ぼくたちと駐在さんの700日戦争

 

  
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第16話 サイジョーの約束(4)

絵日記

西条くんが全メンバーに集合をかけたのは翌日のことでした。
この日は、メンバーはおろか、つい昨日来たばかりの夕子ちゃんまで呼び出していたので、僕たちはなにごとか、と構えながらの集合でした。

さすがに10名以上の人数。病室やらロビーやらに集めるわけにもいかず、西条くんは病室を出て中庭の大きな木の下に僕たちを集めました。

「よーし!みんな集まったな! 悪いなー、お足下の悪い中お集りいただきまして」

「いや。西条。ピーカンだから。日本語の使い方おかしいぞ」

「慣れねーこと言うなよ。バカ」

人望のないヤツって哀しい。

「それでな? 本日お前らにお集りいただきましたのはほかでもありません」

「だから敬語無理して使うな。お前」

「今日はですねー。お前らに、水着の美女をたっぷり楽しませてやろう、って企画なんですよ。悪くないだろ?」

「はぁ?」
と、僕たち。

「西条、それって夕子のことじゃぁないだろうなぁ?」
グレート井上くん。不安でしかたありません。なにしろ相手が西条くん。
夕子ちゃんは、病院のロビーにいたので、ここにはいません。

「いやいや、違います。夕子ちゃんAカップだし」

「ほっとけ!」

「俺はAカップでもいいけどな」と、孝昭くん。
「おれもー」「ぼくもー」「おいらもー」「わがはいもー」

「夕子・・・つれて来るんじゃなかった・・・」
反省するグレート井上くん。
僕に言わせれば、あまりに見えていた成り行きだと思うのですが。

「そうじゃなく。もう若いピチピチした女の子がいっぱいなんだから」

なにかある・・・。すでに疑いでいっぱいの僕たち。

「はい!お前ら、海パンは持って来ましたね?」

「ああ」

「では本日の企画を発表しまぁーす。お前らわぁ。これからこの子をつれて市民プールへ行っていただきまーす」
となりに昨日の「恋人」ミカちゃん(6歳実名)を呼びました。

「な、なんだって!?」

ミカちゃんは、さすがに大人数を目の前に、少しおどおどしていました。
無理もありません。さして人相もよくない男20人。

「え?女の子ひとりつれていくのに、わざわざ20人も集めたのか?お前」

「いや。そうじゃないんだけどさ。とりあえずは午前中、この子をプールにつれてってくれ」

「つまり、午前中ミカちゃんと遊べと?」

「そーいうこと。こいつ、毎日病院なんだ。夏休みの思い出、いっこもないんだよ」

「このままだと絵日記。書けないんだ・・・」

言葉をなくす僕たち。

「わかった。それで夕子も呼んだのか?」グレート井上くん。

「うん。着替えとかもあるからな。ワルサするだろ?お前らだけだと」
てめーといっしょにするなっ!

ミカちゃん。
「えっと・・・・。サイジョーのケライのみなさん、ヨロシクオネガイシマス」

「けらい・・・・」
「西条の・・・・・」
「けらい・・・」

      
さすがに6歳児に反論こそしませんが、みんな唖然としてしまいました。どういう紹介をしているのでしょう?西条くん。
「・・・こちらこそ、よろしくお願いしま~す・・・」
あまりのショックにボソボソと答える僕たち。

