ぼくたちと駐在さんの700日戦争

 

  
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第6話 万引き疑惑(1)


逆襲がみごとに成功したとは言え、翌日の登校は、僕にとっては憂鬱なものでした。
なにしろクラスの女子に、自転車の荷台に満載した超エロ本『○○ファン』を目撃されています。
いまごろはきっと、女子の間では、僕はタイヘンなヘンタイとしてウワサになっているに違いありませんでした。

ちなみに僕のクラスは、38名ほどおりましたが、うち24名が女子、というたいへん恵まれた環境だったのですが、今となってはこれがアダです。
つまりはクラスの過半数が「変態扱い」するということなのですから。

教室につき、重い扉を開きました。

その瞬間の女子の凍り付いた雰囲気。

「あ、お、おはよーー」
つとめて明るく、しかし棒読みで挨拶する僕。

いつもはやかましいほどの女子たちは、誰ひとり、挨拶を返しませんでした。
それどころか、ただでさえうっとうしい男子から

「エロ本つんでたんだって?」

などという、いらぬ詮索まで入りまして、それはすでに女子だけではなく、クラス全体の話題であることが分かりました。
この雰囲気は、もう小学校の野良やぎ事件以来でしたねぇ。

しかし、男子がこの質問をしてくれたおかげで、弁解の機会が与えられました。
僕は、知りうる言葉の全てを使って、それが「西条のものである」ことと、駐在さんによって積まれたことを説明しました。が、後者については「おまわりさん」という職業からか、女子はこのことを信じようとしませんでした。

 おまえら、あの駐在を知らないからだ・・・。


ところで、僕達も健全(か?)な高校生ですから、なにも毎日が毎日、イタズラばかりを考えていたわけではありません。ちゃんと高校生としての生活があるわけです。
たとえ変態でサイテーで前科者でも学業はたいせつです。
すでにこの時、我々には中間試験が迫っておりました。

この日から数日後、僕は、西条くんと、村山くんという新キャラとともに、本屋さんにおりました。
言うまでもなく、中間試験の参考書を探すためです。

この日、あの忌まわしい事件がおきました。


 ”おい、西条”

どこからともなく声が聞こえてきました。

西条くんがキョロキョロしていると

 ”おい、ママチャリ”

僕のことをママチャリと呼ぶ人間はひとりしかいません。

するといくつかの本棚の向こうに

「駐在っ!?」

駐在さんは、本棚の向こうからさかんに手招きしています。
今日は制服です。駐在さん。

とっっっってもいやな予感がしましたが、なにしろ相手は国家権力。行かないわけにはまいりません。

我々が、
「なんですか?」
と声をそろえて駐在さんの前に行くと、へんにニヤける駐在さん。

そこはおりしも成人雑誌売り場
ああ、思い出してもいやになりますが、この話には「成人雑誌」がかかせません。情けない。

僕たちが駐在さんの真ん前まで行くと、駐在さんは、

「あのな・・・・」と小声で言うので、思わず顔をよせてしまいました。

駐在さん。
そこで、しめたとばかりに突如僕たちの二の腕をわしづかみにすると、

「お前ら!なにやってる!今日という今日は許さんぞ!」

グイグイと僕たちを店の外へと引きずっていきました!

「な、なんですか?いきなり!」

当然の質問には答えもせず、

「話は署で聴く!」


と言いながら、書店のあるじに会釈などして、我々をとうとう店外へと連れ出したのです。

もう店内は騒然!

そりゃそうです。
高校生が警察に腕をひっぱられて、連れ出されているわけですから。それも成人雑誌売り場。

いや。これってどう見てもエロ本万引きしてつかまったようにしか・・・・・・

  あ・・・・・!


     誰がどう見ても万引きの僕たちの運命は、2章-第7話へとつづく→


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第7話 万引き疑惑(2)
chuzai2-6.gif

なにもしていないのに、駐在さんに店の外まで引きずり出された僕たち。
もう店内は騒然。書店の店長さんは、なにごとかと店の外まで出て来ました。

「お、おまわりさん、その子たちがなにか?」

「いえ、こちらにおまかせください。ご心配なく!」

いやいや、ご心配なのはこっちだって!
そんな言い方したら誤解生むやろがー!!

