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翌日はお盆。田舎では、これほど身動きのとりにくい日はありません。
しかし、僕たちにはこの日しか準備時間がありませんでした。
準備と言っても、ジェミーの女装用品だけですが・・・。
前回は、演劇部の「召使いの衣装」を調達したのでよかったのですが、今回はなんと「セーラー服」が必要でした。
そしてもうひとつがブラジャー。
前回のパンティの苦労がよみがえります。(4章『パンティを探せ』参照)
しかもブラジャー。びっくりするほどに高価!やっぱり価値の高いものは、高価なもので包まれているんですね。
したがって「購入」は、すでに僕たちの選択肢からは消えていました。
翌日はお盆。田舎では、これほど身動きのとりにくい日はありません。
しかし、僕たちにはこの日しか準備時間がありませんでした。
準備と言っても、ジェミーの女装用品だけですが・・・。
前回は、演劇部の「召使いの衣装」を調達したのでよかったのですが、今回はなんと「セーラー服」が必要でした。
そしてもうひとつがブラジャー。
前回のパンティの苦労がよみがえります。(4章『パンティを探せ』参照)
しかもブラジャー。びっくりするほどに高価!やっぱり価値の高いものは、高価なもので包まれているんですね。
したがって「購入」は、すでに僕たちの選択肢からは消えていました。
「花火の玉ってどれくらいの重さなのかな?」
「西条の話だと、1個1kg〜2kgくらいだって言ってた。意外に軽いよな」。
「まぁ。空飛ぶもんだからな。あんまり重いと飛ばないだろ?」
「オッパイとどっちが軽いのかなぁ・・・」。
「さぁ・・・計ったことないからな・・・」。
当然です。オッパイの重さを計った男子高生の話、聴いた事ありません。
「オッパイは空飛ばないだろ?」
「いや・・・。飛ばないだろって・・、お前、花火、もまないだろ?」
「ウーン。花火もオッパイももんだことない・・・」。
「もみたい・・・」。
馬鹿だろ?お前ら。
「でもな。ときどき女子が話しているのを盗み聞きすると、だな。肩こりするとこまで重いらしいんだ」
「ふんふん」。
「肩こりするってことは、だ。1kg、2kgの話じゃないと思うんだ」。
「うんうん。いい推理だ」。
なーにが「いい推理」なんだか。
おそらく、この広い日本で、オッパイの重さと花火の重さを真面目に検討しているのは、ここだけだったのではないでしょうか?
しかし、僕たちにはこの「オッパイと花火玉の重さ」の比較がとても大切でした。
なぜって、ブラジャーに入れる都合上、ブラジャーが花火の重さに耐えてくれなくては困るわけです。
しかし、自然、僕たちの会話は、オッパイへ、オッパイへと傾向していき、ついには、その形状あたりまで話がおよんでおりました。あー若いってつらい。
こうして会話の8割以上の時間をオッパイに費やしながら、2時間程の時間をかけ「ブラジャーは花火の重さに耐える」ことが決定。
「セーラー服は、孝昭、お前姉ちゃんの借りてこい。もう着ないのとかあるだろ?」
「え〜!また?まぁ。今日は本家行ってるからいいけどさ。ばれたら、またお前が欲しがったって言うからなっ!」
「え!」
「今度ばれたらタダじゃすみそうにないぞ」。
うーん。タダで済んだ時のほうがもっと問題が大きい気もするけど。
「問題はまたブラジャーか・・・・」
「見えないんだからさぁ。誰かの母ちゃんのでいいじゃん」。
「い・や・で・す」。
ジェミーです。
「んー。でも、俺も母ちゃんのブラとか盗みたくない」。
「俺も」。
「僕も」。
どうしてなんでしょうねぇ?不思議です。唯一(唯二?)もんだことのあるオッパイなのに。
河野くん。
「いっそ盗むか?もう、花火盗むんだから、ひとつもふたつもおんなじようなもんだ」。
お前、それすっかり犯罪者の心理だから。
「だいたい、下着泥棒は、他の泥棒とまたニュアンス違わないか?」
「うーん。確かに」。
「でも母ちゃんの盗むくらいなら、クラスの女子の家まわって盗むぜ。俺」
ひょっとして、こうして将来の下着泥棒が誕生しているのかも知れません。
「ん?クラスの女子?」
久保くんがなにか思いついたようです。
それが・・・
僕に向かって言いました。
「お前さぁ、和美から借りろよ。和美ならばっちりEカップだぜ」。
和美ちゃんは、となりのクラス(つまり久保くんのクラスなのですが)の女子で、僕とは中学がいっしょのボーイッシュな女の子。
「ば、ばか言え!」
「だってさ。和美、お前にホレてるだろ。お前困ってたじゃん。それで嫌われたら、それはそれでラッキーだろ?」
