そう。本来、警察官は犯罪を「捕らえる」よりは、未然に防ぐのが仕事。
(このため、レーダー測定は、この精神に反しているとされて、この数年後より予告するようになり、自動取締機には予告板が掲示されるようになった)
頼みは、先行して現場に行っている的場だが・・・・・・
「なーにこんなとこで油売ってる!?」
「あ、リーダー。油売ってません。ワタアメ買ってんですけど?」
「誰がそういう上手を言えと!?」
的場のヤツは、駐輪場でのどかにワタアメなんぞほおばっていた。
「いや、だって、リーダーが、井上君のママチャリを見張ってろと・・・」
「あ?」
シマッタ!
『ママチャリ』ってー呼び名は俺ら夫婦くらいしか分からなかったんだ・・・!
「え?なんで『ママチャリ』なんです?」
「それを話すと、始皇帝の壷の鑑定くらい長くなる・・・」
「壷?」
「いいから。それで?」
「彼なら、原付で来てましたよ?」
「原付? ママチャリがか?」
あー、なんだろ。2連発で言うとコンボで腹がたつ!
「原付は原付です。ママチャリは自転車」
「だーーーかーーーらーーーー」
ああ、通じねぇーー!
「ここに来たんだな!?」
「ええ。ついさっき」
「どこだ!どこにいた!?」
「花火の打ち上げ会場の方に」
「ほ、本当か!?」
遅かった・・・・か!?
・・・・に、思われたが、
「でも、心配いりませんよ」
「なんで?」
「なんでって、これ、井上君の自転車ですから」
「井上の!?」
「ええ。って言うか、井上君の自転車は、ママチャリじゃなくスポーツ車でしたけど」
「どれだ!?」
「だから、これ」
西高の自転車シール・・・と、俺が貼らせた『ゆっくりはしろう』シール・・・・間違いない!
ってことは、井上はいずれここに現れるってことだ・・・・・。
ヤツには、今、キツい門限がある。
婦長・富樫さんの話から考えると、打ち上げ予定は午後8時頃。
その前には、必ず自転車をとりにくる!
「でかした!」
今回は、井上のヤツには翻弄されるだけ翻弄されたが、
ココに現れたら運のツキってヤツだ。
「よし!悪いが、的場。このまま見張っててくれ。もし井上が現れたらとっ捕まえとけ」
「え?リーダーは?」
「俺は、ちょっと消防署長と会わねばならん」
「わかりました」
「くれぐれも逃がすなよ? 」
「わかってます」
「たのむ!」
それから、ヤツらは馬脚を現しまくった。
消防署長と会ったすぐ後、ヤツらの打ち上げ現場へと向かおうとした、その時だ。
「・・・・・ン? あれは!」
千葉だ!
間違いない!
千葉のバイクは、警察官である兄のおさがりなのでよく分かる。
なにより、『ゆっくり走ろう』シールでな!
「どこへ向かってやがる?」
言うまでもなく、ママチャリたちの所だろう。
できれば気づかれないまま尾行したいところだが・・・・。
俺は前に数台の車をはさんだまま、千葉のバイクを追った。
方角は、Y市!
「 間違いない!」
一網打尽のチャンスだ!
ところが、やはりシビックパトカーは目立ちすぎた。
「気づかれたか!?」
突然、千葉が速度を上げやがった!
実は、駐在所のパトカーは、パトカーでありながら、速度違反を捕まえる機能まではない。
追尾はできても「証拠」が残せないからだ。
警官を兄に持つ千葉は、そこをよく知っている。
「まぁいい・・・・」
花火大会会場の駐輪場は一カ所だけ。
「的場ーーーーーー」
「あ。リーバー」
的場は、今度はヤキソバを食っていた・・・・・。
「バカヤロウ!見張ってろって言っただろが!」
「大丈夫でふ。ひゃんと見てまひたはら」
「食い終わってから話せ・・・・で?」
「まだ現れませんね〜」
「まだ?」
おかしい・・・・・・
「あ、でも。千葉君が来ましたよ。ホラ」
ホントだ! 千葉のバイク!
「え!なんでとっ捕まえなかったんだ!」
「え〜〜? 井上君は言われてましたけど、千葉君のことはリーダー言ってなかったじゃないですか」
「くっ・・・・!」
「それに、井上君ならともかく、千葉君を押さえるのはコッチもそれなりに覚悟いりますよ?なにしろ、あのガタイですから」
俺と的場は、しばらくそこで待ったが、
井上も千葉もそこには現れなかった。
「リーダーもなんか食いますか?ヤキソバ、買って来ましょうか?」
「バカ言え。これでも勤務中だ」
ひょっとして・・・・これも井上の囮・・・・・・?
そのことに俺が気づいたのは、井上の門限である午後7時を過ぎてからだった。
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あの時には書かれてなかった攻防が見えて
楽しいです笑
でも、どこまでが裏なのかわからない笑
駐在さん視点とても面白いです!!
なんだか、マスター、
ジェミーみたいですね。
って、ジェミーは、どこまでバレてるんだろ?
「ゆっくり走ろう」シールがここで役にたつとは。千葉兄にも貼らせてたんですね(笑)
ほえーーーー
井上君の脳はどうなってるんですか!?笑
先読みの能力凄すぎです笑
裏で井上くん大活躍だったんですね。やっぱり作戦の邪魔は親方の身の上話だけじゃなかったんだ(笑)それにしても、マスター役に立ちませんねぇ(≧∀≦)
どこまで読んでるか気になりますね(^ ^)
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裏の裏をかいてますね!