我々のそんな気持ちも無視し、意気揚々と駐在所に向かうおまわりさん。
もう騒ぎは店の中だけではありません。そりゃ商店街を通る人、みんなビックリです。
だって、高校生が2人、おまわりさんに引きずられてんですから。そりゃ、なにごとかと思いますよ。

「テメェー!駐在!はなせ!ボケ!」

西条くんは、犯罪慣れ(?)しているせいか、捕まり方がウマい。
って、感心してる場合じゃないですよねぇ〜。
もう、この商店街歩けません。

幸いと言うか、駐在所は、この書店のはす向かいでしたので、距離はわずかに20mほど。
ふりむくと、書店の店長さんや、店にいた学生たちが、興味津々でこちらを見ていました。


ほどなく駐在所に到着し、

「座れ!」

ああ・・・なんてこのパターンの多いこと。

「テメェ!なにしやがる!」

息巻いているのは西条くん。僕はさすがにここまでの口はきけません。

すると駐在さん。やることをやってすっかり気分がいいらしく、ニコやかに

「まぁ。お茶でものんでけ」

「おちゃぁ???ザケんじゃねーぞ!俺ら、そんな暇・・・・」
と西条がどなっているさなかで

「お~い。加奈子ぉ~、お茶いれてくれ~」
奥さんをよぶ駐在さん。

「はぁ~い♡」
奥から奥さんの声。

「・・・俺ら・・・そんな暇、ありあまって困ってました

おいおい‥‥‥西条。なんで妥協してんだよ?

奥さんがお茶を運んで来る前に、駐在さんがいきなり本論に入りました。

「おまえら、こないだはよくもやってくれたなぁ」

「応援のことですか?」

「ったりまえだ!」

「いやぁ。僕たち、日頃お世話になっている駐在さんに、なんとかエールを送りたくて」

「ふん。エロ本ありがとう、のどこがエールだ? あ?」

そこへ奥さんが僕たちの分と、3つのカップを運んで来ました。

「うふ♡ いらっしゃい。またつかまっちゃったの?」

「はい~。つかまりました~♪」

西条。なにニコニコしてんだよ・・・。
捕まった顔しろよ・・・・。さっきの怒りはどこへいった?

「うふふ♡ はい、どうぞ♡」

「いただきますぅ~~~♪」

すでにヘロヘロの西条くん。
ああ。神様。どうして「男」をこういう動物に作りたもうたのでしょう?

いかんいかん。ここは僕がしっかりしないと!
すっかり駐在ペースで事が運んでいる。

「えっと、ママちゃり君でしたっけ? あなたもどうぞ♡」

「いただきますぅ~~~♪」


   直接対決というのにすっかり骨抜きの僕たち。
   このまま駐在ペースですすむのか?
   2章-第8話へつづく→


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第8話 万引き疑惑(3)


「お前は、もう下がっていいぞ」
駐在さんが、奥さんに向かって言いくさりました。

「あら。どうして?じゃま?」
奥様が、駐在に向かっておっしゃりました。

「オマエのほうこそ奥さんおいて下がれよ」
とは、僕たち2人の強い念でしたが、なにぶんにもまだテレパシーをマスターしていないため、せいぜいそれが満面に出ているだけでした。
むろん、目は口ほどにものを言いますので、駐在さんはそれを感じ取ったかもしれません。きっとスゲー目つきだったと思います。

「うん。俺はこいつらにちょっと説教があるから」

「勝手に万引き疑惑つくって説教たれる警官がどこにいる?」
例によって念力です。

「だって、このコたち、おもしろそうなんですもの♡」

おお!念力が少し覚醒していたか?

