ぼくたちと駐在さんの700日戦争

 

  
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「くらえ!」
孝昭くん、いきなり剣道のコテをつけたまんまパンチ!

 パシッ!

ケンちゃん、これを手で受け止めましたが、孝昭くん。スルっと手をコテから抜いて、再び

 ガスッ!

ケンちゃんの顔面にパンチが炸裂しました!!
今日、初めて、いえ。今までで初めて見る、ケンちゃんがくらったパンチでした。

ケンちゃんの口が切れて、横から血が出ていました。

ケンちゃん。これを「ぷっ!」と吹くと

「へへ・・・やるもんだな。孝昭ぃ。うれしいぜぇぇぇぇ」。

僕は西条くんの元へ行き、肩を貸していました。
西条くんは、まだ首をぶるぶる振っていましたが
「やべ・・・ケンちゃん、血、見ちゃった・・・」。

「血?血を見るとどうかなんのか?」

「ああ・・・ケンちゃん、血ぃ見ると興奮すんだ。・・・」。

え・・・・。

「血ぃ見ると・・・な・・・」

「あ、ああ・・・」。

「ケンちゃん、女性の生理を連想して興奮するって言ってた」。

え!興奮ってそういう興奮??

「うん。中学んときはそう言ってたけどなぁ」。

さすが兄弟子・・・・。西条とまったく同レベルだ。
というか、実は西条、ケンちゃんの影響大?

「わかるよなぁ」。

わかんねぇよっ!


しかしケンちゃん。

「くらえ!二日目キーーーーック!」

腹部下を狙っておもいっきり蹴り!
ほんとだ・・・。そういうレベルだ・・・。

二日目キック。名前からして痛そうです。経験ないからわかりませんが。

しかし孝昭くん、これもプロテクターで受け止めると、

「へへ。きかねぇぜ。西条もあんたも攻撃は急所狙い。すでに読んでるってー」。

なるほど。
孝昭くん、俊敏さではケンちゃんにはかなわないと悟って、狙ってくるところを全てガードしてきたようです。
動きを諦め、ガードに徹する戦法。
問題はどうやって攻撃するかですが、孝昭くんのことです。なにか考えが

「ロケットパーーーーンチ!」

もう片方のコテを飛ばしました。

それかいっ!!!!
小学生かっ!!!!


百戦錬磨のケンちゃんでなくとも、こんなものが通じるわけもなく

「俺に一発パンチ当てたのは褒めてやる。だが、そんなんで俺に勝てるか?」

「勝てるさ!」

孝昭。なにを根拠に・・・。

するとケンちゃん。

「♪えっくす、それはあ~なた~~~」

やばい!ちあきなおみだ!

「♪わい、それはわ~たし~~~~~」。

西条くんが
「孝昭、もういい!代われ!」

が、孝昭くん。落ち着いています。

そして、突如として大声で
「お庭のデージーが咲きました~~~~!!!」
「?」「?」「?」

僕たちは孝昭くんがなにを言い出したか不思議でしたが、

ケンちゃんはというと
「げっ!」

歌が止まりました。

「君の黒髪に似合いそうなので~~~~」
「?」「?」「?」「?」

「げげっ!」

「君の窓辺にいますぐ届けにいきたいと思っていま~~~~す!!!」
「?」「?」「?」「?」「?」

「げげげ~~~~~~っ!」

完全に動きが止まりました。なんだ?

ここを見逃さず、孝昭くん
「スキ有りーーーー!」

 バスッ!!!

孝昭くんのハイキックが、なんとケンちゃんの喉元に炸裂!

ケンちゃん、たまらず腰がくだけます!

「死ねや~~~~!ケンちゃん~~~~~!」

孝昭くん、ケンちゃんの顔面めがけてとどめのパンチ!

 パシュッ!!!!


その手は押さえられました。

「孝昭くん。それくらいでやめとけ」。

え?

