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「み、ん、な・・・。来てくれたんだな・・・」。
井上くんが、うつぶせに倒れたまま顔を向けました。
その顔には、いくつものアザがあり、事態のすさまじさを物語っていました。
僕は、美奈子さんが無事だったのか、言い出すことができませんでした。
「み、ん、な・・・。来てくれたんだな・・・」。
井上くんが、うつぶせに倒れたまま顔を向けました。
その顔には、いくつものアザがあり、事態のすさまじさを物語っていました。
僕は、美奈子さんが無事だったのか、言い出すことができませんでした。
「孝昭・・・・・」。
「ん・・・美奈子さんは大丈夫だったよ・・。井上・・・がんばったんだ。褒めろよ。お前ら」。
「ああ。ああ」。
仲間に抱き起こされた井上くんは、やっとしゃべるようにして
「いや・・・孝昭が来てくれて・・・助かったよ・・・」。
「んー。さすがに・・・一度に6人はきっついわ」。
腹部をおさえる孝昭くん。
と、思ったら、お腹からなにかをはずしてずるずると取り出しました。
それは
「あ?これ?じいちゃんのコルセット。まぁ、頭はメットあるからな。後は腹守ればダメージはないんだ」。
さすがケンカ慣れしているやつは違います。
「でも夏にこいつはムレるわ。今頃じいちゃん、海老になっちゃってるな・・」。
とりあえず一安心です。
「あの光は?」
この疑問に孝昭くん
「それがさ。こないだの残りがポケットに入ってたんだよ。ドラゴン合戦の・・・」。
「お前らの声が聴こえたんで、火をつけたんだ。とたんにあいつら逃げやがって」。
「そうだったのか・・・」。
「ジェミーのドラゴン好きが、こんなとこで役にたつとはな・・・はは・・・」。
「ははは」。
僕たちは、その時、初めて笑いました。
「みんな。ごめんなさい・・・・」。
美奈子さんが、涙混じりの声で謝りました。
「美奈子さんが謝ることじゃないですよ。元々姫沼紹介したの僕たちだし・・・。それより大丈夫でしたか?」
美奈子さんは、コクコクとうなづくだけでした。
やがて僕たちの仲間も集まり、奥さんも到着しました。
あのおだやかな人も、さすがに慌てていて
「美奈子。あんた、だいじょぶ!?」
「うん・・・この子たちが守ってくれた・・」。
「君たち、ありがと・・・。なんて言っていいか・・」。
奥さんも涙混じりでした。
お礼は言われたものの、僕たちのほとんどは後から来ただけですから、暗がりで並んだ2人があまりに似ている事にすっかり気をとられているのでした。
「しかし。なぜあいつらのバイクはこっちにあったんだ?」
「さぁ・・・計画的だった、ってとこだろ」。
今までずっとだまっていた西条くんが
「孝昭。あいつ、工業の茶木だな?」
「ああ・・・。間違いない・・・」。
「そうか。わかった」。
と言うなり、西条くんはその場を立ち去りました。
茶木は、となりの市の工業高校に通う名うての不良で、あまりに停学が多いため1年留年しているいわゆる「札付き」でした。
「西条!早まるな!」
しかしまた、誰が止めても無駄なやつであることも、みんなわかっていました。
孝昭くんが言いました。
「大丈夫だよ。西条も勝ち目のない喧嘩はしないさ。あいつには俺たちとは別な仲間がいるからな。いずれ茶木とは決着つけなくっちゃいけなかったんだ。やりたいようにやらせろよ」。
確かにその通りでした。西条くんは、なにも僕たちばかりとつきあっていたわけではなく、まったく別のグループともつきあいがありました。
僕は、いつもいっしょの西条くんが、ちょっと遠く感じて、寂しかったのを覚えています。
やがて遠くにパトカーの赤色灯が見え、僕たちは、バイクのライトで知らせました。
パトカーには、もうひとりの警察官とジェミーが同乗していました。
事態を確認した駐在さんは、さすがに青ざめていました。なにしろ、お嫁さんの実家からお預かりした義妹さんです。
それが自分の管轄下で事件に巻き込まれるなど、どういう気持ちだったでしょう。
「美奈子さん!無事か?」
うなづく美奈子さんをしっかり抱きとめる駐在さん。
ところが!
これに僕たち全員が猛反発!