「まぁ・・・・。じゃぁ、邪魔するなよ?」
あっけなく折れる駐在さん。
どうやら奥さんに弱いのは、我々2名だけではないようでした。

しかし、奥さん傍観する中、大人げないヤツと大人じゃないヤツが向かい合っているのですから、そりゃ円満な会話がなされるわけはありませんでした。

「お前らのこと、ちょっと調べさせてもらったんだがな・・・」

「はぁ・・・。そりゃ光栄なことで・・・」

なにやら帳面を開く駐在さん。
なんと、こんな「公務ノート」に掲載されてるんでしょうか?僕たち。

「今までも・・・・いろいろとやってやがるなぁ。え?」

「ええ・・・まぁ。生きていればいろいろと・・・」

「ろくでもない、とまでは言わないが」

「はぁ・・・」

「ろくなヤツらじゃないな」

え?六?ん?どっちだ?
ろくでもなくはないが、ろくなやつじゃない?

「うまいですね。駐在さん」
「実はそれほどでもないんですけどね」
謙遜な僕たち。

「褒めてないからっ」

やっぱし・・・?

ここで奥さんがクスッ♡と笑いました。う〜〜む。カワユい。

「お前ら、前任にもけっこう迷惑かけてんのな」

前任とは、この駐在さんが赴任される前にいらっしゃったおまわりさんです。

「え?でも、捕まったのは駐在さんが初めてですが」
と、僕が言いますと
「あ。俺は少しあります」
と、さえぎるように西条くん。
やっぱりか・・・・。

「捕まってなくても報告書はあるんだよ!」

うーん。そうだったのか。

「お前たち、郵便局さんとかにも迷惑かけただろう?」

「はいー・・・・」

これは僕も思い当たりましたので、一緒に返事いたしました。
この『年賀状配達ボランティア事件』につきましては、番外編でまたふれたいと思います。
確かに僕たちは、この町せまし、とばかりに、いろいろ起こしておりました。

「お前たちもな。高校生なんだから、バカなことばっかりやってるんじゃない」

どうやらこれが本論みたいでした。
すかさず
「え?でも大人になってからやったらそれこそバカじゃないですか」

はぁ・・・と、溜息をつく駐在さん。それを見てまたクスッ♡と笑う奥さん。

「あのな。世の中には法律ってもんがある。それくらい習ってるだろ?」

「はぁ。でも、僕たちまだ17条までしか習ってないんで、それ以降のことはちょっと・・・」

ここで奥さんがたまらず
「ぷっ♡」
とふきだしました。

と、そこへ・・・・・

書店におきざりになった新キャラ「村山くん」がおそるおそる入ってまいりました。

「あの~・・・・」

彼は僕たちが書店に置いて来てしまった鞄を持って来てくれたのでした。
と、言うか、真の目的は言うまでもなく奥さんを見るためだとは思うのですが。

駐在さん。村山くんに向かって
「おー。お前も入れ!」

彼は、大応援の際、横断幕を持っておりましたので、どうやら駐在さんには面がわれているようです。

「いえ・・・僕は・・・。これ届けに来ただけですから・・・」

「悪いなぁ。村山。とにかくコイツがさぁあ」
と西条くん。

「コイツって誰だ?本官のことか?あ?」
当然憤慨する駐在さん。

それを無視して村山くんが
「うん。いいんだけどぉ。本屋さん、たいへんなことになっちゃってるんだけど・・・」

「えっ!?」

僕たちは顔を見合わせました。


  第9話へ続く 話はとうとう商店街をも敵にまわす展開へ!


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第9話 万引き疑惑(4)

「え!本屋でなにかあったのか?」

「いや・・・。あったのはお前たちの方なんだけどさ。今、本屋さんに、電気屋さんとか、集まっててさ」

「うん、それで?」

「いろいろと話してるの聴いちゃったんだけどぉ・・・」

村山くん、口ベタなので、なかなか要領を得ません。

「うん、なんて話してた?」

「なんかねー・・・。あいつらは前から怪しいと思ってたとか、これからは出入りさせないとかぁ・・・・」

「えっーーーーーーーー!」

僕たちはすかさず駐在さんをにらみ返しました。

すると奥さんが
「あら。なにかしたの?」
と聴いてくださったものですから、
僕たちは、なんの理由もなく突如ひきずり出され、現在万引き疑惑がかけられていることを、思いっきりオーバーに伝えました。

