ぼくたちと駐在さんの700日戦争

 

  
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第17話 サイジョーの約束(5)


プールからもどった僕たちは再び病院の中庭に集合しました。
夕子ちゃんは先に帰しましたが、主要メンバーである兄のグレート井上くんは残りました。

思えば西条くんが夕子ちゃんを誘ったのは、たぶんみんなの不満をやわらげる策だったのでしょう。
その効果は絶大と言わざるをえません。
夕子ちゃんがいなくなったとたん、案の定、孝昭くんを始めとする夕子ちゃんファンが騒ぎ出しました。

「お、おれ夕子ちゃんの隣で水のんじゃったぜ!」
「へへ。俺なんか後ろの水のんだぜ!1リッターくらい飲んだな」
「な、なんだと!俺なんか2リッター飲んだぞ!」

まったく螺旋ループな言い合いが好きな連中です。プールで水を飲んでしまうのは「恥」というのが一般論ですが、彼らはまったく逆のようです。
僕ですか?僕も飲みましたが、わざとじゃありません。水泳が未熟なものですから。まぁ、偶然にして夕子ちゃんの側でしたが。そうですねぇ。3リッターくらい飲みましたかねぇ。

「ふふふ。お前ら素人だな。プールの水なんかで歓びやがって。これを見ろ!」
それはかき氷のスプーン。素人だなって、なにの玄人なのでしょうか?こいつ。

「そ、それは!」
「そうさ!夕子ちゃんがくわえたスプーンだ!」
「く、くそぉぉ!その手があったか・・・」

が。これはグレート井上くんがあえなく没収。
当然です。
実の兄のいる前でする自慢話ではありません。


西条くんが僕たちを集合させた理由は、午後にあきらかにされました。
僕たちは、すっかりミカちゃんに情がうつっておりましたので、悪く言えば、西条くんの策にまんまとのせられた、とも言えます。

「お前ら。今日はすまなかったなぁ。ミカの母さんもすっげー喜んでたぞ」

「いやいや。けっこう楽しかったよ。夕子ちゃんのプールの水飲めたし」
夕子ちゃんのプール・・・か?

西条くん。
「やっぱ持つべきものは、いい家来だよなぁー」

「あ!そうだ!いつ俺らがお前の家来になった!?こんちくしょー!」
「そうだそうだ。俺なんかずっとケライ9号とか呼ばれてたんだぞ!6歳児に!」
「まだましじゃん。俺なんか17号だぞ!バカ野郎がぁ」

みんなは思い出したように、ケガ人である西条くんをぼこぼこに蹴りつけました。

「な、なんだよ、ともだちと家来って同意語じゃん。家に来るんだからさ」
「ん?そうかなぁ・・」
「家に来る・・・ねぇ」

「ンなわけねーだろーがぁ!ボケェ!」
「うまいこと言ったつもりか?ぁあ?このスットンキョウがぁ!」


再びけが人をぼこぼこに蹴り始める「家来」たち。

僕たちがひととおりウップンをはらすと西条くん。

「いてて・・・そ、それでな。今日のメインな相談なんだけどな・・・」
ポツポツと、その「作戦」を話し始めました。


「は、花火を~〜〜?」

「ぬ、盗めだぁ~〜〜?」


僕たちはいっせいに声を上げました。

「西条!お前、正気か?」

「ああ」

まぁ、もっともこいつに限って言えば、正気なときとそうでないときとの区別はつきにくいのですが。

「は、花火って・・・あのドカンっていうでかいやつ?店で売ってるやつじゃなくて?」
「ああ。店で売ってるヤツは買えるだろ?」

「ウソだろ?」

「たのむよ。お前らしか頼める相手がいないんだ」

「じょ、じょうだんじゃねぇぞ、俺ら犯罪だけはまだやってないんだぞ!」
と、孝昭くん。

が、みんなが
「うん。お前の暴力事件を除いてな」
「うん。お前の軽犯罪法違反を除いてな」
「うん。それから道路交通法違反を除いてな」
「うん。それから公務執行妨害を除いてな」
「うん。それから迷惑条例違反を除いてな」
「うん。それからお前のわいせつ物陳列・・・」
「うん。それから郵便物・・・」

