暴走〜?」

「ええ・・・まぁ・・・・・あ、でも58km出てまして」

「君のとこの報告はもういい。次!」

おかげで、署内での報告会議では恥をかきっぱなしだ!

キャツらも、もうちょっと、レッキとした犯罪をしてくれればいいものを、

ビミョウ〜なとこだけついてきやがる。

まぁ、全部『公務執行妨害』にしてやれば、それでいいんだが、

「そんなの、可哀想じゃないの」

加奈子がなにを気に入ったんだか、やたらヤツらの肩を持つ。

特に、あのドスケベの西条がお気に入りのようで、

なにかと言えば、

「若い時分のアナタによく似てるわ。ウフ♡」

「う・・・・」

そう言われると、俺も反論ができない。

だが、よくよく考えれば、

「あんな変態少年と一緒にすんなっ!」


しかし、西条は、問題も多いヤツだった。

妻である加奈子が好き、ってとこもそうなんだが、

西条の住んでるとこの管轄内では、真っ先に名が上がるほど有名な不良だった。

一度、ヤツの所轄の生活安全課のヤツと西条の話に及んだことがある。

「・・・・ああ。西条はウチの所轄の高校の生徒ですよ」

「ですよね。なんか問題おこしてませんか?」

「特には・・・。まぁ、しょーもないことはやらかしてますが」

「そうですか・・・・。でも、注意しといた方がいいですよ」

居住地A市での評判は、すこぶるよろしくない。

「あ!下着泥棒とかですか?」

「ちがいますって・・・・」

ことは主に暴力沙汰だった。

「へえ〜、あの西条が?」

「あんまりひどいので、市内の学校に入れなかった、ってくらいですからね」

「へぇ〜」

俺にとっては、ビックリ仰天の話だった。

西条は、確かに隙のない、いかにも武術の心得のあるような雰囲気はあるものの、そんな大それたことをするようには思えなかった。


「あの西条くんが?」

「ああ。中学までは喧嘩三昧だったらしい」

栗林さんの報告書には、「地元高校生」としか記載されていないから分からないが、

確かに、去年あたりから、暴力沙汰がチラホラ起きている。

警察に報告が上がるほどの学生の喧嘩沙汰というのは(当時は)珍しい。

すなわち、病院が関わった、ということだ。

その情報は、意外な方面から裏打ちされることになった。

「あー、西条クンって子、ものすっごく強いらしいわよ?」

夏休みでやって来ていた美奈子ちゃんだ。

「なんでそんなことを?」

「あの子たち、言ってたもの。キングギドラより強いって」

「キングギドラ〜〜〜〜〜〜???」

<↓キングギドラ(画像検索したら出て来た)。強そうではある>
king-gidlla2.jpg

<↓正キングギドラ。確かに似ている>
king-gidlla1.jpg

「んなわけあるか!キングギドラの引力光線は最強なんだぞ!」

「アナタってば。なに本気になってんの?」

「うっ・・・・・!」

俺は、ゴジラ怪獣の中じゃ、キングギドラが一番好きなのだ。

「あ。お義兄さん、ひょっとして妬いてるんじゃ〜?」

「美奈子ちゃんまで!バ、バカ言うな!」

そうか。

あの西条ってヤツ。ただ者じゃないとは思ってたが・・・・。



とりあえず、女房の下着は、今後は部屋干しさせることにした。




その2月ほど前だったか。

西条は鮎の密猟者と一戦交えているが、

これが初めて正式に県警の調書にヤツの名前が出た「事件」だった。

もっともこの時は、相手は50過ぎのオッサンだったし。無法者の孝昭と一緒だったからな。

それも、

「俺がやっつけた後に、孝昭がひっとらえました〜」

「なんだとぉ!ザケんなよ?テメェは俺が倒した相手なぐってただけだろーが」

「なにぃ〜い?」


「オマエらなー・・・これ、調書だから。な?正直に答えろ」

「だから正直に、俺が倒して西条が便乗したって言ってんだろが」
「ふざけんなよ!孝昭!」

とかいった調子だったので、どっちがどう強いのかわからなかった。

そもそも、調書にどっちが強いとかは、当然ながら記載する場所もない。


「・・・・あのな、西条。孝昭。オマエらは、起訴されてんの。わかるか?起訴」

「「起訴?」」

「だから、訴えられてんのはオマエらなわけ」

「「はぁ〜〜〜〜〜?」」

ヤツらは、密猟者を捕まえて表彰されるとでも思っていたらしいが。

密猟者の側が、高校生に暴力を振るわれたというので逆に訴えた。

たとえ相手が容疑者であっても起訴はできる。(←本当)

起訴された以上は、警察は調書をとらなくてはならない。(←本当)