「で、できるかっ!」
確かに、和美ちゃんがずっと僕に好意をよせているのは、周知の沙汰でした。
悪い子ではないのですが、でも、僕には、当時好きな女の子がいたのです。
いえ。夕子ちゃんではありません。
しかし、対案を編み出せないまま、刻々と時間は過ぎ、結局僕は和美ちゃんに電話をしているのでした。
彼女はボーイッシュであるがゆえに、こうしたことを話しやすいことも確かだったのです。
せまい真夏の公衆電話。後ろに大量のギャラリーを背負ったままでのラブコールです。
「あ・・・あの・・・か、かずみ?」
「あ・・・・」。
和美ちゃんの驚きようはたいへんなものでした。
「な・・なにしてた?今」
「うん、おばあちゃんとお墓参りの準備。め、めずらしいね。どうしたの?」
「あ、あのさー。言いにくいんだけど・・・」
「なぁに?」
しかし、どうしても「ブラジャー」という単語が出て来ません。愛の告白でさえ、これほどむずかしいかどうか。
その間もギャラリーたちは、僕をこづいて催促します。
「貸して・・ほしいものがあるんだけどさ・・・」。
「え?なぁに?」
「そ、それが・・・ブラ・・・ブラ・・・」。
「ブラックジャックの12巻って買った?」
ちがうだろ!
「え?なぁに?それ」。
「ごめん。ちがうんだ。言うよ。君のさ・・・」
「うん」。
「君の・・・ブラ、ブラジャー、貸してくれない?使わなくなったやつでいいんだけど・・・」
「えっ・・・・・?」
和美ちゃんは無言になりました。そりゃ驚きます。
片思いであれなんであれ、好きな男子が「使い古しのブラジャー貸せ」ですから。こういうコクりをされた女子って他にいるんでしょうか?
僕は電話を切ってその場から逃げたい気持ちでいっぱいでした。
しばらく無言だった和美ちゃん。
「・・・いいよ」。
「え?」
「いいよ。必要なんでしょ?」
「え・・・う、うん」。
「持って行けばいいの?」
沈んでいる僕と対照的に、まわりではうれしさのあまりマイムマイムしている男4名。
実際僕は、自己嫌悪でつぶれそうでした。こんな気持ちは、それまでで初めてのことでした。
僕は和美ちゃんと、近くの堤防で待ち合わせしました。なにしろブラジャー。人目をはばかります。
やがて、和美ちゃんが自転車に乗ってやってきました。
恥ずかしそうに僕に紙袋を手渡す和美ちゃん。
「これ・・・。洗濯したばっかりだから」。
「・・・あ・・・ありがとう・・・」。
「へへ・・・ちょっと、柄選ぶのに、時間かかっちゃった」。
僕はズキっと胸が痛みました。
「ごめん・・・ヘンなこと頼んで・・・」。
「いいの!また、なにか悪戯に使うんでしょ」。
「え?い、いや・・・・。まぁ、そんなとこ・・・」。
長い付き合い。彼女は本当によく僕のことを知っていました。
「私ね・・。君のする悪戯も。けっこう好きなんだ・・・なんか、他の人と違うもの」。
「・・・・」。
「うれしかった。こんなことでも、私をたよってくれたこと!」。
「かずみ・・・・・・」。
僕はその時、和美ちゃんを抱きしめたい衝動にかられました。
なんと言うか、愛おしくて。
愛おしくて・・・でも。結局それは心の中だけでした。
やがて和美ちゃんは、照れ隠しするように、おもいっきり自転車をこいで走り去りました。
「かずみぃー!」
「なぁにー?」
「あ・・・・ありがとう」。
手をふる和美ちゃんを、夕陽が染めていました。
その時僕には、あのボーイッシュだとばかり思っていた和美ちゃんが、ちょっとだけ奇麗に見えました。


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5章-第23話へつづく
「西条の話だと、1個1kg〜2kgくらいだって言ってた。意外に軽いよな」。
「まぁ。空飛ぶもんだからな。あんまり重いと飛ばないだろ?」
「オッパイとどっちが軽いのかなぁ・・・」。
「さぁ・・・計ったことないからな・・・」。
当然です。オッパイの重さを計った男子高生の話、聴いた事ありません。
「オッパイは空飛ばないだろ?」
「いや・・・。飛ばないだろって・・、お前、花火、もまないだろ?」
「ウーン。花火もオッパイももんだことない・・・」。
「もみたい・・・」。
馬鹿だろ?お前ら。
「でもな。ときどき女子が話しているのを盗み聞きすると、だな。肩こりするとこまで重いらしいんだ」
「ふんふん」。
「肩こりするってことは、だ。1kg、2kgの話じゃないと思うんだ」。
「うんうん。いい推理だ」。
なーにが「いい推理」なんだか。
おそらく、この広い日本で、オッパイの重さと花火の重さを真面目に検討しているのは、ここだけだったのではないでしょうか?
