ぼくたちと駐在さんの700日戦争

 

  
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第25話 花火盗人(2)


花火の準備というのは、けっこう大掛かりな仕事です。
このため、相応な人数が右往左往するため、僕たちは、最も人数が少なくなるであろう、昼時を「決行時間」に決めていました。

当時は、現代と違いまして、昼休みは徹底されていました。
田舎では、どこかしかで昼を知らせるサイレンなどが鳴り、それに合わせてみんなが休んだものです。
いい時代でしたねぇ。

犯罪や悪戯には下見が大切です。僕たちは、確かに窃盗こそしていませんでしたが、かなり近いことは大量にやっておりましたので、下見の重要性をよく知っていました。

「あれが大将だな」
「ああ。間違いない。あっちの赤いの着てるヤツは弟子かな」
「商店街の連中はハッピ着てるな。私服はアルバイトってとこか」

下見では、まず、物のある場所、どの人間がどういう役割でどういう動きをしているか、指示系統はどうなっているのか、これをいちいち口に出して言いながら、全員の認識を同じにします。この「いちいち口に出す」というのがポイント。個人個人が勝手に理解していてはうまくいきません。これから窃盗団をつくろう、と思われているかたは參考にしてください。

「なるほど。西条の言ってた通りだな。これじゃ誰がバイトかわかんないな」

「まぎれこめるか?」

僕たちは少人数ながら、2つのグループに分かれていました。
いや、ジェミーとルパン・ザ・サーズではなく。私服組と制服組です。
河野くんと久保くんコンビは私服組。彼らは、アルバイトの中に混じって行動します。
制服組は、学校の放送部員と新聞部員を装い、取材と称して行動することになっていました。

はじめに行動を開始したのは、河野くんと久保くんの私服組。

「ぼくたち、駐車場の係なんですけど〜、こっち手伝えって言われてきたんですけど、なにすればいいですかぁ?」

「おおー。助かった。そっちの設置手伝ってくれー」

なにしろ何万人も集まる大イベントの準備。もう誰が誰だか区別なんかついていません。
彼らはなんなくアルバイトに扮することに成功しました。


そして僕たち、
「じゃぁ、こっちも行くか。たぶん、あれが花火屋の大将だ」

なんともラフな服装で、大声を上げているオヤジがいました。僕たちは、彼の仕事がいちだんらくするのを待ち、行動を開始しました。

「すみませ~ん」

「あん?俺かい?」

「ええ。花火屋さんですか?」

「おう!俺っちが煙火屋だが、学生さんがなんの用でぇ?」

「え?えんか?」

「まぁ。花火師のことだーな。で?あんの用だって?」

「ええ。実は、僕たち、高校の新聞部と放送部なんですけど、今度、この花火大会をとりあげることになったんですよー」

「おー!そらいいこった!」

なんかノリのいいオヤジです。

「で。花火の実況なんかも録音して流すんですけど、花・・えっと、煙火屋さんのインタビューも入れたいなぁ、なんて・・・」

「ほほぉ」

「それで、いろいろと花火のことなんかもお教えいただけると助かるんですけど。お時間はとらせませんので・・・」

「ほーっ!そりゃ若いのにエラいね!こりゃどーも。いいぜ!あんちゃん!なんだって聴いてくれぇ!」
いい出だしです。それにしても勢いあります。このオヤジ。

「うーん。師匠、ちゃきちゃきですねー」

「ったりめーだー!こちとら江戸っ子よー!煙火屋がとろくっちゃ花火上がんネーってな!」

「すると東京のご出身なんですね?」

「ん。宮城県の出身だ」

いや・・・・それ江戸っ子って言わないから・・・・。なに言い切っちゃってるんでしょう?
このオヤジ、東京都在住であれば江戸っ子と思いこんでいるようです。

「は、はじめに師匠のお写真撮らせていただいていいですかぁ?」

「ん?写真?」

と言うなり、ジェミーを横目で見ました。

「いいぜ!このお姉ちゃんと一緒なら!

えっ!こ、こいつも「西条の類い」か?

「姉ちゃん、名はなんてーんだい?」

「えーっと〜〜〜〜・・・・・ジェミ子」

バカ!いすずの中古車か?お前。

「いえ。あの、和美って言いま~す。よろしくお願いしま~す」

ブラジャーダイレクトかよ・・・。
それにしてもジェミーの声色。絶品です。女の子としか思えません。孝昭が興奮するわけだ・・・。

「きれーなネェちゃんだなー。うん。俺っちと一緒に写真撮ろ!」

「まぁ!師匠!うれしいワ!」

ノリノリのジェミーとワルノリのオヤジ。なんか、どっかの安キャバレーみたいです。

そしてジェミーとのツーショット。Vサインまでしやがって。
このオヤジ、ジェミーが男だってわかったら、驚くでしょうねぇ。

「それにしても姉ちゃん!」

「はい?」

「乳でけーなー」

やはり西条の類い・・・。「ちち」って・・・。
でもそりゃそうです。5号玉(直径15cm)想定して詰め物してるんですから。

「じゃぁ、こっから録音しますんでー。いいですか?師匠」
デンスケのスイッチを入れようとする僕。

「え?ろ、録音するのかい?」

「ええ。もちろん。学校放送ですから」

当時の人たち、特に年配の方は、録音やマイクに慣れておりませんでした。
どなたでもマイクを向けられると多少なりと緊張したものです。

「う~ん。録音してもいいが。その『師匠』ってのはよくねーな。呼ばれ慣れてねぇ」

「そうですか。じゃぁなんてお呼びすればいいですか?」

「んー、そうさなぁ・・・・」

しばらく考え込むオヤジ。なんだっていいと思うのですが。

「総統?」

なに様だよっ!!