「も、もういいから・・・俺がまちがってました・・・はい。やってます。犯罪・・。」

「でも、西条。窃盗はヤバイよ。それはできないぜ。さすがに」

「うん・・・よくわかってるさ・・・わかってるんだけどな」


「ミカにはさ。ひとつ下の弟がいるんだ。リョウ君って言うんだけどさ。リョウが入院してるからあいつも病院にいるわけなんだが・・」

西条くんの説明をかいつまみますと

ミカちゃんの弟「リョウくん」は、昨年のちょうど今頃、突如発病して入院されたのだそうです。
なんの病気かは(西条くんが暗記できないので)わかりませんが、その後も入退院を繰り返し、現在はすでに動かせる状態にありません。
ここに入院される直前、リョウ君、つまりミカちゃんの一家は、Y市で開催される花火大会に行く事になっていたのだそうで、直前の入院でそれがかなわなくなってしまいました。
ミカちゃんは、幼いながらこれに胸をいためていて「リョウくんに一度おっきい花火を見せたい」と、サイジョーに頼んだ、というのです。

「うーん。気持ちはわかるけどなぁ・・・」
「だからってなぁ・・・」
「来年もあるだろ?Y市の花火大会。来年見せればいいじゃん」

「それがな・・。来年は・・ないんだよ・・・」

「え?あるだろ?毎年恒例だぜ?」

「ああ。花火大会は来年もあるし、俺らにも来年はある。けど、あの姉弟には・・・来年・・ないんだ」

僕たちは意味を察しました。

「来年どころか・・・来月でも怪しいらしいんだよな・・・」

「ほんとか?」

「担当の看護婦さんが言ってた。間違いない・・」

「・・・・・・・・・」

「本人を一時運び出すってのは?」

首を振る西条くん。

「・・・・・・・・・・」

「だからさぁ。だから。1発でいいんだ。俺約束したんだよ、ミカと・・・リョウに。でっかい花火、見せてやるって・・・」

西条くんの町も、僕たちの町も、大きな花火大会はありません。
当時、大きな花火大会のある都市は本当に限られていたのです。

「あいつさぁ。俺をスーパーマンかなんかかと思ってるフシあるんだよなぁ・・・。俺・・・・・ことわれなくって・・さぁ」
声のとぎれる西条くん。

「それにしたって盗むって・・・」

「買えないのか?花火って」

「俺。花火大会でバイトしたことあるんだよ。駐車場整理だったんだけどな。でも少し花火屋さんの準備も手伝わせられたから、ちょっとはわかるんだ」

西条くんの話によると、玉は意外に安く2000円もしないで買える(当時)のですが、打ち上げ火薬がないと当然上げることはできず、危険物であるため、単体売りはしないのだそうです。わかりやすく言えば職人ごと買わなくてはならないものなのです。

「じゃぁ、職人さんごと頼めば?みんなで出し合えば1発2発なんとかなるだろ?」

「あの人たちはな。夏の予定、めいっぱいなんだよ。一応問い合わせもしたんだぜ。俺」

「うーん。そもそも1、2発で、わざわざ来ないよな。普通」

「それにな。花火打ち上げるには、消防署と警察署の許可がいるんだ。とれると思うか?俺らで」

「井上のオヤジに頼めばなんとかなるんじゃないか?」

グレート井上くん。
「言ってみてもいいけど・・・・。でも、あまり期待しないでくれ。だいたい役所、休みじゃないか?」

「警察はやってるだろ?駐在に頼みこんでなんとかならないかな」

「でも職人がいなきゃもともこもない話だよなぁ・・・」

頭をかかえる僕たち。この相談は、本当に八方ふさがりの難問でした。

「俺だっていろいろ考えたし、いろいろあたったよ。でもな。結論は・・・」

結論は

「盗んで自分たちで打ち上げるしかない」

「・・・・」

「スターマインみたいな連発物にはな、不発のための予備玉がある。こいつを拝借するんだ」

「窃盗だぞ、いずれにしたって」

「大丈夫だ。昔から言うだろ?花火盗人は罪にならない、ってな」

そりゃ花盗人(はなぬすびと)だろ・・・。



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コメント

この辺からの物語について、
学校に提出する読書感想文を書かせてもらいます。

大丈夫ですよね?ネット小説でも、そもそも、書籍化しましたし。

よろしくお願いします。頑張りま~す。
2007/08/17(金) 14:42:47 | URL | shinichi@読み返し中 #yLw.vZHI[ 編集]

あ!!それいいねぇ~!!
やればよかってなぁぁ・・・。
2007/09/15(土) 20:23:20 | URL | スーさん #-[ 編集]

いいなぁ~~~。みんな。
僕の学校は読書感想文の課題図書を決めてるので、ぼくちゅうネタかけないんですよ。
2007/09/17(月) 03:11:29 | URL | イケソン #IpFcty3o[ 編集]

西条君の突飛なお願い・・・
不可能を可能にするママチャリ・・・
すごくいいコンビですね。
2008/06/07(土) 13:00:30 | URL | アキプン #NRBrZvOo[ 編集]

ぼくちゅうネタおれもそれにしよっ
2008/08/06(水) 13:52:10 | URL | イナ #-[ 編集]
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