ぼくたちと駐在さんの700日戦争

田舎町で繰り広げられたしょーもない悪戯戦争です

  
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「よーし!じゃぁ、次、ドラゴン、いきま〜す!」
大張り切りのジェミー。
dragon.jpg
「次はお待ちかね!ドラゴンですっ!」

「さぁ!次はすごいですよ〜! ドラゴンでーす!」

「はい!奇麗でしたね!では次はなんだと思いますか〜?みなさん!」

「・・・ドラゴン・・・・」。

「大当たり!ドラゴンでしたー!」

「・・・・・・」。
「おい。花火大会って言って呼んどいて、なんでドラゴンばっかなんだよっ」。
後から呼ばれた孝昭くんたちは、不満たらたら。呼んだ僕に文句を言います。

「うん・・・深い事情があるんだよ・・・」。

これに対してジェミー猛反発。

「えーっ!先輩の言う通りにしてたら、これ全部ロケット花火だったんですよっ」。

「だからぁ、ロケット花火は目的があったんだよっ!」

「あんな汚いの花火じゃありません!」

「・・・」。

ひととおり言うと、またジェミーが盛り上がります。

「さぁ!じゃぁ次のドラゴンは、どんなドラゴンかなぁ?」

「・・・おんなじだと思いま〜す・・・」と、僕たち。

「違います!」

「お?なにか芸あるのか?」

「次はふたつ一緒ドラゴンでーす」。

「はぁ・・・・」。

結局ドラゴンかよ・・・。まぁ、それしか買ってないっていうんだから、それしかないわけなんですが。

ますますハイテンションなジェミーに
「なぁ。あと何個あるわけ?ドラゴン・・・」。

「大丈夫です!いっぱいあります!」

「いや、大丈夫か聴いているんじゃなくって。いくつ残っているわけ?」

「うーん。あと50個くらいですかね。だいぶやりましたから」。

「え?お前全部で40個って言ってなかったか?」

「やだなぁ。先輩。僕のポケットマネーで買い足してきたんですよ〜」。

「え!ドラゴンを?」

「もちろんです。だって足りなくなっちゃったら困るから」。
誰も困りませんけど・・・。

「お前、ほかの花火をとりそろえようとか、まったく思わなかったわけ?」

「え?あたりまえでしょ?」

なにが「あたりまえ」なのでしょう?
これだけ同じ花火が続くとすでに拷問です。

僕たちのドラゴン大会(すでに花火大会ではない)会場のはるか向こう側で、星の観測をする美奈子さんと、そしてそれにつきそうグレート井上くんの姿がありました。
まぁ。とりあえず向こうがうまくいってればいいかぁ。

結局、後から来た者を含めて、姫沼には14名のメンバーが集まりました。
口実は「花火大会をやるから来い」です。
もちろん「駐在さんの奥さんの妹がいるから来い」と言えば、まずまちがいなく全員が集まったのでしょうが、そうするとグレート井上くんを優先する、などということはまったくもって不可能になってしまうので「女性」はなるべく伏せておりました。

むろん、到着したメンバーは、美奈子さんにビックリ!
だって、あの憧れの奥さんが、若くて独身になっているわけなのですから、それはたまりません。
それでも西条くんと孝昭くんさえ制止できれば、他の面々が暴走するようなことはないので、この人数は悪くありませんでした。

しかし。この花火大会はもっとビックリでした。
だって、始めてからずーーーーーーーーーーっと、ドラゴンだけ

みなさんはご経験ありますでしょうか?ずっと同じ花火が続く苦痛。
たまに混じる線香花火が、まるで宝石のように美しく見えました。

いいかげんドラゴンに飽きた僕たちは、ひそひそとグレート井上くんのことを話していました。

「しかし驚きだな。あの井上がねぇ。奥さんにはさほど興味なさそうだったのにね」。
まぁ「奥さん」に興味があるっていうこいつらも困りものではあるのですが・・。

「いや。確かによく見ると違うんだよね。なんか奥さんより活発さがあるっていうかさ」。
「ふうん。そこにまいっちゃったのかな」。
「どうやら。ほとんど一目惚れだったんだよ」。
「それでも俺らより2つも上だろ?」
「女子大生だからね」。
「井上ってサ。妹の夕子ちゃんがめちゃくちゃカワイイだろ?年下はダメなんだよな。きっと」。
孝昭くんにしては、たいへん核心をついた分析でした。