しかし、僕たちにはこの「オッパイと花火玉の重さ」の比較がとても大切でした。
なぜって、ブラジャーに入れる都合上、ブラジャーが花火の重さに耐えてくれなくては困るわけです。
しかし、自然、僕たちの会話は、オッパイへ、オッパイへと傾向していき、ついには、その形状あたりまで話がおよんでおりました。あー若いってつらい。
こうして会話の8割以上の時間をオッパイに費やしながら、2時間程の時間をかけ「ブラジャーは花火の重さに耐える」ことが決定。
「セーラー服は、孝昭、お前姉ちゃんの借りてこい。もう着ないのとかあるだろ?」
「え〜!また?まぁ。今日は本家行ってるからいいけどさ。ばれたら、またお前が欲しがったって言うからなっ!」
「え!」
「今度ばれたらタダじゃすみそうにないぞ」。
うーん。タダで済んだ時のほうがもっと問題が大きい気もするけど。
「問題はまたブラジャーか・・・・」
「見えないんだからさぁ。誰かの母ちゃんのでいいじゃん」。
「い・や・で・す」。
ジェミーです。
「んー。でも、俺も母ちゃんのブラとか盗みたくない」。
「俺も」。
「僕も」。
どうしてなんでしょうねぇ?不思議です。唯一(唯二?)もんだことのあるオッパイなのに。
河野くん。
「いっそ盗むか?もう、花火盗むんだから、ひとつもふたつもおんなじようなもんだ」。
お前、それすっかり犯罪者の心理だから。
「だいたい、下着泥棒は、他の泥棒とまたニュアンス違わないか?」
「うーん。確かに」。
「でも母ちゃんの盗むくらいなら、クラスの女子の家まわって盗むぜ。俺」
ひょっとして、こうして将来の下着泥棒が誕生しているのかも知れません。
「ん?クラスの女子?」
久保くんがなにか思いついたようです。
それが・・・
僕に向かって言いました。
「お前さぁ、和美から借りろよ。和美ならばっちりEカップだぜ」。
和美ちゃんは、となりのクラス(つまり久保くんのクラスなのですが)の女子で、僕とは中学がいっしょのボーイッシュな女の子。
「ば、ばか言え!」
「だってさ。和美、お前にホレてるだろ。お前困ってたじゃん。それで嫌われたら、それはそれでラッキーだろ?」
「で、できるかっ!」
確かに、和美ちゃんがずっと僕に好意をよせているのは、周知の沙汰でした。
悪い子ではないのですが、でも、僕には、当時好きな女の子がいたのです。
いえ。夕子ちゃんではありません。
しかし、対案を編み出せないまま、刻々と時間は過ぎ、結局僕は和美ちゃんに電話をしているのでした。
彼女はボーイッシュであるがゆえに、こうしたことを話しやすいことも確かだったのです。
せまい真夏の公衆電話。後ろに大量のギャラリーを背負ったままでのラブコールです。
「あ・・・あの・・・か、かずみ?」
「あ・・・・」。
和美ちゃんの驚きようはたいへんなものでした。
「な・・なにしてた?今」
「うん、おばあちゃんとお墓参りの準備。め、めずらしいね。どうしたの?」
「あ、あのさー。言いにくいんだけど・・・」
「なぁに?」
しかし、どうしても「ブラジャー」という単語が出て来ません。愛の告白でさえ、これほどむずかしいかどうか。
その間もギャラリーたちは、僕をこづいて催促します。
「貸して・・ほしいものがあるんだけどさ・・・」。
「え?なぁに?」
「そ、それが・・・ブラ・・・ブラ・・・」。
「ブラックジャックの12巻って買った?」
ちがうだろ!