なにしろ全員不良と一戦交える覚悟で、勇気をふるいたたせて来ましたが、拳をおろす先がありません。
僕たちは普段よりずっとずっと獰猛になっておりました。
「くぉら!おまわりぃ!お前、奥さんがいるだろうが!」
「そうだそうだ。俺らは奥さんいねーんだぞっ!ボケェ!」
「なにどさくさで美人姉妹両方手に入れてんだよっ!」
「うらやましいじゃねーか!こんちくしょう!」
「この3Pおやじがぁ!」
まぁ。高校生のくせに、警察官を蹴るわ殴るわ。
同乗されてきたおまわりさんもあっけにとられておりました。
「やっ、やかましい!」と、ふりはらうように駐在さん。
「ウン。でもあなたやりすぎだわ」。
と、奥さん。
「い、いや・・・お、俺は・・・」
これにはさすがにしゅんとする駐在さん。
が、このとき、美奈子さんも含め、はじめて全員に笑顔がもどりました。
みんな泣きそうなほど緊張していたのです。
僕たちは、今までの不安をごまかすように、いつまでも笑い続けました。
「井上、すまなかったな。ありがとう」。
ようやくつかまり歩きする井上くんに、駐在さんは敬礼しました。
「はは・・・。まさか駐在さんに・・お礼言われるとは・・・。僕たちもヤキがまわったなぁ・・・」。
グレート井上くん。せいいっぱいの強がりでした。
「そう言えばさ。井上・・・」。
孝昭くんがぼそりと言い出しました。
「ん?」
「俺・・・。今回偉いだろ?」
「ああ・・・お前は、恩人だよ・・・」。
「それでな・・・・」。
「ああ」。
「その恩人からたっての願いがあるのだが。きくよな?」
「・・・ああ。なんでも言ってくれ」。
「夕子ちゃんのクマ、俺にくれない?」
「・・・ダメに決まってるだろっ」。
どんな事態であっても、妹のことにはシビアなグレート井上くんでした。
「え!お前、なんでも聞くって言っただろ!?」
「だから、ちゃんと聞いたよ。お前がクマをほしいってこと」。
「聞くだけかよっ!」


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5章-第13話へつづく
「ん・・・美奈子さんは大丈夫だったよ・・。井上・・・がんばったんだ。褒めろよ。お前ら」。
「ああ。ああ」。
仲間に抱き起こされた井上くんは、やっとしゃべるようにして
「いや・・・孝昭が来てくれて・・・助かったよ・・・」。
「んー。さすがに・・・一度に6人はきっついわ」。
腹部をおさえる孝昭くん。
と、思ったら、お腹からなにかをはずしてずるずると取り出しました。
それは
「あ?これ?じいちゃんのコルセット。まぁ、頭はメットあるからな。後は腹守ればダメージはないんだ」。
さすがケンカ慣れしているやつは違います。
「でも夏にこいつはムレるわ。今頃じいちゃん、海老になっちゃってるな・・」。
とりあえず一安心です。
「あの光は?」
この疑問に孝昭くん
「それがさ。こないだの残りがポケットに入ってたんだよ。ドラゴン合戦の・・・」。
「お前らの声が聴こえたんで、火をつけたんだ。とたんにあいつら逃げやがって」。
「そうだったのか・・・」。
「ジェミーのドラゴン好きが、こんなとこで役にたつとはな・・・はは・・・」。
「ははは」。
僕たちは、その時、初めて笑いました。
「みんな。ごめんなさい・・・・」。
美奈子さんが、涙混じりの声で謝りました。
「美奈子さんが謝ることじゃないですよ。元々姫沼紹介したの僕たちだし・・・。それより大丈夫でしたか?」
美奈子さんは、コクコクとうなづくだけでした。
やがて僕たちの仲間も集まり、奥さんも到着しました。
あのおだやかな人も、さすがに慌てていて
「美奈子。あんた、だいじょぶ!?」
「うん・・・この子たちが守ってくれた・・」。
「君たち、ありがと・・・。なんて言っていいか・・」。
奥さんも涙混じりでした。
お礼は言われたものの、僕たちのほとんどは後から来ただけですから、暗がりで並んだ2人があまりに似ている事にすっかり気をとられているのでした。
「しかし。なぜあいつらのバイクはこっちにあったんだ?」
「さぁ・・・計画的だった、ってとこだろ」。
今までずっとだまっていた西条くんが
「孝昭。あいつ、工業の茶木だな?」
「ああ・・・。間違いない・・・」。
「そうか。わかった」。
と言うなり、西条くんはその場を立ち去りました。
茶木は、となりの市の工業高校に通う名うての不良で、あまりに停学が多いため1年留年しているいわゆる「札付き」でした。
「西条!早まるな!」
しかしまた、誰が止めても無駄なやつであることも、みんなわかっていました。
孝昭くんが言いました。
「大丈夫だよ。西条も勝ち目のない喧嘩はしないさ。あいつには俺たちとは別な仲間がいるからな。いずれ茶木とは決着つけなくっちゃいけなかったんだ。やりたいようにやらせろよ」。
確かにその通りでした。西条くんは、なにも僕たちばかりとつきあっていたわけではなく、まったく別のグループともつきあいがありました。
僕は、いつもいっしょの西条くんが、ちょっと遠く感じて、寂しかったのを覚えています。
やがて遠くにパトカーの赤色灯が見え、僕たちは、バイクのライトで知らせました。
パトカーには、もうひとりの警察官とジェミーが同乗していました。
事態を確認した駐在さんは、さすがに青ざめていました。なにしろ、お嫁さんの実家からお預かりした義妹さんです。
それが自分の管轄下で事件に巻き込まれるなど、どういう気持ちだったでしょう。
「美奈子さん!無事か?」
うなづく美奈子さんをしっかり抱きとめる駐在さん。
ところが!