「あ・・・、思い出しました。倒したのは孝昭くんです」

「いえいえ、俺なんか西条くんの大活躍を草葉の陰で見守ってただけで〜」

「またまた〜、謙遜すんなよ〜、孝昭クン〜〜」

「西条クンこそ〜〜」

「オマエら・・・・・・・」

一転、譲り合い。


結局、この件は傍観者であった丹下を第三者とみなし、正当防衛を主張することでことなきをえた。

密猟は現行犯であるから、一般人にも逮捕権があるのだ。(←本当)

が、それはそれで、

「先輩がた〜。ボクがいなかったら、2人とも犯罪者ですからね〜?」

恩を売る後輩。

「うっせーな!」「なんにもしなかったヤツがいばってんじゃねぇよ!」

「あーーーー、そんな態度でいいんですか?命の恩人に!」

「なにが恩人だ!」「フザけんな!」

「あ、おまわりさん。さっきの証言、間違いでした〜〜〜」

「「ジェミーーーーー!!」」

「・・・・じゃ、もう一度聞きますが、あそこで一番活躍したのは?」

「「ジェミー様です・・・・」」

「ん?よく聴こえませんけど」

「「ジェミー様です」」

「わかってればいいんですよ〜♪」

「「クソ・・・・」」

「クソじゃなく起訴です」

「「誰が上手いこと言えと?」」

分かったことは、

「オマエら、友情うすいな〜・・・・」

「「「それほどでも〜〜〜」」」

「褒めてないから」

この件では、俺も漁協から感謝状を受け取ることになった。

俺は、現行犯逮捕直前まで持っていった2人の少年こそ受け取るべきと主張したのだが、

西条と孝昭は、これを拒否した。

理由はよくわからんが、


「・・・そんなことより、奥さん、最近、洗濯物、外に干しませんね?」

「黙りやがれ」




駐在所員が最初に赴任して、地元のことを聞き出すのは、地場にある外食屋だ。

俺の場合、そこがたまたま河野の親の店、『カナリ屋』だった。

駐在所は、ある程度、会社でいうとこの「交際費」を認められているので、けっこう出前もとる。

前任の栗林さんなど、キッチリ毎月満額つかってた。

そんなんで、

「毎度ど〜も〜〜」

「おお、河野。ゴクロウ。ちっと聞きたいことがあるんだが?」

「なんでしょ?」

河野のヤツは、ちょくちょく出前持ちに来ていたので、俺の貴重な情報源だった。

なにしろコヤツ、とにかく口が軽い。

「西条ですか?あー、強いっスよ?俺といい勝負くらい」

「なんだ。じゃぁ、たいしたことないな」

「どういう意味っスか?」

で。口の軽い河野が言うには、だ・・・、

「いや、俺も中学違うから、最初は知らなかったんスけどね・・・」

「うん?」

河野が1年生の頃、つまり西条も1年生なわけだが、

後ろから肩に手をかけようとしたら、いきなりその手を掴まれて捻り上げられたのだと言う。

「後ろから?」

「ええ!アイツ、入学した頃は、やたらピリピリしてましたからね〜。今はそんなことないかも知れないけど」

「ほぉ〜・・・・・」

まるで剣道の達人のような話だった。

河野曰く、孝昭でもその域には達してないと言う。

「まぁ、俺も、さすがにそこまではね〜、なかなか」

「ウン。お前のことはどうでもいいんだが」

「なんでっスか!?」

河野ってヤツは、商売人の息子らしく、とにかく口が軽い。

一度しゃべり出すと、次から次に聞いてないことまで教えてくれる。

便利なヤツだ。

「そうそう!アイツ、箸で虫つかまえられるんっスよ!すげぇっしょ!」

「箸で? カブト虫とかか?」

「・・・・・駐在さん。バカじゃないスか?」

「やかましい」

宮本武蔵が箸で蠅を捉えられた話は有名だが、

別に県警の剣道の上段者などにも、けっこう出来る人がいる。(←本当)

「西条は、剣道の心得はあるのか?」

「さぁ〜?そこまでは。俺は一中の佐々木小次郎とか呼ばれてましたけどね!」

「そうか。お前の話はどうでもよい」

「なんでっスか!?」

それはな。あきらかなウソが混じってるからだ。


「言われてみれば・・・・・」

一度、西条を町で見かけて、後ろから声をかけようとした時、

「ヤツは手をかける前に、俺の方を振り返ったっけ・・・・。あれは気配を察したのか?」

「ああ、そうだと思いますよ。西条、には敏感っスからね」

出前持ちから、あからさまに「敵」とか言われるとは思わなかった・・・・。



折りも折り、

西条のその「達人」ぶりを思い知らされることがあった。


「アラ、あの子。西条くんじゃない?」

「ほんとだ。確かに」

駅で時刻表かなんかを見ている西条の後ろ姿があった。

距離はおおよそ10m。

「お前はここにいろ。いいな?」

「アナタ。なにするつもり?」

そこから、なるべく殺気をただよわせて、ヤツの背後に近づいて行った。

「以前は、1m足らずで気づかれたが・・・・」

7m‥‥

6m‥‥

5m‥‥

4m‥‥

と、西条は、やおら振り向いたと思うと、


「あ!奥さ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん♥」



女房に気づくのかっ!?


