ぼくたちと駐在さんの700日戦争

 

  
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母の日は、僕らみたいなのでも平等にやって来ます。

特に母一人子一人の西条くんは「母の日」を重視していて、毎年「仇たたき券」とか「今さらお母さんの似顔絵」とか、あまり役にたちそうにないモノを贈っていましたが、いちいちみんなに公言するので、みんなもけっこう感化されました。

「俺、今年、母ちゃんにヨウカンつくってやるんだ!」とはチャーリー。

「ほら、ウチ、母ちゃんけっこうババアだからよ」

チャーリーのとこは、長男と歳が離れている「サザエさん型一家」なので、母親も群を抜いて年老いています。

「あー、そりゃいいなー」

「だけど、チャーリー。ヨウカンなんて面倒なもの作れるのか?」

「お前、なんのために和美とつきあってんだよ?」

え!人のカノジョだのみ!?

「和美、京都の修学旅行で和菓子研修してんだ」(※なにを隠そう、花ちゃんの実家『橘』)

「よく知ってるなー‥‥‥」人のカノジョのことを‥‥‥‥。

「材料はもう買ってある!」というので、さっそく和美ちゃんのところへ頼みに行くと、

和美ちゃん、
「え!小豆からヨウカンつくるの?」

ちょっとビックリしてます。

「え?ヨウカンって小豆から作るんじゃねぇのか?」

「そうだけど‥‥‥、豆から作るのって、かなり時間かかるよ?」(←かかる!)

「マジか!?」

「小豆、水につけて、茹でて蒸らすだけでも2時間くらいはかかるんじゃないかなぁ‥‥」(←かかる!)

「まいったなぁ‥‥‥母の日終わっちゃうじゃん」
「ギリギリで頼むからだよ。チャーリー」

「そうだ!」とチャーリー。

「森田ならなんとかなるかも知れない」

「あーー‥‥‥」

これまでも、不可能を可能にしてきた科学者・森田博士。

「ああ。圧力をあげれば速く茹で上げることはできると思うな」(←本当)

「圧力‥‥‥‥」森田くんにこの単語は、危険な香りしかしません。

でも、一度こういう話を聞くと、森田くんは必ず挑戦せずにはいれないタチです。

さっそく学校の化学室で仰々しい道具を並べ出し、

「これが高出力バーナー。で、これが加圧装置。で、こっちが過酸化水素でこれが二酸化マンガンで‥」

これだけ聞いて、「アンコを作る」道具と理解できる人は、ほとんどいないと思われます。

「大丈夫?森田クン」

和美ちゃんも、研修して来た和菓子とのあまりの違いに心配そうな表情。

「う〜ん。僕もさすがにアンコを作る実験はしたことないので。でも、加圧のしかたは基本同じだよ」

(当時、圧力鍋などというものはなかった時代。加圧装置は、本当に化学実験用品くらいしかなかった)


 シューーーー‥‥‥!

「現在、1.6バール!…1.8バール‥‥2バール!」

「アンコづくりとは、とうてい結びつかない単位だな‥‥森田」

「1.013バールで1気圧ということだ」

「「「へ‥‥へぇ〜〜‥‥‥‥」」」

(※ちなみに圧力鍋は、1.5〜2気圧=1.5〜2.02バール)

「気圧が高いと水の沸点は高くなる。2バールだと水は128°Cに達するんだ」(←本当。このため圧力鍋は速く料理ができあがる)

 シューーーー‥‥‥!

なのに、

「現在、2.6バール!…2.8バール‥‥」

「えっと‥‥‥‥、森田。ちょっと高くねぇか?」

「時間がないんだろ?」

「それはそうなんだけど‥‥‥。あ、和美は外出てた方がいいぞ?」

「あら、どうして?」

「えっと、今までの体験上‥‥‥」

和美ちゃんが部屋を出たと、ほぼ同時


 バーーーーーーーン!!