「えー!あなたそんなことしたわけ?」
奥さんが駐在さんに問いただしました。

「いやな・・・ちょっと今回は・・・薬がききすぎたかな・・・」

「薬じゃないですよ!いったいどうしてくれるんですか?」
「そうよ。それはあんまりだわ」。

「あ・・・後で商店の人には俺から言っとくよ・・・すまん」

こんなしおらしい駐在さんを見るのは初めてでした。やっぱり美人奥さんには弱いんですね。
しかし僕たちには公然と文句を言うチャンス到来ですので、次から次にたたみかけます!

「だいたいおまわりさんは大人じゃないですか!!」
「すまん・・・」

「俺たち、ずっとこの町で生きて行くんですよ!?」
「すまん・・・」

「あーあ。これで参考書も買えないやぁー」
「すまん・・・」

貸りてたエロ本返しませんからね!」
「すま・・・・あ?」

どさくさにまぎれ作戦、失敗。

「あれ?あの本やっぱりあなたのだったの?」
と思ったら意外や意外。にぶい奥さんのおかげで成功しそうです!

「ち、ちがうって!こいつらのだよ」
弁解する駐在さん。

すかさず僕たち。
「えー!僕たち高校生ですよー。あんな本買えるわけないじゃーないですかー。おまわりさんは大人だからー」

「ふ~ん。そうだったのね」

「い、いや、加奈子、違うって!こいつらにのせられるなよ」

美人だけど、ホントににぶい奥さんです。

「僕たち、大人の趣味にまでは口出しませんから」

「んなっ!なんだとぉーーー!!」


激怒しながら慌てまくる駐在さんを尻目に、

「とにかく僕たち、本屋さんに行って来ますから!」

ここは言い捨て勝ちです。

後の事態を見守りたかったのもやまやまでしたが、やはり本屋さんの事態は見過ごせません。
いずれにせよ自転車は本屋さんの前に停まっていたので、行かなくはならなかったのです。

自転車をとりにまいりますと、村山くんの言う通り、本屋さんと、電気屋のおやじと、レコード屋(なつかしい!)のおやじが集まってミニ商店街会議を行っておりました。
いずれも馴染みな人たちです。

レコード屋さんがたずねました。
「おー、君たち、なんかしたのか?」

どこか態度がよそよそしい。僕たちは思い切りむくれました。

「してませんよ!」

「でもなー・・・」

「してませんって言ったらしてません!濡れ衣です!」

「そうか?それならいいんだが・・・な」
これは本屋さん。
その目は、言葉と裏腹にすっかり疑っちゃってるわけです。

だいたいここの商店街のうち、本屋やらレコード屋は僕たち高校生が支えてるようなものなのに。失敬この上ありません。

帰り足、僕は例によって荷台に乗せた西条くんと話し合いました。

「なぁ。あの態度ゆるせるか?」
と、西条くん。

「許せねーなー。毎週少年チャンピオン買ってるのに」
「うん。俺も毎月○○ファン買ってるのに」

えーーーーっ!あの超エロ本を本屋で買ってるわけ????それも町内の???

「お前・・・勇気あるな・・・」

「褒めるなよ。バカ」

褒めてないから。バカ。

しかしこうして、僕たちは、商店街にも一矢報いることを固く誓ったのでした。


  第10話へ続く 商店街への逆襲開始!


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第10話 vs本屋(1)

その日、僕と西条くんは、本屋さんの事務室にいました。
あのいまわしい「万引き疑惑」のわずか数日後のことです。
僕たちの前には、本屋のご主人が憮然とした表情で座っていました。
僕たちは無言のまま、下を向いていました。

ご主人が不機嫌そうに言いました。

「すると、どうしても見せられないと言うんだね?」

「ハイ。絶対に」


僕たちが本屋さんの事務所にいるのにはワケがあります。

本来は、本屋さんにとって「お得意様」であるはずの我々が、駐在さんの突飛な仕返しによって「容疑者」扱い。
まぁ、お得意様と言っても、西条くんは「月刊○○ファン」ですけどね。なんで町内で買えるんでしょう?超エロ本。

しかし、いくらなんでも「次から出入りさせない」はひどすぎる!

