どういう風のふきまわしか、突如「パトカーで送ってやる」などということを言い出した駐在さん。
もともと、電車に乗り遅れたことからして大ウソだったので、僕たちにすれば、当然迷惑な申し出です。
ところが
「え?よろしいんですか?」
と、本屋のご主人。
「ええ。どうせパトロール行くところですから。ついでで」
いや。ついでって、行き先も聞いてないのに。というか行き先ないんですけどね。
「すみません。じゃぁ、お言葉にあまえまして、お願いしてもよろしいでしょうか」。
と、当の僕たちをさしおいて、勝手にお言葉にあまえるご主人。
「いえ、僕たち、別に今日でなくとも・・・なぁ?」
西条くんに同意を求める僕。
「ええ。のど元すぎれば熱さわすれるってやつで・・・」
バカ!ことわざの使い方が違うだろ?
「まぁ、駐在さんがそうおっしゃってくださってるんだから、遠慮しないで送ってもらいなさい。君たち。だいぶ急いでたみたいじゃないか」。
と、やさしくご主人。
「はぁ・・・でも・・・」
「ね。そうしなさい。パトカーなんてめったに乗れないし」。
僕たち、ついこないだ捕まって乗ったばっかりなんですけどね。それも警察への公務執行妨害罪で。
我々の思惑をよそに、なぜかトントン拍子(?)に話は進み、とうとう行き先もないのにパトカーで送ってもらうはめに。
まぁ、いいや。この際、駐在さんこきつかって、西条くんちあたりでおろしてもらおっと。
ということで、晴れて万引き尋問から解放され、はす向かいの駐在所へと移動することになった僕たち。
と、店を出ようとしたとき。
「君たち、今日はすまなかったね。これ持って行きなさい」。
と、本屋のご主人が僕たちに1つずつ、箱入りのシャープペンシルを渡しました。
「いえ、いいんですよ。こんなことしてもらわなくて」。
と、返そうとすると
「いいんだよ。時間とらせたね」
僕たちは、しばし無言になりましたが、あまりの申し訳なさに
「受け取れません。実は今日のことは・・・」
と、本当のことを言おうとしましたが
それをさえぎるようにご主人
「うん、いいんだ。考えてみると、君らは小学校のときからうちを利用してくれたお得意さんだ。
真冬の雪の降る中でも、体中に雪をつもらせて『小学3年生』を買いにきた君をまだ覚えてるよ。10円足りなかったって、いいっていうのにわざわざ家までもどって。
2度めについた時には、もう閉店間際だった。
寒かったろうに。
そんな君らを一瞬でもうたがった自分が恥ずかしいよ。
だから・・・持って行きなさい。これは、あのときのお礼だよ」。
僕はやさしいご主人の言葉に目頭が熱くなりました。
「すみません・・・・でした」。
駐在さんは、僕のあたまを、コツンとなぐりました。
もう10秒、そこにいたら涙がこぼれていたにちがいありません。
余談ですが、僕は、このときご主人にいただいたシャープペンシルを今でも持っています。黒い三菱製のシャープペンシルでした。
駐在さんの「パトカー」は、いわゆる交機などのパトカーと違い、ちっこいホンダシビックです。
うれしくはありませんでしたが、その後部座席に並んで乗る西条くんと僕。
商店街にある駐在所は、通行人が多いので、みんながなにごとかとのぞいていきます。
それは「送ってもらう」と言うよりは、どう見ても「つかまった」というふうにしか見えません。
となりの和菓子屋の店員などは、わざわざ店から出て来て見ている始末。
僕たちは、駐在さんに一刻も早く出発してくれるようたのみました。
ところが。
そこに、本屋のご主人がかけよってきました。
なにごとかと僕が窓を開けますと、
「これ。行くときに食べなさい」。
と、エールチョコを2つ、渡してくださいました。
いや、重ね重ねありがたいんですけど、
ご主人、それ傍目には、どうおせじに見たって「少年院に護送される高校生が差し入れもらってる」光景なんですけど。
実際、ほとんどの通行人が立ち止まってこちらを見ていました。
ああ・・・どんどんこの町が住みにくくなっていく・・・・。