これに僕たち全員が猛反発!
なにしろ全員不良と一戦交える覚悟で、勇気をふるいたたせて来ましたが、拳をおろす先がありません。
僕たちは普段よりずっとずっと獰猛になっておりました。
「くぉら!おまわりぃ!お前、奥さんがいるだろうが!」
「そうだそうだ。俺らは奥さんいねーんだぞっ!ボケェ!」
「なにどさくさで美人姉妹両方手に入れてんだよっ!」
「うらやましいじゃねーか!こんちくしょう!」
「この3Pおやじがぁ!」
まぁ。高校生のくせに、警察官を蹴るわ殴るわ。
同乗されてきたおまわりさんもあっけにとられておりました。
「やっ、やかましい!」と、ふりはらうように駐在さん。
「ウン。でもあなたやりすぎだわ」。
と、奥さん。
「い、いや・・・お、俺は・・・」
これにはさすがにしゅんとする駐在さん。
が、このとき、美奈子さんも含め、はじめて全員に笑顔がもどりました。
みんな泣きそうなほど緊張していたのです。
僕たちは、今までの不安をごまかすように、いつまでも笑い続けました。
「井上、すまなかったな。ありがとう」。
ようやくつかまり歩きする井上くんに、駐在さんは敬礼しました。
「はは・・・。まさか駐在さんに・・お礼言われるとは・・・。僕たちもヤキがまわったなぁ・・・」。
グレート井上くん。せいいっぱいの強がりでした。
「そう言えばさ。井上・・・」。
孝昭くんがぼそりと言い出しました。
「ん?」
「俺・・・。今回偉いだろ?」
「ああ・・・お前は、恩人だよ・・・」。
「それでな・・・・」。
「ああ」。
「その恩人からたっての願いがあるのだが。きくよな?」
「・・・ああ。なんでも言ってくれ」。
「夕子ちゃんのクマ、俺にくれない?」
「・・・ダメに決まってるだろっ」。
どんな事態であっても、妹のことにはシビアなグレート井上くんでした。
「え!お前、なんでも聞くって言っただろ!?」
「だから、ちゃんと聞いたよ。お前がクマをほしいってこと」。
「聞くだけかよっ!」


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5章-第13話へつづく







いやー。圧巻ですねー。
>ドラゴンの火だ・・・・
は、ゾクゾクしました。感動ありがとう!
ふう太さん。いらっしゃいませ。
ご感想ありがとうございます。
コメントのほうがずっと感動的でございます。
もう、ありがたくてありがたくて。
書いた甲斐がありました。
ぼくちゅうの中で西条君が一人で戦いに行くこの話が私のお気に入りの一つです。
なんか男気を感じますねぇ(^_^;)
くろわっさんとくろわっさんのダチって、本モノの絆で結ばれてるんですね。こんな友達、私もほしいです。
あ〜。良かった!!美奈子さん無事で。ホッとしました。井上くんは身体張ったけど、皆も怖い怪我とかしなくて良かった!
電気屋さんへの復讐のエピソードで、皆つるんでるけど、皆お互いに信頼感を持ってない。とありましたが、なんだかんだ言って、根っこでは繋がり合ってるじゃん!て感じました。
皆への連絡先とか、姫沼へ応援を要請する様子とか、「絶対、助けに行く!」て信じてなきゃ、出来ませんよね!
孝明君は、いつでもどこでもどんなときでも、夕子ちゃんのくまが欲しいのね。
おねぇさんがいるから、年下の女の子にあこがれるのかしら?
夕子ちゃんを嫁にくれとかではなく、クマをくれというあたりが良いですね。分を弁えてるといいますか。
ただ、冗談でも警官殴る蹴るしちゃいかんでしょ(笑)
そして、「聞くだけかよっ!」
シリアスな展開の中に笑いをちりばめる所がさすが。憎い演出です。それにしても、前章までとのこの落差、怖すぎる。