僕と西条くんの結論は決まっていました。

もちろん「復讐あるのみ!」

僕たちは、国家権力そのものである駐在さんよりは、むしろこういう一般系への悪戯に長(た)けておりました。それでも、今まで町内で(少ししか)悪さをしなかったのは、そこが「普段利用する」からに他なりません。
が、「容疑者扱い」となりゃ話は別。絶対的に疑いをはらさなくてはなりません。
ついでに、やっぱり悪戯は、おもしろくなくてはなりません。

僕と西条くんは、決行の前日、数名の仲間を集めて工作にいそしみました。

なんの工作かと申しますと、「袋」。

2つのビニール製の袋(ちょうど旅行バックにチャックがついたみたいなヤツです)を準備し、わざわざそのチャック部分を壊しました。

「よーし。こんなもんでいいかな?」
「いいか。あまり開くようじゃダメだからな」

この几帳面さ! なぜ他の方面にはそうしなかったのかと、ホントに今さら悔やまれます。


さて、僕たちがこの作戦を決行したのは、中間試験がすでに2日後に迫った日のことでした。

あの日とまったく同じように、書店をたずねた僕と西条くん。

「あ・・・。」

本屋のご主人が、すぐに僕たちの来店に気づきました。
つまりは「要注意人物」ということなのでしょう。
面白くはありませんでしたが、こうでなくては困ります。

それから僕たちは参考書などを選ぶふりをして、しばらく店内をうろつき、自分たちがマークされていることを確認しました。

ほどなく、マークのはずれる棚の裏側まで行って、西条くんに合図です。

「いくぞ・・・!」

西条くんは無言でうなづきました。

そこから出口に向かっていきなり猛烈な

ダッシュ!ダッシュ!ダッシュ!

「あ!」


当然ながらマークしていたご主人もダッシュです!

「こら!待て!待たんか!」

普通、待てと言われて待つ犯人はいません。が、僕たちはちがいました。
自転車のところでマゴマゴしていると、すぐそこにご主人が追いついてくれました。
だって、このために自転車に2つも鍵かけたんですもん。

「おい、君たち!なにをそんなに急いでるんだ?」

「いえ。僕たち、次の列車に遅れるとたいへんなことになるんですよ」

「悪いが、ちょっとこっちに来てくれるかな?」

ご主人が僕たちの手をつかみます。

「いえ。僕たち、これに乗り遅れるわけにはいかないんで・・・」と言いかけますと、

「命にでもかかわるのか?」

「はい。命にかかわります」

この答えにすっかり激怒したご主人は、
「いいから!」と、凄むと、グイグイと我々を書店の中へと引っ張って行くのでした。
ちょうどアリジゴクが、アリを引きずり込むってとこでしょうか。


・・・・と、言うわけで、めでたく書店の事務所内です。

最初は、極力冷静にご主人。
「その袋を見せてほしいんだがな?」
僕たちが胸にかかえた袋に目をやりました。

「イヤです」
と、うしろめたそうに拒む僕たち。

「見せなさい!」と、今度は命令口調。
「絶対イヤです」と、頑なに拒む僕たち。

「すると、どうしても見せられないと言うんだね?」

「はい。絶対に」

ご主人。女性店員に、
「しかたない、駐在さんに来てもらいなさい」
と言いつけました。


待ってましたっ!