「マスター・・・」。

そうです。その手を握っていたのはマスターでした。

「ケーキ屋さんも。ここは僕に免じて許してやってくれ」。

言葉はおだやかでしたが、それは今まで見た事もない眼光の鋭さでした。
僕はそれまで、その穏やかの口調でまったく意識することもありませんでしたが、マスター、的場さんは、駐在さんの暴走族で支部長を努め、総長の駐在さんが手をやくほどの暴れん坊でした。

それで・・・駐在さん、マスターにだけ・・・。

「ここ、うちの店の前だしね」。

孝昭くんは、腕から力を抜き、
ケンちゃんも
「すんません、マスター・・・」。

立ち上がると、パンパンと、ズボンの埃をはらいます。

孝昭くん。一息つくと
「ケンちゃん。このノート。返す」。

プロテクターの裏側から得意先台帳を取り出しました。

僕たちはうろたえました。
「えええ!なんだってそんな簡単に!なんのために・・・・」。

「ん。いいんだ。返すよ」。

ケンちゃんは無言でノートを受け取りました。

 あぁぁぁぁ・・・・。

マスター。
「なにか事情あるみたいだし。どうだい?朝のコーヒーでも飲みながら。おたがい腹わってみたら」。




そしてポプラ店内。

「ここ、交換日記~~~~~~~?」

「ば、バカ野郎!孝昭!言うんじゃねぇ!」

「うん。そうなんだ。中見たら、前の方、交換日記だった」。

「ああああああああああ!」
叫ぶケンちゃん。

なるほど・・・。渡せないわけだ・・・。

「なんだって台帳の前が交換日記なんだ?」

「ば、バカヤロ。高校んときのノートあいてたからもったいなくて使ったんだよっ!」

僕たちより上の「もったいない世代」は、ノートにあきがあると、そのまま後ろを別な用途に使っていました。
それほどに物を大切にしていた、とも言えますが

「なにも交換日記の後ろに・・・・」。
「で?誰との交換日記なの?」

「い、今の女房に決まってんだろーがよっ!」

「わははは。ケンちゃん、それで”お庭にデージー”って。わははは」。
「”君の黒髪に似合いそう”って。あははははは」。

みんな呼吸ができません。
なにしろ見てくれが「デージー」と、あまりにかけ離れています。
ケンちゃん、花なら唐獅子牡丹以外似合いそうにありません。

「う、う、うるせーーー!純だったんだよっ!」

うーん。確かに純だ。

孝昭くん。
「だからさ。返したんだ。俺らは別の方法考えよ」。

なるほど・・・そういうことか。
しっかり攻撃には使ってたけど。

ケンちゃん。
「ありがてぇが・・・。孝昭、まさか全部読んだんじゃ?」

孝昭くん。
「え!い、いや。まさか。人の日記読むなんてそんな趣味悪い・・・」。

「そ、そうか・・・・」。
胸をなでおろすケンちゃん。

「うん。でもケンちゃん」。

「ん?」

「交換日記で”次の安全日はいつですか?”は、ダメだと思うな」。

「最後まで読んでんじゃん!!!!」

「あ・・・・」。

ケンちゃん。すでに泣きが入ってしまいました。
かわいそうに。

僕たちはと言うと

「ひ~~~~~安全日いつって~~~あははははははは」。
「は~~~~は~~~~交換日記で~~~~~。わははははは」。


さらに大爆笑。

「それでそれで?孝昭、その返事は?」

すっかり興味本位です。

「ん。そこで終わってた」。

「わはははははは。あったりまえだって~~~。ケンちゃん~~~~」
「そりゃ交換日記に書いちゃダメだろ~~~~。わははははは」。
「返事くるわけねぇって~~~~~。あはははははは」。