「え?なぁに?それ」。
「ごめん。ちがうんだ。言うよ。君のさ・・・」
「うん」。
「君の・・・ブラ、ブラジャー、貸してくれない?使わなくなったやつでいいんだけど・・・」
「えっ・・・・・?」
和美ちゃんは無言になりました。そりゃ驚きます。
片思いであれなんであれ、好きな男子が「使い古しのブラジャー貸せ」ですから。こういうコクりをされた女子って他にいるんでしょうか?
僕は電話を切ってその場から逃げたい気持ちでいっぱいでした。
しばらく無言だった和美ちゃん。
「・・・いいよ」。
「え?」
「いいよ。必要なんでしょ?」
「え・・・う、うん」。
「持って行けばいいの?」
沈んでいる僕と対照的に、まわりではうれしさのあまりマイムマイムしている男4名。
実際僕は、自己嫌悪でつぶれそうでした。こんな気持ちは、それまでで初めてのことでした。
僕は和美ちゃんと、近くの堤防で待ち合わせしました。なにしろブラジャー。人目をはばかります。
やがて、和美ちゃんが自転車に乗ってやってきました。
恥ずかしそうに僕に紙袋を手渡す和美ちゃん。
「これ・・・。洗濯したばっかりだから」。
「・・・あ・・・ありがとう・・・」。
「へへ・・・ちょっと、柄選ぶのに、時間かかっちゃった」。
僕はズキっと胸が痛みました。
「ごめん・・・ヘンなこと頼んで・・・」。
「いいの!また、なにか悪戯に使うんでしょ」。
「え?い、いや・・・・。まぁ、そんなとこ・・・」。
長い付き合い。彼女は本当によく僕のことを知っていました。
「私ね・・。君のする悪戯も。けっこう好きなんだ・・・なんか、他の人と違うもの」。
「・・・・」。
「うれしかった。こんなことでも、私をたよってくれたこと!」。
「かずみ・・・・・・」。
僕はその時、和美ちゃんを抱きしめたい衝動にかられました。
なんと言うか、愛おしくて。
愛おしくて・・・でも。結局それは心の中だけでした。
やがて和美ちゃんは、照れ隠しするように、おもいっきり自転車をこいで走り去りました。
「かずみぃー!」
「なぁにー?」
「あ・・・・ありがとう」。
手をふる和美ちゃんを、夕陽が染めていました。
その時僕には、あのボーイッシュだとばかり思っていた和美ちゃんが、ちょっとだけ奇麗に見えました。


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5章-第23話へつづく







青春だぁぁぁぁあ。
胸キュンしちゃったです。
うーん。和美ちゃん。ナイスキャラ!
ほろっとさせるのうまいですねー。くろわっさん。
おふたかたとも毎度ありがとうございます。
そうですねー。青春です。
どっかほろ苦いところがあるんですよね。この時期ってのは。
当時はなにかってーと恋して、なにかってーとポロポロ泣いていました。
和美ちゃん!!!
わ〜なんか、胸がポカッと温かくなるわ。
「君たちの悪戯が好き」
和美ちゃんなりの、告白かなぁ〜。なんて。
和美ちゃん、悩んだろうなぁ。。。
一番のお気に入りを渡したに違いない!!
思わず「私の場合なら・・・?」って考えちゃった・・・
あほ〜〜〜
って、しゅ しゅごい!!
くろわっさんから、お返しのコメントが入ってた!!!
感動
明日への活力になりました!
まったりとおさらい中。
いいなぁ・・・おっきいとこういう時自信もって渡せて。
あたしなら丁重にお断りさせていただくしか・・・(泣)
改めて読むと。う〜ん、ほんとにママチャリくんて優柔不断ですね〜。
ママチャリ!おまえにはかずみちゃんを抱きしめる義務があったはずだぞ!
・・・・・しかしよく耐えた。