ぼくたちと駐在さんの700日戦争

 

  
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現場につく前に、俺はどうしても立ち寄らねばならない所があった。

少年が入院している病院だ。

すなわち、西条がいる病院でもあるわけだが

「あ、どーも、富樫さん。わざわざすみませんな」

「いいえ〜。うちの患者さんの話ですもの」

ママチャリの企みから出た「富樫サン」の縁だが、それなりに役にはたった。

「本当に打ち上がるんですか?そこに?」

「ええ。消防署の方から頼みましたから。間違いなく。そちらは?」

「今夜の話を今朝でしたから。さすがにみんな持ち合わせがあんまりなくって・・・・」

打ち上げ花火は1発2000円あまり。

10発なら2万円だが、これに職人の日当が加わるので、けっこうな額になる。

俺一人ではなんともならない。

そこで図々しいことと知りつつ、婦長に「会費」として集められないかお願いした。

なにしろ、ここには、俺たちとは桁がちがう「お医者様」がゴロゴロいる。

「いや、これは!じゅうぶんです!」

「そうですか? よかったわ〜。ここだけの話、なにしろこういうトコでしょ? いろんな寄付集めがしょっちゅうあるのよ。みんな悪い意味で慣れちゃってて・・・・」

「ああ・・・わかります。我々もそうですから」

「でも、花火大会となればね〜。みんな楽しめるし!」

そう言ってから、

「・・・それから、コレ」

富樫婦長は、集まった寄付とは別に5000円札を差し出した。

「?」

「わかんないけど・・・・西条くんの友達は、花火、盗むつもりなんでしょ?」

「どうして・・・それを?」

正直、驚いた。

「どうしてって。おまわりさんが緊急でいらっしゃったんですもの。分かりますよ。ほほほ」

「そ、それもそうですな・・・。いや、別に決まってることじゃ・・・その疑いがあるってだけで」

「私も、何度も見ましたから。あの子が花火屋に電話かけては断られてたの」

「そうか。ご存知でしたか・・・・」

「それで。こちらはその代金」

「いや、そんなことは!」

「やはりまずいですか? でも、少しでも罪を軽くしてあげたくって」

さすが西条だ。

こんなわずかな入院期間に、これほど人から愛されている。

それはあの少女のおかげなのかも知れないが。

「大丈夫です。そちらは必ず阻止しますから。お約束します」

「それなんですけど・・・・・」

婦長は驚くべきことを言った。

「・・・・できれば。成功させてあげてくれませんか?」

「はあ?」

「いえ、立場上無理なのはわかりますけど。なんて言ったらいいかしら・・・・、西条くんの花火じゃなきゃ意味がないような気がして・・・・・」

意味がない・・・・西条の花火でなければ・・・・

「リョウくんの就寝時間は、他の子よりは少し早くって、午後8時。それが8時半にしてくれって頼むんですよ。ミカちゃんと一緒に。楽しみにしてるんです」

「ですから、いずれにせよ花火は、それくらいには・・・・」

「んーーー、あの子たちにとって、西条くんはヒーローなんですよ。たった一人で悪者(茶木たちのこと)と戦って勝って。たのんだことは、なんでもしてくれる」

「ああ。アイツは、子供の扱いだけは上手いみたいですからな」

「西条くんは、ずいぶん早くから約束してました。あの子たちが待ってるのは、西条くんの花火なんですよ」

「西条の・・・・花火・・・・・・」

「リョウくん、今朝はまるで普通の子みたいに元気なんですよ」

 西条の・・・・花火・・・・・・

しかし。

「受け取れません。職業がら」

「そう・・・ですか・・・・・・」

「はい。彼らが盗みをはたらけば、本官は捕まえるしかありません。分かっていて見逃すわけにもいきません」

「そう・・・ですか・・・・・・・」

婦長の二度同じ返事をしたが、二度目の返事はずいぶんと声が沈んでいた。

「わかってください。未然に防げば未遂。成功させれば少年たちは犯罪者なんです」

「そう・・・ですね・・・・・」

高校生どもの浅知恵は、周囲の大人たちはとっくに見越していた。

みな「見て見ぬフリ」をしたかっただけ、で。

そうとも知らず。


「ジェミ〜〜〜あ〜〜んど〜〜〜〜」

「SO!」「ON!」「SO!」「ON!」




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コメント

ずっと、気になってはいましたけど
駐在の気持ちだけでは無かったのですね
打たしてあげたのは…
やっぱり愛されてるなぁ
2017/05/16(火) 22:53:58 | URL | キリッキー #-[ 編集]

ジェミーアンド「騒音、騒音」、やっぱ当日もやってんですねぇ~。
流石はジェミーじゃ(笑)
2017/05/16(火) 22:58:54 | URL | 灰色チャップリン #-[ 編集]

サヨナラ西条は書かないんですか?
2017/05/17(水) 00:04:58 | URL | Huk #-[ 編集]

周りのことなど何も気づかず 掛け声かけてますね〜
2017/05/17(水) 00:31:13 | URL | きゅう #WzzJX4NY[ 編集]

どうしても、盗む、
という発想が、
大人と子供の違いかなぁ。

むしろ、イタズラとして
どうしたら盗みにならないか、
が、子供なりに一番考えてるところだとは、思います。
2017/05/17(水) 06:58:30 | URL | にしかご #-[ 編集]

しかしまあ、
シリアス回だと思ったら、

最後の
SO ON SO ON
だけで、くクスッと笑えてしまうのは
不思議なもんですね
2017/05/17(水) 07:01:19 | URL | にしかご #-[ 編集]

皆さん行動力が凄いです⸌⍤⃝⸍そうおんそうおんっ!
2017/05/17(水) 07:22:41 | URL | こあら #b9TkAtpA[ 編集]

最後の掛け声は懐かしいですね(^ ^)
2017/05/17(水) 08:04:17 | URL | 虚空の双牙 #-[ 編集]

西条の花火
これだけでなんか泣けます(´Д⊂ヽ
2017/05/17(水) 08:09:54 | URL | 馬刺し #7zcsReec[ 編集]

富樫さん、

何て優しいお言葉
まさか、自分のブラジャーで、
その花火が運ばれようとしているのを知らずに、、、
2017/05/17(水) 09:28:10 | URL | にしかご #-[ 編集]

やっぱり婦長さんも気が付いていたんですね。しかも寄付まで集めていたとは。たくさんの大人に見守られていたことにグッときます。そしていよいよ掛け声と共に作戦決行ですね!
2017/05/17(水) 11:26:31 | URL | ゆいとん #-[ 編集]

大人達は高校生の企みを知っていたんですね……。
知っていて、リョウ君の為に成功させてあげたいと思っていた…。

映画や小説では花火は上がりましたけど、この時事情を知っていた駐在さんは職務と成功させてあげたいと思う気持ち、どっちを優先させるかで悩んでいたんでしょうね……。
2017/05/22(月) 12:57:22 | URL | ゴシック #3e8iSKFg[ 編集]
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