「くっ!」
ケンちゃん悔しそうです。

が、しみじみと
「それから2ヶ月、口きいてくんなかったなぁ・・・・」。

「ばはははははは。かんべんしてくれ~~~~~」
「ケンちゃん。馬鹿だ~~~~。あっはっはっは」
「あほーーーーー。あはははは」。


とんだ笑い者。

ようやく僕たちの呼吸が落ち着いた頃に、ケンちゃん
「しかしなんだってお前ら、俺の台帳なんか?」

僕は能瀬さんの事務所からの、一連の流れと、映写会のことを話しました。

するとケンちゃん。
「なんだぁ~~~~。それならそれとさっさと言えよ~~~」。

「え?」

「うん!ブルーフィルムなら手ぇ貸すぞ!」

そっちで?
目、輝いてますけど・・・。


それにしても駐在さん。マスターへの信頼はさすがでした。
これで万事めでたし。
と、思ったところに、千葉くんがあわただしく入って来ました。

「あれ?千葉。部活じゃないのか?」

「あ?うん。今プール開いてきたとこ」。

「あ、そうか。もう10時なったんだ」。

夏休み、プールの鍵を開けるのは、水泳部の役割でした。

千葉くん。
「で。ところでお前らの自転車って防水?」

僕にたずねました。

「ああ。もちろんだけど?」

「よかった~~~~」。

「なにが?」

「お前らの自転車、プールに浮いてたんだけど。ビート板つけて」。

ええええええええええええ!

くそぉぉぉぉ!駐在ぃぃぃぃぃ!




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はい~~。春駒さん、お待たせのお待たせのバースディギャラリー。
9月になっちゃったお・・・。8月なのに・・・。
で。なんと森田くん!

知性派森田くんは、僕と和美ちゃんがくっつくまで、唯一彼女のいる極めて特別な存在でした。
化学、物理、文学に長け、電気回路図にかけては「高校選手権があれば出たい」というほどのツウ。ご存知のように般若心経をそらで唱えられるばかりでなく、実は他のお経も複数知っております。
春駒さん、おたせしましたがおめでとー。

【本日のアップ予報】
本日はお休み前ですので、の~~~んびりやらせていただきます。
というわけで、アップ予報時刻、朝になる確率60%!
みんなで朝ぼく~~~~

たまにはいいじゃん。

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陽がかたむくと、夏とは言え、いくぶん涼しくなって来ます。
影は長く、駐在所の日陰ができたところで、駐在さんがバイオレットを洗車しています。

それに声をかける地元高校生たち。
「駐在さん~~~~」。

なんてのどかな光景でしょう。

「やぁ。君たち~~~~~」と、くればの話ですが、この町は少し違います。

「んあ?きさまら。なにしに来た?仕返しか?」

これです。これ。

しかし地元高校生は、将来を担う若者たち。この程度ではへこたれませんで

「ごせいがでますね~~~~」。

あくまでも町の調和を重視しています。

にもかかわらず
「んんんん?怪しい」。

この公務員は、どうも町の調和を理解していません。
哀しむべきことです。
職業柄とは言え、どうして一般市民を疑惑の目で見るのでしょう?

ちょうど駐在さんは、ワックスをかけている最中でした。
ボディがみるみるワックスで白くなっていきます。

夏の晴れた日は、昼にワックス掛けはできません。
ボディが熱くなっているからで、そのままワックスをかけると乾くのが早すぎて効果がうすれるのです。
そこで駐在さんは、バイオレットが日陰になるこの時間を待っていたのです。

「用がないならとっとと失せろっ!」

駐在さんは、僕たちを完全無視して作業を続けました。

僕たちは駐在さんが、全ボディにワックスをかけ終わるのを待っていました。
ワックスがけがどれほど手間と時間がくうかは、やったことのあるかたはおわかりでしょう。
この当時は、ひと仕事でした。ワックスがけ。

← ← ← ← ← ← ← ← ← ← ← ←

学校。体育準備室。

森田くんたち、のっぽさん部隊が調合をしています。

「ダメだな。これじゃ半練りにならない」。
「もう少し石鹸水加えたら?」

「うん。やってみよう」。

「あ。だいぶリアル」。

「ほんとだ~~~~~~~」。

「もう少し石灰入れてみよう」。

「おお」。

僕たちはライン引き用の石灰の袋を横に「新ワックス」を開発していました。
この頃、ワックス業界には、画期的新製品「半練り」が登場しました。
持続力は固形ほどではないのですが、今まで塗りにくかったコンパウンド系ワックスに比べて圧倒的に力がいらないのと、ボディを痛めない、という2大長所を持っていました。