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第25話 花火盗人(2)
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第26話 花火盗人(3)


「そ、総統・・・ですね?」
デスラーか?コイツ。

「おう!まぁ、みんなからもそう呼ばれてっからな!」

ウソつけ!

とは、思いましたが。

「そ、そうですかぁ。じゃぁ”そうとう”ってことで・・・・」

と、一応納得したふりをしたところに、

  親方~。割物はこっちでいいですかぁ~」
弟子が声をかけてきました。

「えっと・・・”親方”って言ってますけど・・・・」

「うん。”そうとうも言う”・・・・。なんちってな♪」

げ!ひょっとしてこれを言いたかっただけ?

「な?今の録音した?録音してた?」

してねーよっ!

なんなんだこのオヤジ・・・・。
誰がコジャレ言ってくれって頼んだ?

しかし、
「あはははー」
一応愛想笑いの僕たち。なにしろ機嫌をくずされたら作戦はパー。なんにだって笑います。たとえ「ふとんがふっとんだ」でも。

が。これを「ウケた」と勘違いした親方。すっかり上機嫌になりまして、

「おう。ついて来な。花火上がる仕掛け見せてやっからよ!」

ヤッタ!
しかし、泥棒に道案内するみたいなもんです(というかそのものですが)。僕たちは、ちょっとだけ胸が痛みました。

「これが連続打ち上げの筒だ。こいつはな、底に火種が最初っから仕掛けてある」

「へー」

「で・・・、コイツに打ち上げ火薬がついたヤツをつっこむってわけだ」

「え!打ち上げ火薬がついているやつがあるんですか?」

これはトピックスでした。
なにしろ打ち上げ火薬の「かっぱらいかた」で悩んでいた僕たちには朗報です。

「ああ。普通は単発って言ってな。火薬いちいち仕込むんだが、これだと早さに限界があるわけだ」

「ふむふむ」

「で。こいつがその火薬付きの玉だ」

確かにその玉は、丸い玉の下になにやら出っ張りがついています。

 そうか。コイツかぁ。

今でこそ花火は電気着火が主役になりつつありますが、それは1980年代からの話で、当時はすべて職人が火をつけていました。
したがって「早打ち」にはこうした方法が用いられていたのです(この方法は現在でも使われいる)。

僕たちは親方の説明より、この「火薬付きの玉」が、ジェミーのブラジャーに入るかどうかばかりが気がかりでした。

「横にすれば入るかなぁ・・・」
ジェミーが思わず口にしてしまいました。

「あ?なにが?」

「え?あ、いえ。筒にです。筒に。横に入る事とかないんですか?」

「ああ。玉はほら。吊るし入れだからな。そういうことはねーよ」

「なるほどぉ」

「不発とかはあるんですか?」

これは重要な質問でした。

「ん。ねーな。素人じゃあるまいし」

 げげっ!西条の話と違う!

不発用の予備を拝借しようとしていた我々は、ちょっと困りました。

「けど、筒につまる、とかいうのはあるんだ。そのために、いくつかは多く準備しなくちゃいけねぇ。もともとこういうおっきい大会はどさ回りみたいなもんだからな。どこも玉はけっこう多めに持ってるもんだ」

親方は、さすが「親方」と言われるだけあり、(泥棒相手に)花火について実に明瞭な説明をしてくださいましたが、それは目的を忘れて聞き入るほど、実に面白いものでした。

そこにアルバイトにまぎれこんだ久保くんから合図です。

彼は腕を大きく丸くして「OK」のサインを出していました。

打上用火薬を盗んだ、ということです。

さぁ。あとはこっちの玉だけ。

僕は久保くんの合図を受けて、ジェミーに耳打ちしました。

「火薬付きじゃない玉だ」
「ラージャーです」

「親方。それで少し親方の話をうかがいたいんですが・・・」

「おう!かまわねーぜ!」

これがこの日最大の失敗でした。
本来は、このインタビューの最中に、ジェミーがブラジャーの中に玉を入れて来る作戦だったのですが・・・・。

「すいません。じゃぁ、僕たち、その間、ちょっと花火玉の写真撮らせていただいていいですか?」

「おー。かまわねーよ。けどフラッシュ炊くなよ」

「はい」

まぁ。すでにストロボの時代でしたが。火気に敏感なのは当然のことでしょう。

玉の撮影へと向かう孝昭くんとジェミー。
そして彼らが他の面々から死角に入るように久保くんと河野くんも動き出します。


が・・・・・。


「親方はどうしてこの世界に入られたんですか?」

マイクを向ける森田くん。

「ああ、煙火の世界にかい?そーさなー。あれは終戦から1年後だったなー」

え?昭和22年まで遡るわけ?

「んー。あのころは、たいてーの街ってー街が焼け野原でな・・」

「(中略)・・・そいで、まぁ、就職なんか贅沢言っちゃいられねーわけだ。それでな・・」

「花火屋さんに入られたんですね?」

「いんや。乾物屋に就職した」

はぁ?

すでにここに至るまでに10分を要してます。なのに「乾物屋」・・・あんまりだ。

「ところがな。ここの乾物屋のオヤジがまたひどい人でなー・・・・」
「はい」

「(中略)・・・で、夜逃げのように店出たんだよ・・」

遠い目をする親方。

「はぁ。それで花火屋に?」

「いんや。次は米屋だったなぁ・・・」


げげ。すでに20分を経過!
ひょっとすると親方、これまでの全生涯を話すつもりなのでしょうか?