<♪大きいことはいいことだ♪の森永エールチョコレート>


2章-第16話へつづく どうして諸葛孔明伝?
もともと、電車に乗り遅れたことからして大ウソだったので、僕たちにすれば、当然迷惑な申し出です。
ところが
「え?よろしいんですか?」
と、本屋のご主人。
「ええ。どうせパトロール行くところですから。ついでで」
いや。ついでって、行き先も聞いてないのに。というか行き先ないんですけどね。
「すみません。じゃぁ、お言葉にあまえまして、お願いしてもよろしいでしょうか」。
と、当の僕たちをさしおいて、勝手にお言葉にあまえるご主人。
「いえ、僕たち、別に今日でなくとも・・・なぁ?」
西条くんに同意を求める僕。
「ええ。のど元すぎれば熱さわすれるってやつで・・・」
バカ!ことわざの使い方が違うだろ?
「まぁ、駐在さんがそうおっしゃってくださってるんだから、遠慮しないで送ってもらいなさい。君たち。だいぶ急いでたみたいじゃないか」。
と、やさしくご主人。
「はぁ・・・でも・・・」
「ね。そうしなさい。パトカーなんてめったに乗れないし」。
僕たち、ついこないだ捕まって乗ったばっかりなんですけどね。それも警察への公務執行妨害罪で。
我々の思惑をよそに、なぜかトントン拍子(?)に話は進み、とうとう行き先もないのにパトカーで送ってもらうはめに。
まぁ、いいや。この際、駐在さんこきつかって、西条くんちあたりでおろしてもらおっと。
ということで、晴れて万引き尋問から解放され、はす向かいの駐在所へと移動することになった僕たち。
と、店を出ようとしたとき。
「君たち、今日はすまなかったね。これ持って行きなさい」。
と、本屋のご主人が僕たちに1つずつ、箱入りのシャープペンシルを渡しました。
「いえ、いいんですよ。こんなことしてもらわなくて」。
と、返そうとすると
「いいんだよ。時間とらせたね」
僕たちは、しばし無言になりましたが、あまりの申し訳なさに
「受け取れません。実は今日のことは・・・」
と、本当のことを言おうとしましたが
それをさえぎるようにご主人
「うん、いいんだ。考えてみると、君らは小学校のときからうちを利用してくれたお得意さんだ。
真冬の雪の降る中でも、体中に雪をつもらせて『小学3年生』を買いにきた君をまだ覚えてるよ。10円足りなかったって、いいっていうのにわざわざ家までもどって。
2度めについた時には、もう閉店間際だった。
寒かったろうに。
そんな君らを一瞬でもうたがった自分が恥ずかしいよ。
だから・・・持って行きなさい。これは、あのときのお礼だよ」。
僕はやさしいご主人の言葉に目頭が熱くなりました。
「すみません・・・・でした」。
駐在さんは、僕のあたまを、コツンとなぐりました。
もう10秒、そこにいたら涙がこぼれていたにちがいありません。
余談ですが、僕は、このときご主人にいただいたシャープペンシルを今でも持っています。黒い三菱製のシャープペンシルでした。
駐在さんの「パトカー」は、いわゆる交機などのパトカーと違い、ちっこいホンダシビックです。
うれしくはありませんでしたが、その後部座席に並んで乗る西条くんと僕。
商店街にある駐在所は、通行人が多いので、みんながなにごとかとのぞいていきます。
それは「送ってもらう」と言うよりは、どう見ても「つかまった」というふうにしか見えません。
となりの和菓子屋の店員などは、わざわざ店から出て来て見ている始末。
僕たちは、駐在さんに一刻も早く出発してくれるようたのみました。
ところが。
そこに、本屋のご主人がかけよってきました。
なにごとかと僕が窓を開けますと、
「これ。行くときに食べなさい」。
と、エールチョコを2つ、渡してくださいました。
いや、重ね重ねありがたいんですけど、
ご主人、それ傍目には、どうおせじに見たって「少年院に護送される高校生が差し入れもらってる」光景なんですけど。
実際、ほとんどの通行人が立ち止まってこちらを見ていました。
ああ・・・どんどんこの町が住みにくくなっていく・・・・。

<♪大きいことはいいことだ♪の森永エールチョコレート>


2章-第16話へつづく どうして諸葛孔明伝?








>このときご主人にいただいたシャープペンシルを今でも持っています。黒い三菱製のシャープペンシルでした。
え〜話やなぁ。(;__;)ウルウル
私の家から、この本屋さんまでは6kmくらいありました。
だからこの時は、24kmも歩いたことになります。
本屋さんは、時代の流れに勝てず、なくなってしまいましたが、このご主人は、いまだご健在です。
かんどうした。本屋さん、やさしいな。