ぼくたちと駐在さんの700日戦争

 

  
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<おことわり>本日フィナーレ。3話連続アップです。
9章-第61話からどうぞ
9章-第63話へ→
僕は大慌てでコートをはおり、靴をはきました。

  こうしちゃいられない!

すると玄関扉のところに、またしても母。

「どこ行くつもりなんだい?」

「うるさい!どいてくれ!」

「どけないわね」。

「母ちゃんたのむ・・・」。

「だめ」。

僕は、ふと横目でテラス窓を見ました。

あそこなら・・・・。

「わかったよ・・・。母ちゃん・・・・」。

「ごめんね。これもお前の・・・」。

今だ!

僕は靴のまま廊下を走り、テラス戸を開きました。
そしてそのまま外へと飛び出したのです。

「あ!こら!」

母の声が後ろに聴こえましたが、かまっていられません。


和美・・・。和美。間に合ってくれよ。

当時、電話の移設は大事で、だいたい2週間以上かかりました。
したがって、電話が先にはずれていることはめずらしいことではありません。
その間、家の連絡はどうするか?というと、近所や、最寄りの店に連絡を頼んだものでした。

僕はとなりの家をたずね

「すいません!自転車、借りていいですか?」

「あー。いいけど。明日までは返してくれよー」。

僕が借りた自転車は、ひどく年代物の、ペダルを漕ぐたびにキーキー言うようなシロモノでした。
が、それでも歩くよりはずいぶんとましです。

和美の家・・・・。こっち・・・・。

風を切る自転車。

目にうつる風景は、すべて和美ちゃんとの思い出があります。

あっちにも・・・こっちにも・・・・。

そうか。和美。こんなに僕の中に・・・・・。

あそこで和美、転んでた。そうなんだ。あそこで笑って・・・
あそこで僕にプレゼント渡して・・・はにかんでたっけ・・・・。

なんで気づかなかった?
こんなに僕の中にいることを。

目にうつる風景すべてに君がいたことを。

あそこも・・・あっちにも・・・。



   馬鹿だ・・・・・・・・。





そしてついこの前。雪玉をぶつけた和美ちゃんの家が、ようやく見えて来ました。

僕は自転車をそのあたりによりかからせると、和美ちゃんの家の庭へと走りました。

もうすでに息が続かず、心臓の音が耳に響いています。


そして僕の目にうつったのは・・・・。


なにもない、もぬけの空の家でした・・・・・。


なんで・・・・。3月6日じゃなかったのか・・・・・。和美・・・嘘ついたのか?

別れがつらいから?



どうして・・・・・。



僕が呆然と立っていると、誰かが声をかけてきました。

「あら?この家にご用事?」

「え?」

それはご近所のおばさんでした。

「あの・・・。この家・・・いつ、越したんですか?」

「え?ああ。昨日よ。九州なんですってねー。公務員もたいへんよねぇ」。

「そう・・・ですか」。

「あなた、和美ちゃんの同級生かなんか?」

「ええ。あの・・・。中学からずっと一緒だったんですが」。

「和美ちゃんなら、さっきバス停にいたわよ?」

バス停?

「ほ、ほんとですか?」

「ええ。和美ちゃんねぇ・・・」

「ありがとうございます!」


僕は大慌てで走り出しました。
どういうわけで和美ちゃんだけがバス停にいるのか、それはわかりません。

でも、少しだけ神様はチャンスを残してくれました。

そうです。告白のチャンスを。

僕はたてかけていた自転車にまたがると、おもいきりペダルを漕ぎ出しました。

そこを曲がれば大通り。

小学生たちが下校しています。
僕はそれをかわしながら前に進みました。

バスだ!まだ出発していない!

「か、かずみ・・・・・」。

遠くに見えた後ろ姿。
和美ちゃんです。間違いありません。

ずっととばしっぱなしの足はすでに限界に達し、油のさされていないペダルがやけに重く感じます。

ああ・・・もう少し・・・もう少しなのに・・・・

 ああ悪魔。魂と交換でもいい。足に、力を。もう少し。足を動かしてくれよ!