当時の新車には、「洗車セット」と称するものがサービスでついてきて、日産はこれに半練りワックスを付属していました。増え始めた女性ドライバーを意識してのことでしょう。
僕たちは新製品開発のために、わざわざこれと同じ物を購入し、さらにわざわざ中身を捨てました。

そしてとうとうできたのが

新製品「石灰ワックス」。

石灰だけでは半練りが表現できなかったため、ポスターカラーをさらに追加。固定させるために重曹、石鹸水などを混ぜ、その分量をメモっていきます。

意外かも知れませんが、石鹸には根本的に水をはじく特性があります。
もしワイパーなどが壊れて動かなくなっても、フロントガラスに石鹸を塗ると多少の雨なら視界が確保できるという応急処置方法があるほど(実際、ラリーとかで使われていました)。

そして、調合に調合を重ね、ついに見た目誰が見ても「半練りワックスそのもの」を完成させたのです!!!

ああ。この技術力と熱意。
他のことに生かす、などということはまったく考えてもみませんでした。悔やまれます。

→ → → → → → → → → → → → →

「あ。駐在さん、だいぶ乾いてきましたよ?」
「うん。でもからぶきはしないほうがいいかも」。

「なんでだ!?」

「うん。かえってボディ傷つくから」。
「そうそう。傷つく傷つく」。

「はは。これはなぁ。コンパウンドとは違う半練りだ!知らんのだな。お前ら」。
(実際には当時のワックスは液体を除いて傷ついた)

「いえいえ。知ってます」。
「そうそう。作れるほどよく知ってる」。

「つくれる~~~~~~?」

僕たちはすでにペダルに足をかけ、逃走準備完了。

ここまで言われて駐在さん。はっと気づきいました。

クンクン、と、ワックスの匂いを嗅ぐと

「んんん?なんか懐かしい匂いがするな」。

そりゃそうでしょう。駐在さん、なんてったって元陸上部。

「んんんん?」

あ。そろそろ気づく。

「ああああああ!」

「あー。駐在さん。さっさと水洗いしたほうがいいですよ。かわくとなかなか落ちなくなっちゃうから」。

「な、な、な、な、な・・・・」。

「でも大丈夫です。スミレって~~~」
「♪スミレって~~~」。

白もあるんですよ~~~~」。

「き、き、き、きっさまらーーーーーーーー!」


♪そして~~~ひとつぶ~~~~
♪スミレ色~~~のなみだ~~~

<すみれ色の涙=岩崎宏美(81年)が有名だが、実はブルーコメッツ(68年)のリバイバル曲>


僕たちはその足で駅へと向かい、写真屋さんにフィルム確認に行った西条くんたちと合流しました。

「おー。どうだった?フィルム本物・・・・」

聴こうとしましたが

聴く必要はありませんでした。
全員目が真っ赤。

「あ・・・なるほど・・・。よかった・・・本物で・・・」。

西条くんたちの返事は

「アンコールワット、すげぇぇぇぇぇ」。
「明智光秀、すげぇぇぇぇぇぇぇ」。


興奮醒めやらぬようで

「あのな、あのな!アンコールワットは金髪でな」
明智光秀は女同士だった!」


無理もありませんが、世間一般の人が聴いたら意味不明。

「アンコールワットは大写し!」
「明智光秀はな!こう、足、パカ~~~っと開いてよ~~~」。


あんまり想像したくない・・・。
明智光秀が足開くとこ。

明智光秀も浮かばれません。

akechi.jpg
<明智光秀>


「ありゃぁ本能寺だわ~~~~~♪」
「うんうん。本能寺~~~~~♪」。

意味わかんねぇし・・・。


とりあえず鼻血止めろよ。

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<おことわり>本日、第一クライマックスの上映会!あんま笑えないけどごめんお。

とうとう上映会当日。

まるで文化祭実行委員のような気分で迎えましたが、実際はブルーフィルム。
しかもヤクザ相手(笑)。
かぎりなく悪の道に足をつっこんだ気分でしたが、そんな僕を電話でケンちゃんが励まします。