親方の話は延々と続き、米屋を辞め、漆屋を辞め、失業者になり、炭坑に再就職して・・・すでに履歴書。

「(中略)・・・で、大阪の花火屋に入ったんだよ」

よかった・・・。花火屋に就職してくれて・・・・。うれしいっス・・・。すっごく。
ん?・・・大阪?この人、江戸っ子って・・・・・。げ。まだまだじゃん!

「(中略)・・・それで・・皇太子様と美智子様とご成婚されてな・・・」

すでに日本の歴史になってます。しかもまだ昭和34年・・・・

「(中略)・・・でな、仕方なく家業の花火屋ついだんだよ」

家業だったのかよっ!じゃぁ、なんだったわけ?乾物屋からの一連の流れは。

デンスケに入れて来た60分テープ(片道30分)は、とっくに終わって裏返しになってました。

しかし、おかげでジェミーはたっぷり時間をいただき、すでに胸はまーるく膨らんでおりました。
つまり、花火玉を入れていたのです!

ジェミーもOKサイン。

しかし親方の話は続きます。
「(中略)・・・でな?大阪で万博あったろ?」

よかった・・・・。1970年だ・・・。70年代ばんざい!ビバ!エキスポ70!

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しかし・・・・

「で・・・万博で花火上げたんだけどな・・・」

「え?親方がですか?」

「いんや。それがな。俺に教えてくれた親方の一番弟子のやつがのれん分けした・・・・」

誰だよっ!

まー、なげーなげー。とにかくなげー!

「(中略)・・・でなぁ・・・その年の大曲の花火競技会でな・・・・」

「優勝されたんですか?」

「いんや・・・最初の年はだめだった・・・」
優勝してねーならしゃべんなよっ!って、最初の年?またもどってんのか?せっかくエキスポ70まで来たのに?

「(中略)その翌年な・・・大曲の・・・」

「・・・優勝・・・されました?」

「いんや・・・」

「(中略)・・・でな。その年女房と出会って、結婚したんだ。こいつがまたよくできたいい女だったんだがな・・・」
また遠い目をして、目頭をあつくされる親方。

「・・・・亡くなられたんですか・・・。」

「え?生きてるよ?今の女房だよ」

てめーっ!ぶっ殺す!

・・・と、孝昭くんだったら言ったことでしょう。
まぁ、僕は彼のような短気ではありませんから耐えましたが、すでに昼休みは終了していました。

「女房の生まれは広島の呉ってとこなんだけどな。この実家がまた・・・」

げげっ!今度は家族の歴史まで始めそうです。

「いやいや。親方。うかがいたいんですが、テープないんで奥様の話はまたこんど・・・」

と。ここで親方。ハッと自分にもどり、

「お!ほんとだ!いけねーいけねー。テメェらのせいすっかり時間くっちまったぜ!」


こ、殺してやるっ!



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第27話 リョウくんの空(1)

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「どうも今日はいろいろとありがとうございました」

それでも丁重にお礼を言う僕たちに、

「おー!こっちこそな!なんだか楽しかったぜ!」

そりゃ、あれだけ言いたい放題人生しゃべれば楽しいでしょうよ・・・・。

「それでこれ・・・」

僕たちは親方に封筒を渡しました。
そこには現金4000円が入っていました。

「な、なんだ?今の学校は取材費払うのかい?へぇー!時代は変わったもんだねぇ」

「ええ。まぁ、そんなもんです。で、この受取にサインもらえるでしょうか?」

「いんや。受け取れねぇなぁ。これであんちゃんたち、家でも建てな!

建たねーから。

「いえ、これは受け取っていただかないと僕たちが困るんです。お願いします」

「そうかい?まぁ、そう言うんなら・・・。家でも買おうかね・・・・」

親方はしぶしぶ封筒を受け取り、受取証に名前を書きました。
言うまでもなく、これが実は「花火代金」なのですが。

「んや?」

親方がジェミーを見てなにか気づいたようです。

 ヤバい!

「お姉ちゃん、乳、ちっちゃくなってねぇか?」

す、するどい!伊達にスケベやってません!

ジェミー、
「やっだー。親方、そんなわけないじゃないですかぁ〜」

実はそんなわけあったのです。5号玉を想定してきた詰め物でしたが、結局入らず、盗んだのは4号玉(約12cm)。
さっきより直径で3cmも小さくなってます。

「そうかい?まぁ、それでもまぁーるくっていい乳だなぁ。え?姉ちゃん」

「親方〜!スケベなんだから〜ン」

「うん!まるで4号玉みたいだなっ!ははは。打ち上げたくなるぜ!」

す、するどすぎる!
ここは退散するに限ります。

「じゃー親方~。ありがとうございました~〜」

「あ!待て、あんちゃん」

「え・・・?」

ドッキリ!