しかし、ここで下校中の小学生のひとりが思わぬ動きをしました。
僕はそれを避けようとしましたが

キキッ

ハンドルを切り損ねて、その場に転びました。

小学生たちが驚いてこちらを見ているのがわかります。

あ・・・。急がないと・・・・。

が、自転車が足に奇妙にからんでいておきあがれません。

僕は・・・・。そのまま地べたに腹這いのままで

バスが走り出すのを見送ったのです。




やがてバスの去った道を、自転車をひいて歩きました。
足がへんにからんだのか、痛くてペダルが漕げないのです。

それでも自転車によりかかれるおかげで、僕は前に進むことができました。
ひどく歩みは遅く、おおよそバスに追いつけるようなものではありませんでしたが。

僕は、つい先日、和美ちゃんを送った道を、逆にたどっていました。

   「私ね・・。君のする悪戯も。けっこう好きなんだ・・」。
   
   「うれしかった。こんなことでも、私をたよってくれたこと!」。


和美・・・。

   「あたし。心に思ったことには正直になりたいのね」。

   「だから好きな人には、すぐに好きって・・・言っちゃうんだ・・・あたし」。

   「ぜんぶ。記念日なんだ。あたしの・・・」。


和美・・・。

   「でもひどいよ・・・」。

   「え?」

   「思い出には勝てないよ」。


自転車にひかれながら、和美ちゃんの言ったひとことひとことが頭をよぎります。

ずっと。そこにいてくれたのに・・・。僕は・・・・・。


    そしてフィナーレ!
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コメント

ここ最近ぼくちゅうに泣かされっぱなし!
胸が痛いです…

ママチャリ…
2007/02/28(水) 01:55:14 | URL | のりぞお #-[ 編集]

ぅゎぁーーー。何がどうなってるのかわからないけど、何かがおこっている・・・・
いよいよ感動のフィナーレだぁー
2007/02/28(水) 01:56:32 | URL | みお♪ #gM6YF5sA[ 編集]
せつなくるしい
10分間…待つよ、待つともさっ!
締め付けられるようです。
2007/02/28(水) 01:57:10 | URL | axelon #JalddpaA[ 編集]

切ない(>_<)ほんとにフィナーレでは幸せであって欲しいです(/_;)
2007/02/28(水) 01:58:47 | URL | ぷりん #-[ 編集]

あかん、もう、うる(;_;)ウルきよる。
9章サイコー
2007/02/28(水) 01:58:56 | URL | 兵庫のわきやん #-[ 編集]

和美ちゃん行っちゃったぁ(T T)

ママチャリは和美ちゃんに告白できないまま終わっちゃうんですか?
2007/02/28(水) 01:59:26 | URL | dosuen #-[ 編集]

「ええ。和美ちゃんねぇ・・・」

がすっごい気になる!!
2007/02/28(水) 02:07:24 | URL | NEKO #-[ 編集]

黙って続き読みます。
2007/02/28(水) 02:37:04 | URL | じゅんぢ #-[ 編集]

>「ええ。和美ちゃんねぇ・・・」

きっとおたかさんが、何かしたな。
そうに違いないと信じつつ、、、、
次、いよいよフィナーレいきます。
2007/02/28(水) 06:08:29 | URL | テラsan #oyCfJ0mM[ 編集]

泣かされてしまいました。

慰謝料として、ハッピーエンドを!
2007/02/28(水) 07:05:24 | URL | 迷い仔猫 #-[ 編集]

ああああっ(PД`q。)
切ないッッ 切ないよ、ママチャリィ
和美チャンは…?ママチャリの恋はここで終わっちゃうの?

違う、絶対フィナーレじゃ笑顔になれる。それがぼくちゅうぢゃんッッ


判ってはいるものの…泣けてくる~・゚・(つД`)・゚・
鼻水すすりつつ、ラスト読むぞおッッ。
2007/02/28(水) 08:07:35 | URL | るみちょ #-[ 編集]

ものすごく和美ちゃんが、好きな事を思い知らされた瞬間だったわけですネ。
”好き”って事を、自覚してからのママチャリさんの行動を、ドキドキしながら読んでます。
おタカさんの事だから、ママチャリさんが後悔するような行動には、ふかぁ~~~~い訳が、きっとあるのでしょうネ。
2008/06/09(月) 17:29:04 | URL | 経理のおばん #5uDVk7ho[ 編集]

ここの話が一番感動した話です。
フィナーレよりよっぽど心情がにじみ出していてすばらしいと思いました。

ママチャリさん、ほんとに才能ありすぎですよ…
他の小説もっと書けば売れますよきっと。


でもそれをしないのがママチャリさんなんですよね




これは私の願望なんですが、
ぼくちゅう終わってしまったら
フィクション作品もブログでやってほしいです。


もっとアイディア膨らむだろうし。
ママチャリさんの想像力(妄想力)を生かせるはずですから



長文失礼しました。
2011/04/10(日) 17:02:59 | URL | 名もない読者 #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011/04/10(日) 17:03:02 | | #[ 編集]

切ないです、、、
2011/08/07(日) 16:42:43 | URL | ころ #-[ 編集]
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