「てめぇならいつでもあっちの世界行けるぜぇ」。

励ましてもらわないほうがよかった・・・。

会場は、なんと能勢さんの会社のビルの3階の空き部屋を借りてくれたようです。
もともとそういう所が入っているビルですので、テナントが埋まらないのでしょう。
2つの事務所スペースがつながっている50坪は、じゅうぶんな面積でした。

会場へは、すでに村山くんたちがパイプ椅子を運んでいるはずでした。
ちなみに椅子は地元の公民館から借りました。合わせて50脚。


僕は、朝一番で坂本くんの事務所を訪ねていました。
坂本くんの家の所有する土地と、虹色家族の関連をはっきりさせたかったのです。

この日、僕は初めて、坂本くんのお父さんとまともな会話をしました。

「そうか・・・。やつらは・・・あの土地が・・・・」。

「ええ。工場用地として跳ね上がってます。抵当権うたれてますよね?」

お父さんは、僕の叔父が司法書士であることをすでに知っていたせいか、抵抗なく話し始めました。が、高校生である僕には、その半分くらいは意味がわかりませんでしたが。

「その土地を手放せば、なんとかなったんじゃないんですか?」

お父さんは
「ああ・・・。確かに。だがね、ゆずれないものっていうのはあるんだよ」。

「ゆずれないもの?」
坂本くんがお父さんに聞き返します。

「ああ。君は、登記簿見たんだよね?」
「いえ。そこまでは」。

お父さんがこの土地を手放せない理由と、そこに抵当権がついた理由は、後日談とします。

が。お父さんは最後に
「でも。君らがこんなにがんばってくれてたのに、私は恥ずかしい。もうひとがんばりしてみるよ!」

「ええ!そうですとも!がんばりましょうよ」。

「ああ、ああ」。

と、二度、自分に言い聞かせるように返事をされました。


坂本くんは、外まで僕を追いかけて来ると
「先輩!」
「あ?」

「ありがとうございます!」
「はは。いいよ。西条とチャーリーに言えよ」。
「はい!」

道をはさんではす向かいには、心配して来ていたのでしょうか。つきあっている清美ちゃんの姿もありました。
僕は、へんにてれくさくて、清美ちゃんには手をあげるだけでせいいっぱいでしたが、彼女は同級生である僕に、ペコリと頭を下げました。


開始時刻は夜8時。
当時の高校生には遅すぎるほどの時間でしたが、暗幕がないのでしかたありません。
今と違って簡単に借りられるものではなかったのです。

午後7時あたりから、ぞくぞくとお客が集まり始めました。
お客と言ってもそのスジの方々ですから、まー、会場の空気の特殊なこと特殊なこと。

「うわ~~~。すごいですねぇ。ケンちゃん」。
「あ?あったりめぇよ。ケーキ付きだからよ」。

いや。ケーキ付きだから集まってるとは思えませんが。
それ以前に、ケーキ付きの「ブルーフィルム上映会」って・・・。

一般に「そのスジ」の方々が集まる、と言うと、白やハデハデなスーツ姿の方々を想像するかと思いますが、田舎は違います。
しかも夏の上映会ですので、みんな「ジンベェ」と言われる和風な姿で、それぞれ扇子やらを持っていました。
おかげで、袖口あたりから、和風絵画や模様やらがのぞいていて、僕はそれを見る度に、自分のしでかしていることの大きさに、内心怯えてもいたのです。

やがてジェミー到着。
着々と僕たちのメンバーも集まりますが、まだかんじんな映写機が到着していませんでした。

「遅いなぁ。孝昭・・・」。
するとジェミー。

「あ。孝昭先輩は河野さんの車ですからぁ。そのうちつくんじゃないですか?」
「え~~~~。河野のランサー?」

そうです。孝昭くんが来ないと映写会が始まりません。
始まらなければ、その場を納めることがはたしてできるのかどうか。

会場入口で受け付けをしていた僕でしたが、そこに

「よーーー。セイガクぅ。おもしれぇことやるじゃねぇか。西条はいないのか?」
早乙女さんです。
実は彼こそが今回のキーマンなので、僕は早乙女さんが来てくれたことに安堵しました。