「これ、持ってきな」

親方は弟子になにか持って来らせると、それを僕たちに渡しました。

「コイツはな、余った火薬からつくった線香花火だ。係の人とかにあげてんだけどよ。そのへんに売られてるやつとはちがうぜ!」

それは藁に火薬がついたような、不思議な形をした線香花火でした。

「あ・・・ありがとうございます・・・」

「じゃーな!夜、楽しみにしてくれよっ」

さすがに僕たちは胸が痛みました・・・・。
なんていい人なんでしょう。話長いけど。


やがて久保くんたちと合流。
とりあえず、僕たちは「捕まらずに成功した」ことを喜び合いました。

「後は打上だけだな」

「ああ・・・」

「最後にもらった受取さぁ、アレなんか足しになるのか?」

「さぁな・・・。一応、お金払ったって証拠ではあるからな。いざとなった時役にたつかも知れない。気休めだけどな」

「ふうーん」

「なにしろ花火だろ?盗みましたって証拠、打ち上げるわけだから。まだ捕まる可能性高いよ」

「ふむぅー・・・西条もまったくとんでもねー約束してくれるよなぁ」

「まぁ。でも僕が西条でもひきうけたかもな・・・」

「うん。たぶん俺も・・・」

盗むことに成功したにもかかわらず、僕たちの気持ちは晴れませんでした。
こんな複雑な気持ちの「悪戯」は初めてでした。

「ああ・・・そう言えばな」と、河野くん。

「さっき駐在みたいなのいたぞ」

「え?俺らの町のあの駐在か?」

「ああ。駐在って言えばもうアレしかいないだろう」

「あ・・・そうか。今日はここに来るって言ってたからな」

「さっさと退散しようぜ!」

帰り、花火は僕のヤマハメイトに全部積み、一番後ろを走りました。
万一こけた場合に被害が仲間に及ばないようにです。

とりあえず、西条くんに報告、ということで、僕たちの行き先は市立病院でした。


また中庭に集まった僕たち。

「そ、そーかー!盗めたのかぁー」
西条くん、感無量。

「ああー。苦労したけど。2発だ」

苦労したのは親方の話だけですけどね。

「すっげーなー。お前らー。でも、これでリョウに花火見せられるよ。ありがとうな、あり・・・」

「泣くなよ。馬鹿か、お前」

西条くんは、まるで子供みたいに、ヒクヒク言いながら泣きました。
全治3週間の怪我をおっても泣かなかったやつが、こんなことで泣くというのも、またヘンな話です。

「アオ・・・ヒック・・・ほんと・・・俺、いい家来にめぐまれて・・ヒック」

「だからいつお前の家来になったんだよっ!」

「ったく、どさくさにまぎれやがって」

僕たちは、そのままリョウくんの病室を訪ねることにしました。
リョウくんの窓から、どこが見えるのかを知るためです。そこが今日の花火の打ち上げ場所になります。

ロビーに入った所で、ミカちゃんがかけよってきました。

「サイジョー!
 ・・・と、ケライたち」

ケライ・・・。またかよ・・・。これだけ言われ続けると、本当にそうなのではないか、とさえ思えてきます。

「サイジョー、今日、花火上がる?」

「ああ。上がるぞ!でっかいのがな!楽しみにしてろよ!」

「ウン!さすがサイジョーだお!」

「いやいや。今回はな、このケライたちが上げてくれるんだ」

「ありがと!ケライ1号、6号と17号と18号!

腹がたつほど正確です。1度プールに行っただけなのに。

「と・・・あれ?」
ジェミーを見て驚きました。そうです。彼女の家来リストには、バイオニックなジェミーはいません。

しばらく考え込んだミカちゃん。

「この人、サイジョーのコイビト?」

   !

一同大爆笑。

悪ノリするジェミー。
「でも・・・今月、まだ来ないの・・・」

バ、バカヤロー!6歳児の前で、くだらねーギャグかますんじゃねーよ!
お前には一生来ねーんだよっ!

「なにがこないの????」
疑問符いっぱいのミカちゃん。

「え?えーとー・・・・」

ほらみろ。

「あなたにも、いつかわかるワ」
ウィンクするジェミー。

なーに奇麗にまとめようとしてんだよっ!
下ネタのくせによっ!


が、ミカちゃん、
「来ないって、おきゃくさん?」

えっ!!

これがミカちゃんがわかって言っているのかどうか、僕たちは恐ろしくて聴くことができませんでした。

「そ、そーだね・・・。お客さん・・・来ないねぇ・・・どうしちゃったのかなぁ?」

これにミカちゃん。
「わかった!夕子おねえちゃんとこに来てるんだっ!きっと!」

ええ!?
わ、わかって言ってんのか?
いや・・・いくら女の子がませてるからって・・・。 

「そ、そうだね〜。・・・夕子お姉ちゃんに聴いてみようかね〜・・・」

「夕子おねえちゃんとこも来てない?」

「い、いや。夕子おねえちゃんとこはちゃんと来てると思うな。ちゃんと・・毎月・・。で、でも今日は、ど~かな~・・・」

「というわけでケライ1号、お前、電話で聞いてくれ」

聞けるかっ!バカ。



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第28話 リョウくんの空(2)

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リョウくんの病室は、小児病棟でしたが、棟としては西条くんと同じで、階数だけが上でした。
僕は、かつてそういう「重病」な子供に会ったことはありません。正直に言えば、憂鬱でしょうがありませんでした。

「リョウく~ん。サイジョーつれてきたよ〜!」

「・・・あとケライと」


うーん。なんとかこの6歳児に「ともだち」という認識を与えられないものでしょうか?