あまりにも案の定。

3バールの加圧で、アンコは水蒸気爆発することが分かりました‥‥‥‥。

「「あ‥‥‥‥あっぶねぇ〜〜〜〜〜‥‥‥‥」」

僕とチャーリーは、すでに机の下に避難済み。

「おかしいなぁ〜。3.5バールまで耐えるって書いてあるのに」

これも例によって、まったく反省の色のない森田博士。

「だからってギリギリまでチャレンジするヤツがどこにいる!?」

哀れ、チャーリーの小豆は、化学室中にちらばってしまいました‥‥。



「どうしよう‥‥‥‥‥」

途方にくれるチャーリーに、和美ちゃんが、

「黒砂糖はたくさんあるから、それでヨウカン作ったら?美味しいと思うよ?」

「おお・・・!さすが和菓子研修済み!」

黒砂糖なら、加圧する必要はありません。

チャーリーの家の工場へ移動しまして、

「ハイ。これで後は冷やすだけだよ?」

「う〜ん。黒くてドロドロしてて、あんまり美味そうじゃねぇな〜」

パッドに入った黒砂糖ヨウカンの素は、確かに美味しそうには見えません。

「そんなことないわよ。母の日はキモチだよ」

「そ、そうだな。ヘへへ‥‥」

「あ、あたし、帰らないと!ウチも母の日‥‥」

「あー、わりいな。和美」

よほどうれしかったのでしょう。
チャーリーは、わざわざ橋のたもとまで、和美ちゃんを送っていきました。

ところが、チャーリーが工場までもどってくると、黒砂糖ヨウカンがありません!

「あ!アニキ!ここにあったパッド知らねぇか?」

「あー。そこにあった廃油なら捨てといてやったぞ?あれ、お前のバイクのか?」

「は‥‥‥‥廃油‥‥‥‥‥」



結局、チャーリーの母の日のプレゼントは、小豆のシブ抜きをしたときの、小豆汁になってしまいました。

「か‥‥‥母ちゃん、ゴメン。こんなものしかなくって‥‥‥‥」

「いいよ〜。千晶。とっても美味しいよ?」

「う‥‥‥う‥‥‥‥‥‥‥」

「馬鹿だね、千晶。なに泣いてるんだい?」

チャーリーの泣いている理由は、うれしかったのか、それとも悔しかったのか‥‥‥。

それはチャーリー本人にしか分かりません。

でも、分かっていることは、お母さんが、とても嬉しそうだったことです。



   ーー おしまい ーー




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コメント

アニキ…廃油…
それにしてもチャーリーのお母さんは良い人ですね
つい最近、和美ちゃんの修学旅行の話を読み返したばっかりなのでタイムリーな話でした(笑)
2018/05/14(月) 00:07:43 | URL | ひなと #-[ 編集]

ひさびさのショートでした。
面白かったですか?

黒砂糖を煮立てると、本当に廃油とソックリになります。

2018/05/14(月) 00:25:44 | URL | くろわっ #NB/JWtcg[ 編集]

面白かったです〜〜〜🎵
羊羹を作るといった時点で、あんな面倒なもんはまず無理だろうとは思いましたが、頼った相手が森田くんというのが最大の間違いでしょう(笑)化学室で実験道具を使って作られた羊羹!もし成功しててもなんか嫌かも?その上、次がチャーリーの家の工場だし。どうして普通に調理室に行かなかったんでしょう。まぁ、どんな経緯があったにしても、子どもが母の日に何かしようと思ってくれただけで、母は嬉しいんですけどね〜
2018/05/14(月) 00:37:20 | URL | TEN子 #-[ 編集]

『バール』
という単位がずいぶん懐かしい(^ ^)
ショート、最高でした!
2018/05/14(月) 02:46:49 | URL | 蜂一号 #-[ 編集]

幸せな母の日ですねっ!
森田くんは流石だなあ!!
2018/05/14(月) 13:29:29 | URL | こあら #-[ 編集]

バールという料理では馴染みのない単位に吹き出してしまいました(笑)

母様への気持ちは届きましたね(^^)
2018/05/14(月) 13:37:55 | URL | 馬刺し #7zcsReec[ 編集]

面白かったです!
2018/05/14(月) 19:14:56 | URL | ひなと #-[ 編集]

チャーリー…(>_<)

パッドって何ですか?
2018/05/14(月) 22:15:44 | URL | 求肥 #NkOZRVVI[ 編集]

面白かったです!
私は母の日とかしてこなかったので感化されますが、今更できない…
2018/05/14(月) 22:53:59 | URL | あずき #-[ 編集]

バールを聞いたことがない…。
これがジェネレーション・ギャップですか…。
2018/05/14(月) 23:54:25 | URL | FEAL #nlnIFoG6[ 編集]

久し振りに腹かかえて笑いました。ありがとうございます。
2018/05/15(火) 06:45:33 | URL | 雪若○ #-[ 編集]

いつもながら

そよ風を台風にしてしまいますね

少しは、小豆、残しておけば、
廃油じゃなくて、お汁粉くらいできたかも
2018/05/15(火) 07:52:08 | URL | にしかご #-[ 編集]

チャーリーは頑張ったよ!
そして安定の森田博士
2018/05/15(火) 23:38:00 | URL | Ted #-[ 編集]
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