「けらい・・・・」

西条くんは僕に100円玉を1コよこすと
「お前、この金で好きなだけ飲み食いしていいからな。そのかわりミカにイチゴミルクのかき氷喰わせてやってくれよ」

うーん。好きなだけと言われても・・・
イチゴミルク150円はするぞ・・・・・。すでに足りない・・・。

「それからな・・・・」
西条くんは、大きな包みを4つ出すと

「これ。母ちゃんにつくってもらったんだ。お前ら全員分の昼飯」

「え~!」

これには驚きました。だって喰い盛り20人です。ほとんど炊き出し。僕たちは、西条くんが思ったよりもずっと本気であることを悟りました。

「ミカ。もしなにか困ったときは、このケライ1号に相談しろよ」
僕をつかまえて紹介しましたが、
ミカちゃん。
「ヨロシクおねがいします!ケライ1号」

敬称さえついていません。ケライ1号・・・。

「よろしくおねがいします・・・・なんでも相談してネ。この・・・・・ケライ・・1号に・・・」

このなんとも言えない屈辱感。
そりゃ20人もの名前は覚えられないでしょうが・・・。ケライ1号。
おそらく駐在さんの『自転車1号』にヒントを得たのでしょう。

というわけで、僕たちはむさ苦しい16、7の男20人もつれだって、ミカちゃんを市民プールへつれて行くことに。

「しょうがねぇな・・・。西条のためにひと肌ぬぐか・・・」
と、孝昭くん。しょうがねぇ、と言う割合に足がスキップスキップしてますけど。

「いっしょにいこ!」
やがて合流した夕子ちゃんが、ミカちゃんの手をひいてくれました。

市民プールは、大人プールと、子供用プールに分かれています。
目的はミカちゃんと遊ぶことですから、当然、全員が子供プールに入ろうとしました。

が、
ピピピピピー

当然監視員からスピーカーで注意される僕たち。
「はい。高校生は小プールに入んないでください」

仕方がないので、浮き輪のあるミカちゃんを大人プールにつれてきて遊ぶ僕たち。
みんなぶつぶつ言っていた割合には、この時はホント盛り上がりました。
ミカちゃんは、この日までカナヅチでしたが、水泳部である千葉くんが、あっという間に泳げるようにしました。初めて泳げたことに大よろこびのミカちゃん。
グレート井上くんは、次から次に子供の喜ぶ遊びを思いつき、宝探しやら潜水競争といった遊びに、僕たち自身、夢中になりました。
僕は、と言えば、みんなとプールサイドで鬼ごっこをした際、排水溝に足をつまづかせ、おもいっきり転びまして、腹から顔面しこたまうちました。
でも、これにもミカちゃんは大笑い。

まわりからは実に奇妙な集団でしたが、僕たちはカキ氷を食べたり、公園をたずねて虫をとったり、とにかく夏を満喫しました。

やがて午後2時を過ぎたあたりで、遊び疲れたミカちゃんは、村山くんの背中で眠ってしまいました。

夕子ちゃん。
「ミカちゃん、きっといい思い出できたよね」
「そうだね・・・。楽しかったからなぁ」
「きっと絵日記、いっぱいだよね!」
実際、僕たちもずいぶんと楽しみました。

病院にもどった僕たちを迎えてくれたのは、ミカちゃんのお母さんでした。
お母さんは、何度も何度も僕たちにお礼を言うと、眠ったままのミカちゃんを受取り、また病室へともどられました。



後日談ですが、ミカちゃんはこの日の絵日記を見せてくれました。
いろんなことをやった1日。
絵日記にはプールサイドが描かれておりまして

”きょう、けらい1ごうがぷーるでころんだ” 

一番の思い出ってそれ!?



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コメント

西条くんは、ほんとは優しい人なのですね~笑
ステキな夏のお話です。
2006/08/23(水) 11:14:34 | URL | sainei #-[ 編集]

saineiさん、こんにちは!
毎日お読みいただきましてありがとうございます。
特に、昨日の『バス停』をお読みいただいたのには、感無量でございました。

西条くん。やさしかったですね。おそらく僕たちの中では一番に。
その「やさしさ」のせいで、いっぱい失敗をする人でした。

明日。その典型的な話に入ります。
2006/08/23(水) 15:38:00 | URL | くろわっ #NB/JWtcg[ 編集]

あったかい
いい話ですね。
2006/11/04(土) 01:05:45 | URL | kek #-[ 編集]

kekさん、はじめまして!

この話、長いですが、続けてお読みください。

5章、最終話でお待ちしております。
2006/11/04(土) 01:55:14 | URL | くろわっ #NB/JWtcg[ 編集]
初コメです
不覚にも(?)涙が出ました・・・。
心温まるお話ですね。
楽しませていただいてます。
2007/03/29(木) 23:46:46 | URL | sah #-[ 編集]

>Sahさん

ようこそいらっしゃいました。
このまま続けてどうぞ!
2007/03/30(金) 01:49:47 | URL | くろわっ #NB/JWtcg[ 編集]

>西条くんは、大きな包みを4つ出すと
「これ。母ちゃんにつくってもらったんだ。お前ら全員分の昼飯」。

復習中です。
なにげないシーンですけど、ここでものすごく泣けてきました。

西条君のお母さん、ごはんつくりながら、すごくうれしかったんじゃないかなぁ、って。

今はもう、西条君がほんとにやさしい人って、みんな知ってるよ。
2007/09/09(日) 00:37:09 | URL | りんごあめ #PQbnSbZ2[ 編集]
西条くんって、いい奴なんだなぁ~。
ミカちゃん、ケライ1号が転んで思い出になっただね~。
ママチャリくんもたまには役に立つんだねぇ~。
2008/05/02(金) 01:17:50 | URL | まっつん #-[ 編集]

西条君のお母さん ものすごく大変でしたでしょう。
お仕事もされてるのに・・・
でも、プールで食べるおにぎりって ものすごーくおいしいですよね。
おにぎりが、食べたくなってしまいました。
2008/06/07(土) 12:43:42 | URL | アキプン #NRBrZvOo[ 編集]

今日中に全部読める自信ないけど
早く映画の花火のとこ
見たいっ!それにしても
おもしろいですね~っ!
読書感想文これにしたら
よかったです 笑笑
2008/09/01(月) 14:44:41 | URL | こはる #-[ 編集]

太字の文斜体の文下線の文打ち消しの文
2010/09/28(火) 16:16:05 | URL | 名もない読者 #-[ 編集]

私も西条くんのおかあさんのように 大きな心で我が子を見守りたい 西条くんは、このおかあさんだからこんなにヤサシイヤツになったんだよね
2011/05/11(水) 15:47:54 | URL | こまま #-[ 編集]

打ち消しの文cdfssdsvds
2011/08/29(月) 21:08:46 | URL | 名もない読者 #-[ 編集]
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