「サイジョー!」

そこにベッドに横たわった男の子がいました。彼もまた「サイジョー」が来たことを、ものすごく喜んでいるようでした。

つきそっているのか、看護婦さんが横に座っていて、
「あら?西条くん、また来てくれたの?」

ミカちゃんが先に答えます。
「そーなの!今日はケライもいっしょなんだお!」

会釈する僕たち。
ケライと紹介されたところで会釈するから良くないようにも思えるのですが。
看護婦さんは、西条くんの担当とは違うかたで、年の頃なら30代後半。すでにベテランの雰囲気がありました。

彼女は椅子から立ち上がり、とてもやさしい笑顔で、僕たちに会釈を返しました。

彼は・・・・リョウくんは、確かに健康な子、というものとは違いましたが、想像していた「パイプだらけの少年」でもなく、少なくとも僕たちの目には「来月が怪しい」というほどには見えませんでした。
ただ、確かに子供独自のオーラみたいなのが感じられなかったことも確かなのですが。

西条くんは、早くもリョウくんの枕元へ行って、なにやら人形を使った遊びを開始していました。

「この子たち、西条クン大好きなのよ? けっこう長く入院してるけど、この子たちがこんなになついた人、初めて」

「そうですか。アイツ、子供にはへんな才能あるから」
「うん。女には才能まったくないのにな」
「12歳くらいに特別なボーダーラインがあるんだよな。西条」

これに少し含み笑いしながら看護婦さん、
「あの子にしてもね、小学生になってないから、ほとんど私たち職員とお母様とミカちゃんにしか会わないでしょ。助かってるわ」

 ん?

僕はこの時すこしひっかかったことがありました。

「西条くん。けっこう遊んでくれたり、デタラメな話だけどお話してくれたり、すごくやさしいのよ」

「デタラメな話?」

「そうそう。こないだなんかね。おまわりさんを花火でやっつける話とか。そばで聴いてて笑っちゃったわ」

いえいえ。それ実話ですから。
まぁ。フツウ信じませんけどね。
おとぎ話になっちゃってます。駐在さん。よかったね。

西条くんが僕たちに声をかけました。

「お前らもこっちこいよ」

「あ、ああ。今行くよ」

看護婦さんが「20分だけよ」と、腕時計を見て、注意を入れました。

20分だけ・・・。この時間制限が、彼の病状を物語っていました。

僕たちはリョウくんのベッドによりそって、そしてその窓から見える景色を焼き付けました。
景色の中に、そんなに高い建物はありません。
ちょっとした家並みの向こうに、川が流れていました。

「あそこだな」
僕は森田くんに言いました。

「うん。あそこなら河川敷も広い。なんとかなるよ」


四角く区切られたキャンバスみたいな空。
それがリョウくんの空です。

「ネエ。おにいちゃんたち、花火あげてくれるってホント?」

「あ・・・? ああ、ホントだよ。今夜。窓の外見ててね。8時だ」

「ウン。おっきい花火だよね?」

「ああ。おっきいぞ」

「花火大会くらい?」

「ああ。まるでそのものだ」

と言うか、花火大会のヤツをかっぱらって来たわけですから。


「それって天国から見える?」


 

「え・・・・・」

孝昭くんたちには、意外な質問のようでしたが、実は僕にはけして予想外な台詞ではありませんでした。
先ほどの看護婦さんの話の中で「お父さん」の存在がないことが、僕は気になっていたのです。

ミカちゃん、
「ミカたちのお父さんねぇ。天国にいるのね。だからちっちゃい花火じゃ見えないでしょ?」

「去年いっしょに見るはずだったんだよねー」

「ウン。でもボク入院しちゃったでしょ?だから見れなかったの」

子供たちにとっては、その言葉に苦渋はありません。
彼らには「この世」と「天国」の差は、この町と東京くらいな差しかないのです。きっと。
しかし、そのくったくのなさが、僕たちにはずいぶんと重く感じられました。

「ああ。見えるよ。すっごいおっきい花火だからさ。絶対見えるさ」

「やった!」

と言ったところで、突然イカデビルが襲って来ました。え?なんだそりゃって、西条くんがソフビの人形で襲いかかって来たのです。
彼はこれ以上に話が重くなるのを嫌ったのだと思います。

「イ、イテテ。なにすんだこら!」

「俺、イカデビルやるから、お前ライダーな」
僕にライダーのソフビを渡す西条くん。

「お、おお。来い!」

「ふっふっふ。そこまでだなライダー!」
「なにを魚介類のくせに生意気な」
「はっはっはっは。甘いなライダー。お前が昆虫類だということを忘れたか。来い!フンコロガシの親戚」
「なにお!やるか?寿司ネタ!」

ああ・・・しょーもない。

「よしこい!バッタ!」
「く、くそ!バッタジャーンプ! トノサマキーック!」
「はっはっは。所詮昆虫だな。多足類にも劣るやつ。改造されて殴る蹴るか?くらえ!イカ墨ビーム!」
「う、うわぁ。黒いのにうまそうだ!・・・こうなったら秘密兵器だ!ウマオイパンチスイーッチョン!」
「く、くそ!なんだか知らないがスイッチオンに聴こえるとこがすごいぞ!」

僕たちは、こういう馬鹿げた人形劇を普段でも(?)やっていたので、実に手慣れたものでした。
ライダーがやられるたびに、きゃっきゃ言いながら喜ぶリョウくんとミカちゃん。
ヒーローもへったくれもありません。