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第11話 vs本屋(2)

「後ろめたいことがなければ見せられるはずだろう?」

「後ろめたいだなんて・・・」

と、いかにも後ろめたそうに僕たち。

「じゃぁ、見せなさい!」
ご主人はとうとう強制執行!
無理矢理、西条 → 僕の順で袋をとりあげると、

「あ‥‥‥‥!」

それを机にドン!と置き、上から触診し、本らしき形状をとらえて「やはり」という表情をされました。

ご主人は、最初に西条くんの鞄に手をかけました。

「や、やめてください。お願いですから!」
と、めったにない丁寧語で必死の抵抗の西条くん!
聞く耳もたん!といった勢いでチャックを開いたご主人!

しかし、チャックは壊れていて、途中までしか開きません。

ご主人は、しかたなく袋に手をつっこんで、中身を一品ずつ取り出そうとしました。

が、ご主人、鞄に手をつっこんだとたん

「ん?」

眉間にしわをよせました。

ご主人が手を引きずり出すと、そこにビロビロとくっついてきたものがありました。

それは

『ハエ取りリボン』

haeribo.jpg
<黒いつぶつぶがみんなハエ!ここまで穫れるのは異常>

ハエ取りリボン、ご存知ですか?
紙製のリボンにトリモチがついたもので、そこにハエがとまるとくっついてしまう、という、最近あまり見かけなくなった補虫用具です。
僕たちの悪さには、このハエ取りリボンがかかせないので、ぜひとも覚えていただきたいファンキーグッズです。
普段はコンパクトに巻かれて納まっているのですが、僕たちはこれを少しだけ広げて入れておいたのでした。

ご主人は、手をブンブンふって、これをはがそうとしましたが、相手はトリモチ。そう簡単にははがれません。

「な、なんでこんなもん持ちあるいてんの?」

ごもっともな質問に西条くん、

「そんなの俺の勝手でしょう」。

これもごもっとも。

ご主人は、ようやくハエ取りリボンの呪縛からとかれると、さすがにベタベタした手を気にしておられましたが、こりずに鞄に手を入れました。

次にご主人が取り出したものは

西条くんの『母ちゃんのびろびろパンツ』。

「な、なんでこんなもん持ちあるいてんの?」

「そんなの俺の勝手でしょう」。

ごもっともごもっとも!

しかし。大異変は、ご主人が次の「ぞうきん」を取り出したときに起きました。


  モワ〜〜〜~ン


「ん?」


   2章-第12話へ続く 大パニック!

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第12話 vs本屋(3)



もうとっくにおわかりかとは思いますが、にぶいかたのために一応説明いたしますと、僕たちは、わざわざ店のご主人につかまるために、さも万引きして逃げるかのようなそぶりをしたわけです。
案の定、僕たちのことをすっかり疑っていたご主人は、まんまと捕まえてくださいました。「まんまと捕まえてくださいました」という敬語もヘンですが。

僕たちのかかえた袋、うち「西条版」には、いらない古本と、それをカバーする「しょーもないもの」を入れていて、なおかつ、それを1品ずつしか取り出せないように袋の口に細工をしてありました。
したがって、ここまではみごと作戦通りだったのです。ここまでは・・・。


しかし・・・


実はご主人が西条版の鞄を開いた瞬間から少し異変がありました。
真ん前にいたご主人は気づかれていたようですが、なにしろ「ハエ取りリボン」の攻撃に気を取られ、それどころではなかったのでしょう。

しかし「ゾウキン」はその「異変」を決定的にしました。それも期待をはるかに上回って。

デホッ、な、な、なんだ、この臭いは!ウゲッ


実は2日前のこと・・・。

♪ふぉぁんふぉぁんふぉぁん(回想シーン、ジングル)

← ← ← ← ←

西条くんは化学部のやつらを呼び止め
「なぁ。学校の薬品で一番刺激臭が強いのってなんだ?」
「うーん、アンモニアかホルマリンあたりかなぁ」

「じゃぁ一番悪臭なのは?」
「いろいろあるけど・・・イオウ、あたりじゃない?」

「じゃぁ、お前ら、それ合成して世界一臭い液体つくれ」

「そんなもんどうすんだよ?」
とは言ったものの、もともと化学部なんて部は気弱な帰宅部ですから、西条くんのこの「強制力のある提案」にまんまとのりました。
なんと言っても彼らは、学校で唯一、劇薬庫の鍵を開けられる特権者です。