「そりゃさすがの井上君でも実らんだろう?」

そんなこと、グレート井上くんも百も承知に違いありませんでした。
でも、今までもメンバーの「恋」にはいつもみんなが協力しました。そこには「たいていフラれる」という安堵感があったからなのですが。

「先輩!」

この花火を無視したひそひそ話に、ジェミーが激怒。

「先輩、僕にばっかりやらせて、花火見てないでしょ!」
「え?んー。大丈夫。もう暗記したから。ドラゴン」。

「よーし。先輩がたがそういうつもりなら・・・」

そう言うなりジェミーは、10本ほどのドラゴンにいっきに火をつけると、それをこちらに投げつけ始めたのです!

「ば、ばか〜〜〜!な、なにする! う、うわっっち、あちー!」

危ねーの危なくないの!

「うわぁ!あち!この馬鹿!あちち」

もちろん、西条くんや孝昭くんがやられっぱなし、ということはなく、そのドラゴンをひろってジェミーに投げ返します。

が、ジェミーは、次から次にドラゴンに火をつけ、あたりかまわず投げつけます。
阿鼻叫喚。飛び交う火の粉。
ちょうど雪合戦をドラゴンでやっているようなものです。危ないとかそういうレベルではありません。
まー熱いわ熱いわ。

皮肉なことに、これが本日、一番美しい花火でした。

この騒ぎを見ていた美奈子さんは、おなかをかかえて笑っていました。
その横で幸せそうなグレート井上くん。

でも楽しい時間は、花火と同じように一瞬で過ぎて行きます。

「遅くなる前に帰りましょうか?」

「そうですね」。

「今夜はほんっと楽しかった!ありがとう、井上くん。みんな」。

時計は9時半をまわっていました。
僕たちが帰ろうとした際、噂通りバイクに乗った若者が数名現れましたが、これも予想通り、西条くんと孝昭くんがあっけなく追っ払いました。

空に満点の星。

最後に美奈子さんが言いました。

「そうそう。今日はウルトラマン一家、マクドナルドでハンバーガー食べてたわ。8mくらいあったかしら」。

僕たちは笑いました。が、当時の田舎者はマクドナルドなど、まったく知らないのでした(悲)。

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    5章-第9話へつづく

テーマ:笑える小説 - ジャンル:小説・文学

コメント
今夜は、ほのぼの

いやー、今夜の星はとてもきれいでした。
井上君の恋は、流れ星に願いを託したのか
それとも流れ星のごとく、星屑になったのか
とても気がかりです。
2006/08/13(日) 08:35:23 | URL | awaji_aic #-[ 編集]

>「はい!奇麗でしたね!では次はなんだと思いますか〜?みなさん!」
>「・・・ドラゴン・・・・」。

爆笑!

2006/08/13(日) 10:06:38 | URL | Blacky★ #-[ 編集]
Awajiさん、こんにちは!

えっとですねー。ほのぼのしていると思うのはグレート井上くんのとこだけであって、実際はみんな火傷をおいましたので(馬鹿ですよねぇ)軽傷者11名を数える生き地獄だったのですよ。

それにしてもドラゴン。投げても消えないってすごかったですね。

あと、当時のドラゴンは今よりずっと長くついていました。
おかげさまで、私も火傷おいました。足に。
2006/08/13(日) 12:58:05 | URL | くろわっ #NB/JWtcg[ 編集]

Blackyさん、こんばんは。

いやぁ。帰省と停電で返事が遅れてしまいましたぁ。
もうすわけねぇっす。

でもBlackyさんの感想部分は「爆笑」だけ。

えっと。なんて返せばいいんでしょ?
2006/08/14(月) 21:15:30 | URL | くろわっ #NB/JWtcg[ 編集]
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