僕たちは、看護婦さんに止められるまでの20分めいっぱいを、彼らと遊び、その病室を後にしました。


重い空気が流れていました。
こういう時、いつも最初に話し出すのは孝昭くんです。

「うーん。そういうことだったのか」

「わりい。俺も知らなかった」

西条くんが本当に知らなかったのかどうか、それは今もわかりません。
その後の看護婦さんの話では、ミカちゃんたちのお父さんは、リョウくんが一度目の退院をした時、癌で倒れ、あっと言うまに亡くなられたのだそうです。いわゆるスキルスというやつです。
お父さんは、子供の病気を知るや、多額の保険に入っていたため、この保険金で今の入院生活を送っていられるのだとか。保険のCMみたいな「愛」を残したわけです。
しかし、それでもお母さんの苦労、苦悩は計り知れません。

「この職業についているといつも思うけど、神様っていないものなのよね」

看護婦さんが最後に言った言葉が心に残りました。


「打上、できそうか?」
西条くんが心配そうに聴きました。

「ああ、心配すんな。親方からイヤというほど聴いてきたからさ」
答える森田くん。

「泥棒にやりかた教えるってのも気の毒だったよなぁ」

「うん。でもそれ以上に話聴いてやったから」

「ところで看護婦さん、花火のこと聴いてたけど大丈夫か?」

「まぁ。本気にしてないからな。信頼ないから、俺の話。それに通報しようのある話でもなし」

確かに。

通路側の窓が開いていました。そこから少し涼しい風が入って来ます。
見上げると、そこにはさっき見たリョウくんの空が、
静かに夜を待っていました。


リョウくんの空

  5章-第29話へつづく 花火、上がるか?


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第28話 リョウくんの空(2)へ|第30話 流星(りゅうせい)へ→
4章を終えまして


第29話 上がれ!オッパイ花火!

僕たちは、リョウくんの窓から見えた河川敷にいました。
ここでグループはまた2つに分かれ、草刈り班と資材調達班に。僕は草刈り班です。

やがて筒の材料を持って資材調達班到着。
用意したのは120mmの煙突。西条くんの喜びそうな大量な縄。そして速乾性セメント。
金物屋が休んでいなかった(お盆は稼ぎ時なので)のは、僕たちにとって幸いでした。

まず打上の筒づくりから。
ブリキの煙突に、荒縄を何重かに巻き付けていきます。そんなもので花火の圧力に耐えるのか?と申しますと、江戸時代にはもともと竹やら木で作られていたのだとか。森田くんは、この方法にかなりの自信を持っていました。

これで筒が完成し、このまわりに杭をうちつけ、さらに縄をまわし、速乾性セメントで縄を固めます。
倒れたら、事件とかそういうレベルではありませんから、僕たちは、親方の筒より、はるかに多い杭で固定しました。

最後に、筒の周りと中に、また速乾性セメントを流し込みます。これは1時間ほどで固まるもので、大阪のミナミあたりでは、死体遺棄とかに多用されていそうなシロモノでした。

さて。問題は着火の仕方です。
プロは筒に直接火種を入れて着火するわけですが、僕たちにはそんな勇気はありません。
そこで思いついたのが雨樋です。僕たちは、近隣で廃屋を見つけると、他宅侵入。犯罪に犯罪を重ねまして、雨樋を盗んで来ました。ええ、ええ。犯罪者でございますよ。

全ての準備を終えた頃には、すでに日はとっぷりと暮れていました。

「あと、もう少しだな」

「ドキドキしますね~。先輩」

と、みんなが緊張するころで

久保くんが言い出しました。
「よー・・・・このへんトイレなかったっけ?」

「あるわけねーだろ。そのへんでしてこい」

「んー・・・、それがラージな方なんだよねぇ・・・」

「ラ、ラージって・・・・」

「英語勉強しろよ!ぼけぇ!・・・って、りきませんなって・・・」

たとえラージがわからなくても、「りきませるな」で事態がのみこめます。

「さっきトイレ行っとけって言ったろ?」

「そ、それがなー。俺、緊張すると腸にくるタイプ・・・なんだよ・・ねぇ」

なにやらすでに苦しそうです。

「なんだよ。肝心なときに。我慢できないのか?」

「そ、それが・・・すでに少しコンニチワしちゃってんだよな・・これが・・・」

「コ、コンニチワ?」

「いや。もう夜だからコンバンワでしょう。先輩」

「てめーは黙ってろよ!・・・て、りきませるなっつってるだろ・・・ジェミーのバカヤロウ・・・」

「市立病院までもどんないとないぞ」

「そ、そんなには・・・。なにしろ、すでに”ハロ~”だから・・”ハウドゥユドウ”だから・・・ちょっとバイクの振動耐えられない・・・」
と、指をまるめて、そこに曲げた指をつっこんで『ハウドゥユドゥ』の図解までしてくれる久保くん。