意外なことに、わずか数時間でその「魔の液体」はできあがり
「いいか、西条。50cm以内でこの臭いを嗅いじゃダメだからな」
という『使用上のご注意』をつけられながら小瓶を手渡されたのでした。

「僕たち、化学部って言っても医療にはド素人だからな。人体にどういう影響があるかまったく保証できない
という製作者の心配をよそに、とりあえず「50cm以内で嗅げない激臭」ということに、僕と西条くんは狂喜しました。

それほどの激臭のあるものですから、当日、僕たちは『使用上の注意』を守り、袋の中で「魔の液体」をゾウキンに染み込ませたのです。
その際には、ちょっと目に刺激があるな、と思った程度だったのですが。

→ → → → →

ところが。

これが予想以上のデキだったわけです。

ゾウキン本体登場から、わずか数十秒で異臭は激臭に変わり、4坪ほどの事務所はまたたくまに異臭ワールド!

「んな、な、な、なんなんだ!ケコッ
びっくりする、というか、すでに正常な呼吸ができてないご主人。
そりゃそうです。その激臭は、すでに我々をもつつみこみ、仕掛けた僕たちでさえ、卒倒しそうないきおいなのです。

「うわぁ、た、たまらん!」
ご主人は、ゾウキンをこっち投げました。

「う、うわぁぁぁ、こ、こっちよこさないでください!、 ウゲェ!

とにかく目も開けていられないようなすさまじい刺激臭。この世のものと思えません。
生涯で嗅いだ臭いで、間違いなくトップの悪臭でした。

「ド、ドア・・・・・ドア開けましょう!」

悪いことに、この事務室は、開口窓がありませんでした。

するとご主人が
「だっ、だめだ!そんなことをしたら、店内に、ゲホッ、店内に臭いが、ウゲェ

ああ。立派な商売人です。もし、この騒ぎで亡くなっても、きっと語り継がれることでしょう。

「そ、そんなこと、ケホケホ、言ってる場合じゃ、ゴホッ・・・ウエ

「ぜっっっっったいにダメだぁ!うううううううううう」

もはや悶絶しそうなご主人。

「か、換気扇・・・!」

「そ、それより、ゾウキン、もどせ!ゾウキン!」
かばんを僕たちにわたすご主人。
「え??しまってゲホ、いいんですかぁ?ゴホッ

「頼むからしまってくれ~~~うがぁっ!

もう泣きがはいっちゃってます。

が、泣きが入ってるのは、実はこっちもまったく同じ。なにしろ、ひと呼吸すると吐き気が襲ってきます。
目からはボロボロと「フランダースの犬最終回」10回分まとめたような涙涙涙。横隔膜はすさまじい拒否反応をしるし、シャックリもとまりません。

「な、なんなんだね?こりゃ?オウ、オウッ
目を閉じ、鼻も口も手でふさいでいるご主人。

「だ・・・だから、開けちゃだめって・・・ヒィ・・・言った・・・・ウゲッ
もう、西条くんも僕もボロボロです。

こりゃまったく想定外でした。
僕たちの筋書きは、せいぜいご主人の手に臭いがうつって
「だから開けちゃだめだって言ったでしょ?」
で、チャンチャンなはずだったのですから。

それがもう、すでに会話もできないパニック状態。

僕たちとご主人は、たまらず事務室から店内へと飛び出しドアを閉めました。

「はぁはぁ・・・な、なに?アレ?」
息も荒くご主人。

「はぁはぁ。あ・・・あれはですねぇ・・・はぁはぁ。洗剤の・・・洗剤の・・・・」

本来はしっかり筋書きを決めてきたのに、呼吸をすることでせいいっぱいで、とても会話になりません。すでに洗剤の臭いじゃねーし。

「だから命にかかわるって言ったでしょ?ゼーゼー‥」

これだけはハッキリ言いました。
こういう意味ではなかったんですが。



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