僕は極めて事務的に
「すいません。ポイントカード。お使いになりますか?」
「おお。助かるぜ!」

入場にはケンちゃんと相談の上、メルヘンカードを使うことができるようにしました。
1000円までを限度とし、2000円の入場料の半額を補えるようにしたのです。
彼らがメルヘンのポイントを持て余しているのは間違いありませんでしたから、これは集客に一役も二役も買いました。

普通ブルーフィルムの上映会は(詳しくはありませんが)ノーカット版なら当時1万円以上が相場。
そこにポイントカードを使用で1000円となれば破格中の破格でした。

ジェミーがたずねます。
「先輩~。ひとり1000円だと満席でも5万円ですよ~?効率悪くありませんか?」

「ん。いいんだよ、それで。ところで現金は持って来たか?」

「はい。190万。初めてですよ。こんなに持って歩いたの」。

それはそうでしょう。僕もありません。

次に会場提供者である会社の能瀬さんが訪れました。
能瀬さん。僕を見るなり
「盛況だなぁ。おい」。

「え、ええ。ありがとうございます」。

「いやぁ。お前のためならぁ・・・んん?」

僕は能瀬さんの笑顔に、背筋が凍る思いでしたが
能瀬さん。僕のとなりのジェミーを見つけるなり

「ん?お前はなんて言うんだ?」

「あ~~~。あの~~~~。ジェミ~です~~~」。

「ふうん。ジェミーちゃんって言うのかぁ」。

ちゃん・・・。

「え・・・はい~~~~・・・・」。

「んふふふん。。。」

あ。目移りしてくれた・・・。

「何座?」

当のジェミーは
「なんなんです~~~?先輩~~~。今の人なんなんです~~~?」

なにやら感じ取ったようです。


この間にひとつトラブルがありました。
訪れた客たちが、みんな車を道路に停めたために、大騒ぎになっていたのです。

当時のそのスジの人たちはベンツなど乗っていません。
もっと大きなダッジやクライスラーといったアメ車が主流で、普通の駐車場には納まらなかったのです。
これがズラリと並んだ訳ですから、近隣から苦情が来るのも当然で、近所のおまわりさんが出動する騒ぎになっていました。
結局、近隣の空地に停めてもらうことで一段落するまで、かなりの時間を労しました。

やがてその騒ぎのさなかに、河野くんのランサー。ようやく到着。

降り立った孝昭くん
「遅くなってすまねぇ。なんつってもランサーは制限速度以上出なくってよ~~~」。
「う、うるせぇ!」

しかし孝昭くんの腕にはしっかり駐在所の映写機。

僕は胸をなでおろしました。もっともダメな場合の予備もおさえてはあったのですが。

「駐在所に書き置きおいてきたか?」
「おお。言われた通りにしてきたぜ」。

そうです。実は無断借用。
借りたという、書き置きだけを置いてきました。

「でも、あんなんで駐在来るかな?」
「必ず来るよ。ブルーフィルム、奥さん実家に返すほど期待してたもん」。

これで万事整いました。

西条くんは、というと、ケンちゃんから借りたスーツ姿で、サングラスまでしています。
それだけ見ると、まんまヤクザ。

「よし!西条、あとは頼むぞ」。
「ああ。まかせとけよ」。


会場は満員。いよいよ上映会です!

最初、ケンちゃんから挨拶が入ります。

「あ~~~~。みんな~~~。本日は~~~。お足元の悪いなか~~~~」

西条と同じ・・・・。

「ケン!今日はピーカンだぜ?」
「なに無理矢理敬語使ってんだよっ!」
「さっさとポルノ始めろや~~~~~」。

が、
「るせぇっ!」

さすがケンちゃん。迫力がちがう。
全員が黙ります。

「今ぁ、ヤジとばしたのは、誰だぁ?あ?もう一度言ってみやがれ!」

 シ~~~~ン。

「すごいな・・・ケンちゃん・・・」。
「ああ・・・このメンバー相手にあれかよ・・・」。

もっともほとんどがメルヘンカード会員。無理もありません。

「そいじゃぁ、みんなぁ。楽しんでくれやぁ」。

明かりが落とされます。

 ジ~~~~~~~~

フィルムがまわり、いきなり怪しい画像がスクリーンいっぱいに!