「図解すんな。ばか」

「弱ったヤツだなぁー。まぁ、お前いなくても花火上げるけどな。その辺りでしてこいよ。しょーがない」

「んー・・・・紙、持ってる?君たち・・・・」

「持ってない」「俺も」「僕も」

冬場ならともかく、夏場にそんなものを持ち歩くしゃれた男子高校生はいませんでした。

「先輩。豹柄のパンティならあります

「え”!」

「いや。あれ1200円もしたから、こいつの用足しに使っちゃうようなしろもんじゃないぞ」
「そうだそうだ。だいたいなぜ持ってんだ?」

「えっとー。なにかコトがあったら必要かな~って思って。ねんのため・・・」

念のためって、どういう「コト」があるんだよ・・・。

久保くんも、
「俺も・・・なんか・・パンティで拭くってのもちょっと・・・・」

「先輩。なに贅沢言ってんですか」

いやいや、1200円だから。かなり贅沢もんだから。

「そのへんの葉っぱで拭け。お前の尻なら大丈夫だ」

「て、てめ~、人の尻を・・・・うっ」

「な、なんだよ。今の うっ は?マンボか?」

「早く行けよ。ハウアーユーになる前によ!」

「ち、ちっくしょ~、・・・てめーら他人事だと思って・・・今度学校で大に入ったら学校放送してやるからな・・・うっ・・・!」

久保くん。逆恨みを言いながら、茂みの中へと消えました。

実はこれが後からとんだ障害になろうとは、この時、思ってもみませんでした。


はるか遠くで花火の音がします。

「お!Y市の花火大会の音、ここまで聴こえるんだなぁ」

「ホントだ・・・・。ほら、向こう少し明るくなる」

「親方・・・がんばってるんですねぇ〜・・・」

「ああ・・」

河原からは病院が確認できました。

「あの窓あたりがリョウくんとこかな」

「ああ。見えるといいけど」

「その前に上がるといいんだけどな」

間もなく約束の8時。

「よし!口火を切れ!」

口火を切る、とは、火がつきやすいように、花火玉の導火線のさきっぽを切ってむくことで、そのまま「口火を切る」の語源です。
いえ、僕たちも昼に親方に教わったばかりの受け売りでしたが。

「なんか○茎の手術みたいだな」

「例えが悪いぞ、お前」

が、ナイフをあてて切るたびに

「い、いててて」

「いちいち声出すなよっ」

「んー。なんとなく」

「お前、○茎だろ?」

「な、なにおーーー!!」

女性には絶対わからないことと思いますが、これはなぜか男子高生最大の屈辱的言葉でした。えーえー。「ウンコタレ」なんかよりずっと。彼氏が男子高生のかたはぜひ一度お試しください。その場で別れることができます。

が、言うまでもなく、ここでもめるようなことではありません。

しかし、無事、○茎手術も終わり(?)、僕たちは雨樋を筒にかけました。
直接火種を筒に入れる自信がない僕たちは、雨樋からヘビ花火を転がして筒に放り込む、という方法を考え出しました。ヘビ花火とは、燃えカスがずるずると伸びる不思議な花火で、その様がヘビに似ていたため、こういう名がついていました。ヘビ花火は、燃え出すとかなりの長時間根元から火を吹き出すため、着火には実に都合のいい素材だったのです。

そして、いよいよ着火という時に、

「ハロ~〜〜♪」

「俺がいねーのに打ち上げるたぁとんでもねーぜっ♪」

久保くんがさっきと別人のようなさわやかさで駆け寄って来ました。
どうやらハウドゥユドゥはかたづいたようです。

「わかったわかった。じゃぁ、久保、お前、火ぃつけろ」

「え?いいのか?」

久保くんが100円ライターでヘビ花火に火をつけました。
シュッという音とともに、いきおいよく発火するヘビ花火。

「よし!雨樋を上げろ!」

コロコロコロ‥ヘビ花火が転がり出します。

そしてそのまま筒の中へ・・・

・・・チッ、というかすかな音がしたかと思うと

ズバ━━━━ン

すさまじい音が鳴り響きました。

「うひゃーーーーー!」
「す、すごっ!」


やがて一筋の光の道筋をつくりながら、天高く昇って行く「オッパイ花火」

そして。

ド━━━━━━━━━━━━ン!

botan2.jpg


謎の4号玉は牡丹でした。
上空はるか150m。その大きく見事な円。
打上成功です!

僕たちはしばらく言葉が出ませんでした。
真下で花火を見るのはもちろん全員が初めてです。その美しさ!

「すごい・・・」

「よし。もう1発だ!」
「ああ!」

今度は自信があります。

また雨樋をかけ、ヘビ花火を転がす僕たち。

そして

ヒュ━━━━━━━━‥という音とともに、また一筋の道を描きながら花火が天に昇ります。

ド━━━━━━━━━━━ン!

「スゴい・・・スゴすぎる・・・!」

「リョウくん・・・・見えたかな・・・・」

「ああ・・・。絶対見えているさ」

「天国からは・・・どうだろうな・・・・」
孝昭くんが言いました。

「うん・・・。見えたかも知れない・・・。盗んだ花火だけどな」

「あの親方、たいした職人だなー。こりゃーすごいわ」

しかし、僕たちには感慨にふけっている時間はありませんでした。

「さぁ!とりあえず、すぐ撤収だ!」

「おお!」

しかし、ねんのための消火作業。コンクリートなどで固めた筒、片付けはけっこうやっかいでした。

そしてその時。


僕たちを懐中電灯の光が照らしました。

「なっ???」

「ママチャリ。そこまでだ」

僕たちが降りて来た道の上に、ひとりの人間の姿がありました。

「ちゅ・・・・駐在・・さん?・・・・・なんで?」



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唐突ではございますが。

本日、1100アクセス/日を超えました~。さらに合計3万アクセスを突破。とは言え、これは人数ではございませんで、あくまでプレビュー数なんですけどね。
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第30話 流星(りゅうせい)


「ちゅ・・・・駐在・・さん?・・・・・なんで?」

見渡すと、橋の上には駐在さんのシビックパトカー。
いつの間に来ていたのでしょう?

「ママチャリい・・・お前がここまで馬鹿とは思わなかったぞ」

僕たちは覚悟を決めました。

が・・・・

 バタン‥。

向こうで、車のドアの乾いた音がすると
心なしかパトカーがトロトロと動いているように見えました。

 他にも警察官が乗っているのか?