それも10mも先の???



「・・・・あ。なんだ。駐在もいたのか」

「気づいてなかったのか!?」


ある意味、別の殺気が芽生えた。




孝昭というヤツ。

俺は、西条ほどには意識していなかったが

情報源の河野に言わせると、

「孝昭の方が、西条より強いっスよ!」

その理由がすごい。

「孝昭の方は、凶器使いますからね!」

いや・・・凶器って・・・・。

つまり、西条は凶器は使わない、ということか?


しかし、似たような「証言」は他にもあった。

少年課ができてから、学校とも緊密な関係を保つよう指示があったのだが、

管轄内に高校がある俺には勅命のようなもので、生徒指導の工藤先生とは、ちょくちょく一緒に飲むことになった。

「あーー、西条ね!うん!」

「ええ。学校ではどんなもんですか?」

正直、俺は教師は苦手なんだが。

「はは!大人しいもんですわ!まぁ、我々の指導が行き届いていると言いますかね〜」

自慢が多いヤツはもっと苦手だ。

指導が行き届いていれば、警察官に花火などぶっ放さないだろ。

「ま〜、去年までは、ホレ、先輩から目〜つけられたりして、暴力沙汰もチョコチョコありましたがな。西条のヤツは」

そこだ。

工藤先生が言うには、西条には暴力沙汰があったが、孝昭にはなかったという。

栗林さんの報告書によれば、孝昭は、入学早々、よりによって役所を襲撃して起訴されている。(※『桜月夜』)

後に起訴取り下げされているものの、その年に起こった管内の「少年事件」では最も重大なものだった。

上級生も、そこまでやるヤツには、手が出なかったのだろう、と思ったら、

「あまい!・・・・ヒクッo°O」

「はぁ・・・・。あまいですか?」

「おまわりさんれあ、高校生なんつーのはれ、そんらんじゃないんれすよ〜」

「先生、だいぶ回っておられますな」

高校教師との接待費用は県警から出た。

タダだと分かると、こういう輩は遠慮がない。

おまけに名前通り、くどい。

指令がなければ、おつきあいは避けたい相手だった。

「孝昭のヤツに手を出せなかったのはれすな〜・・・」

「はい」

「ヤツには、年子の姉がおりましてな?コイツがまた、手のつけられらいほろの不良女れして〜」

「ほぉ〜。姉が」

言われてみれば、思い当たることがいくつかあった。

孝昭のヤツは、西条並みにスケベではあるのだが、どっか女に「醒めている」ところがあった。

たとえば、女房が洗濯物を部屋に干したからといって苦情を言ったりはしない。

どこに干そうが勝手だろ。

「れ〜〜〜、その姉の顔が広くて、弟には手が出せんと!こういうわけれすわ。ヒクッo°O」

「そりゃ勇ましい女子高生ですな」

ある意味、加奈子を連想させる。

加奈子も荒れていた頃は、顔が広いあまり「無敵」だったものだ。

だから、

「ったく。弟が弟なら、姉もとんだ売女(ばいた)れすわ」

「会ったことあるんですか?先生」

「いや〜・・・・他校れすし、私立ですからな。ヒクッo°O」

酒の席とは言え、よく知りもしない女子高校生を「売女」呼ばわりする、この教師を俺は好きになれなかった。

ある意味、西条たちが気の毒なくらいだ。

「ありがとうございました。先生。そいじゃ今日はこれくらいでお開きに・・・」

ところが。ここで思いもよらぬヤツの名前が、工藤先生の口から出た。

「その女のイロってろがまた、我が校におりましてな〜」

「イロ?」

「ええ」

「高校生がですか?」

「ええ」

そのイロというのが、



またしてもママチャリかいっ!?



アヤツ、どんだけ〜〜〜〜〜!!


「なんか、その姉から下着をもらったとかもらわないとか・・・・」

「下着〜〜〜〜〜!?」

そう言えば!

駐在所に仕掛けられたあの下着は孝昭の姉のものだったのか!(※『夕陽の決闘』)

う〜〜〜〜む。


・・・なんだか、急に、

孝昭の姉ってのが、見てみたくなった。


<本日、土曜でツイキャスです!美樹ちゃんの設定がめんどい・・・


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