 おおおおおおおお・・・。

地鳴りのようなどよめき・・・。
思えば情けない・・・・。

そして30分で『明智光秀』の上映が終了。

もう会場は言葉も出ません。

蛍光灯がともると、ようやくざわつく会場。
「本場もんはすげぇなぁ・・・」。「おお。これで1000円は安いわ」。「ったくいい企画だぜぇ」。

勝負はここでした。

ケンちゃんと西条くんが前に出ると
机が運び込まれました。

ケンちゃん。

「次の上映に入るまえに~~~~。ちょいとここで相談がある」。

さらにざわつく会場。

「こん中でー。坂本って水道屋の手形持ってるとこ。あんだろ?」

「それがどうしたぁ?」「坂本ぉ?」「持ってるぜぇ。100万」「こっちも100万だ」。

僕がそこにジェミーが用意してきた現金を置きました。

西条くん。
「ここに現ナマがある。坂本の手形、今日なら現金で買い取るがどうだ?」

そうです。映写会の狙いはまさにこれでした。

能瀬さんの会社は、坂本家の手形200万円を50万円で買い取っていました。わずか1/4です。
つまりここに一同に会した金融屋たちもそれくらいには買いたたいているはずでした。

まだ声の落ち着かない西条くんに、ケンちゃんが援護します。

「坂本んとこはもう抵当ガチガチだぁ。その手形落ちなきゃ0円。今なら現金で買いとるってんだ。悪い話じゃねぇ」。

「鈴白のぉ。いくらで買うんだぁ?」「赤じゃ手ぇ打てねぇぜ」「そうだそうだ」。

ここで、僕。
「競りです。こちらもタマ(現金)は限られていますから、安いところから順に買い取ります」。

こうすれば買いとった値段がわかります。
会場はさらにざわつきました。

「そんなこたぁ、オヤジと相談しなきゃ無理だぜ。ケン」「ああ。それに手形持ち歩いたりしねぇ」。
怒声がとびかいます。

ケンちゃんは
「いや。今日だけだ。ここで決められねぇとこはなしにしてもらう。ただし今日なら言い値でゲンナマだぜ?」

会場はさらにどよめきましたが

やがてひとりが手を挙げると

「俺んとこは50万なら手ぇうつぜぇ」。

くいついた!


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お~~~~~~。
800万HIT越えました~~~。
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しかも最年少コメンテーター、小6のぱわsくんが踏みました!
おめでと~~~~~~。

さて。本日ぼくちゅーずデー。

お休み企画なので、いつものようにのんびりアップです。

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本日もお楽しみ企画もりだくさんでお届けいたします。

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お待たせしました~。毎週火曜日はぼくちゅーずデー!

本日はぼくちゅう初の「劇画」。
最近はやりのモータースポーツものをまじめに描いてみました。

『劇画:S字の狼』
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つづきまして~~~~
映画情報~~~~

だんだんいろんな雑誌にあきらかにされてきた映画「ぼくちゅう」。
今回はまず『日本映画ナビ』9月号に掲載された
これ!
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そうですそうです。見たかったでしょ?この場面。
映画に登場します!
見れば見るほど、バカだね。こいつら。

え?僕ら?あ~~~~。あ~~~~~。

それはともかく。

ひきつづき
nigemama.jpg
そうです。
スーザホン持って逃げるママチャリ!
うーん。市原くん、がんばってる~~~

ひきつづいてバカですね。
え?僕?
あれぇ?

詳しくは今月の『日本映画ナビ』ごらんくださいね。
できれば買って(笑)。



kuranosuke_20070904074754.jpg
そしてラストは、
ファンにはたまらない、蔵之介さんの駐在さん。

こちらは、『月刊シネマスクエア』に掲載されております。
意外なことに、きまってますねぇ。

きっさまらぁぁぁぁぁ!

ちなみにこれ。いつまで掲載できるかわかりませんので。
今のうちに楽しんでね!



ではまた来週~~~~~!!!

あ。発表しなくっちゃ。1万件集計結果。
だいじょぶだいじょぶ。忘れてないから。

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