ところが
ブオ━━━━‥

パトカーが突如、猛烈な勢いで走り出したではありませんか!

「あ?」

「え!?」


これに最も驚いたのは、言うまでもなく駐在さんです。

「げ!ま、まてーーーーーー!パトカー泥棒!」

僕たちをそっちのけで、パトカーを走って追いかける駐在さん。そりゃそうだ。
これはシャレになってない!

しかし、いかに駐在さんが元陸上部でも、さすがに車には追いつけません。
逃げるパトカー!と、全力で追いかける駐在さん!
当たり前ですが生まれて初めて見る光景です。

なにが起こったか、あっけにとられていると、


「おまえら!逃げろ!はやく!」

堤防の上に数人の人影。

「井上・・・・・・・」

そうです。
それは今回、実行メンバーから外れていたグレート井上くんたちの姿でした。

「どうしたんだ?お前ら・・・!」

グレート井上くん。
「やっぱり花火がどうなるか気になって。さっきまで西条のとこにいたんだ。でも花火上がったから」

「え? じゃぁ、あのパトカーは?」

「ああ。来てみたら駐在さんがいたからさ。あれ、村山だ」

やっぱり・・・。
なぜなら僕たちのグループで、車を「非公式でも」運転できるのは、村山くんしかいません。
(村山くんが、西条くんより1度停学が多いのは「車の無免許運転」)

「いや・・・ありがたいけど、パトカー泥棒って、花火泥棒より罪重くないか?」

「ん──。なにしろ意外な事態だったから。他に手段考えつかなかったんだ。大丈夫。村山はつかまんないよ。あっちで千葉たちが手助けしてる」

手助けって逃亡の?
なんかスゴいことになってます。

確かに村山くんが逃亡に失敗することは、考えにくいことではありました。
彼はめったにドジを踏まないことで信頼があったのです。もっとも、僕たちグループの中では、という限定がつきますが。

「とにかく、お前ら逃げるか隠れるかしろ!パトカーは乗り捨てだ。もうすぐ駐在、もどってくるぞ!」

この言葉を受けて、ジェミー以外のメンバー全員が茂みに身をかくしました。

「お前も逃げろよ!」グレート井上くんがせかします。

が・・・・

「・・・・いや。僕はいい。駐在さん、ママチャリって呼んでた。逃げようがないよ」

「そっか・・・・・ジェミー、お前は?」

「んー。僕もいいです。他に誰もいないと、全員尋問されちゃうでしょ?」

ジェミー、めずらしく正気な正論でした。

「井上、お前らはどうするんだ?」

「ああ。僕たちは一旦西条のところへもどって善後策を練る」

「時間、大丈夫か?」

「ああ。全員花火大会に行ってることになってる。まだ大丈夫だ」

「そう・・・か」

やがて身をひるがえして、井上くんたちが現場を去ろうとしました。

「井上!それにみんな!」

ふりかえるメンバーたち。

「サンキュ。うれしかったよ」

みんなは手を上げながら、それぞれ去って行きました。


そこにどこで見つけたのか、とうとう、駐在さんのパトカーがもどってきました。

「まったく・・・。お前らのやることはメチャクチャだな・・・・・」

パトカーから降りながら、意外にサバサバした様子の駐在さん。

「お前たち、2人だけか?」

「ええ。2人だけです」

「間違いないな」

「はい。間違いありま・・」

ところが・・・・

「ぶはーーーーーーーーーーーー!」
「ばっ、ばかやろぉーーーーーー!」


突如下から大声が聴こえて来ました。
さきほど茂みに逃げ込んだ残り実行班メンバーたちです。

「なんだってこんなとこにク○するんだよっ!」

「え!お前らがそこの茂みにやれって言ったんだろう?」

「あほーーーっ!逃げ込む前に同じ茂みって気づけないのか?馬鹿!」

「暗いからわかんねーんだよっ!あせってたしよっ!」

「誰だ?踏んだの?おっかなくて俺、靴嗅げねーよっ!」

「ふーーー。まったくとんでもねーめに会ったぜ!」

そうです。彼らが逃げ込んだ茂みは、実はさっき久保くんがハウドゥユドゥに耐えきれずに、ウ○コしにいった茂みそのものだったのでした・・・・・。

馬鹿だ・・・・コイツら・・・・。

グレート井上くんたちの苦労は水の泡です。

孝昭くん、
「ア、アレ?おまわり?・・・・もどったのか・・・・?」

「どうやら2人ってことはなさそうだな。ママチャリ・・・」

「はぁ・・・どうやらそのようで・・・・」

「おい、孝昭。それから久保と・・・。お前らも全員こっちに来い」

「はーい・・・・」「へいへい・・・」

久保くんのウ○コのせいで捕まることになったメンバーたち。ウ○コで捕まるとは、泣くにも泣けません。

「首謀者は誰だ?」

「僕です」「俺です」「俺です」「オレです」

「かばい合うのはいいが。窃盗だぞ?わかってるのか?」

「はい・・・」「はい」「はい」「はい」

「まぁ。友情は美しくてけっこうだが・・・・主犯はママチャリだな?」

「ええ・・・こいつらは僕の指示で動いただけです」

「手ぇ出せ」

「え?」

「手を前に出せ」


「20時22分、窃盗、火薬取締法、ならびに消防法違反の容疑で逮捕する」

僕はこの日、生まれて初めて手錠をかけられました。
それは思ったよりは軽く、そして冷たいものでした。

※(ここに書いた容疑はテキトーです)。



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