←復習する?
翌朝、グレート井上くんは、ひとり始発駅のホームにいました。
そうです。美奈子さんが東京に帰るので、その見送りに来たのです。
始発の駅は、僕たちの、つまり駐在所のある駅よりひとつ前でしたが、美奈子さんは、お盆のUターンラッシュに備え、出発を始発駅にしていたのです。
Uターンラッシュとは言え、田舎の始発駅のホームは閑散としたものです。
翌朝、グレート井上くんは、ひとり始発駅のホームにいました。
そうです。美奈子さんが東京に帰るので、その見送りに来たのです。
始発の駅は、僕たちの、つまり駐在所のある駅よりひとつ前でしたが、美奈子さんは、お盆のUターンラッシュに備え、出発を始発駅にしていたのです。
Uターンラッシュとは言え、田舎の始発駅のホームは閑散としたものです。
井上くんは、美奈子さんたちよりも少し早く駅に到着していました。
やがて駐在さんの車で送られた美奈子さんが、駐在さんと奥さんを連れ立って、ホームに。
「あら。井上くんひとり?」
奥さんが意外そうに言いました。
「ええ。みんなにも連絡はしたんですが。みんな、昨日、遅かったから・・・って・・」。
「村山くんとママチャリくんは?」
「村山は本家に行くとかで・・・」。
「そうなの・・」。
美奈子さんは、ちょっと寂しそうです。
「あの・・・。冬休みもいらしてくださいね・・・」。
「ええ。絶対に来るわ。みんなにもまた会いたいし」。
駐在さん。
「あー。みんなには会えないかもなぁ。その頃、何人かはブタ箱の中だろ。特に西条とママチャリは”面会”だろうな」。
勝手なこと言いやがって・・・。
「孝昭くん、西条くん、ママチャリくん・・・。ほんっと素敵な仲間がいて、井上くんがうらやましい」。
「ええ。僕もそう思います」。
グレート井上くんと美奈子さんは、本当に普通の世間話のような他愛もない会話をしていましたが、刻々と別れの時間は近づいていました。
やがて奥さんが言いました。
「美奈子。時間だわ。そろそろ電車に乗らないと」。
「うん、姉さん、ちょっと待って」。
そう言うと、
「井上くん」。
「はい?」
「あのね。私こんなエキサイティングで楽しい夏休み、初めて。いろいろ事件もあったけど・・・」。
「・・・」
「姫沼でのことね。ありがと。井上くんのこと、忘れないよ」。
そう言うと、美奈子さんは、井上くんのホッペに顔をよせました。そして
Chu!
行け・・・・!
「ひゃっほーーーーーーーーーーーーーー!」
「井上〜!うらやましいぞーーーー!」
「やったねー!」
「夕子ちゃんのクマくれ〜!」
電車の一車両から、突然飛び出す学生服を着た馬鹿騒ぎ高校生20人!
これには美奈子さんばかりでなく、ホームにいた人たち、みんなが驚きました。
そうです。僕たちは、この時を待って、電車の一車両を占拠し、ずっと身を隠していたのです。
僕たちは、井上くんと美奈子さんの手をとると、その車両へとずるずると引きずり込みました。
いえ。井上くんは、ほぼ荷物みたいに運ばれています。
「え?え?君たち?ずっと隠れてたの?」
僕たちに手をひかれながら驚きの美奈子さん。
「えー。途中、久保がトイレ行った以外はずっと」。
「お、お前ら、ひとが悪いぞ!だって、今日は都合悪いって・・・」
怒っているような、こまっているようなグレート井上くん。
「いや都合悪いのもいっぱいいたんだけどさ」。
「うん。俺、法事の真っ最中にさらわれた。すっげー長グ○だと思われてる」。
「俺なんか入院中」。
西条くんです。そうです。彼はなんとひとりだけパジャマ姿。孝昭くんと僕で、無理矢理脱走させてきたのです。
「い、いつから隠れてたの?」
「んー。1時間くらい?」
「い、1時間も?」
「はい。足、しびれてました。実は」。
実は僕たちは、花火大会を終えた夜中、井上くん以外で集まり、この時の作戦を練っていました。
そして始発をいいことに、1車両を占領。そのまま隠れていたのです。
もし、僕たちの中のひとりでもホームにいれば、キスなどもってのほか、とても告白などできません。それはいちかばちかの賭け事でもありました。
でも。グレート井上くんはみごとに美奈子さんのKissを獲得!とりあえずここまでは大成功です。
やがて車両の窓際に2人を揃って座らせると、僕たちは、各入口へとちらばりました。
再び他の乗客をシャットアウトするためです。
たまに乗り込もうとする人が来ると
「あー。ここ、今、冷房調整中ですよ〜」。
「あ?そ、そう?」
他の車両へと追いやります。
もうひとつの入口には孝昭くんたち。
「あー。ここ、今、霊気に溢れてますよ〜」。
「え?そ、そうなの?」
どういう車両だよ・・・。
そして車内の通路の入口には、それぞれ6名ずつが立ちふさがり、この時期にして車両は完全貸し切り状態。
「井上。いいか。2駅だけだ。2駅、他の乗客をカットするから。うまくやれ。だいたい10分とちょいはある」。
「お前ら・・・・」
「いいか。ちゃんと伝えろよ。伝えることが大事なんだ。結果はなんだっていいじゃないか」。
僕は井上くんに耳打ちすると、隣の車両の入口へと移動しました。
さすがに入口にむさい学ランの野郎がゴロゴロいれば、車両を移動しようとする人はいません。
このために僕たちは、暑い最中、全員(西条くん以外)学ランを着用してきたのです。
広い車両の中には2人だけ。
この様子を見ていた駐在さんが、外から怒鳴ります。
「こ、こら!お前ら!なに好き放題やってんだ!」
「駐在さ〜ん。駐在さんにはフルムーンのときにでもやってあげますから〜」。
「長生きしてくださいね〜」。
「そ、そーいう意味じゃねーーーーー!」
やがて電車は走り出し、窓から手をふる美奈子さん。
「姉さーーーーーん。お義兄さーーーーーん。また来まーーーす。元気でーーーーーー」。
田舎の始発とは言え、Uターンの時期。残りの車両はかなり満席に近い状態になっていました。なにしろ1両足りません。
予定外に、ひとりだけ、大きな荷物を持ったおばあさんが座れなくなってしまいました。
いえ。席は空いていないわけではないのですが、相席できないのです。
「ありゃ。座れない人、出ちゃったな」。
「まかせとけ」。
西条くんは、そう言うなり、3人の学生たちが座っている席へ行きました。
「んー。君たち!!」
「ああん?なんだお前?」
「こ、こいつパジャマだぜ!あったまおかしいんじゃねーの?ぎゃははは」
「ほ、ほんとだぁ。狂ってるぜ!こいつ!」
西条くんを笑い者にする3人。これは西条くんでなくとも、けっこうカチンときます。
「んー。俺、○高の西条。知らない?僕の格好、おかしい?」
「げ!さ、西条!?・・・さん?」
青ざめる3人。超有名人です。西条くん。この路線で知らない人はいません。「工業の札付き」茶木を病院送りにしてから、さらにその名声は響いていました。
「あ・・・いえ。おかしくありません・・。夏は、その、やっぱパジャマっすよね!」
「うんうん。それでねー、君たち何部?」
「じゅ、柔道部ですけど・・・」。
「ん。じゃ、君たち、そこでスクワットして」。
「は?」
「だからー。運動部なんだからスクワットしろっつってんの!それとも僕との組み手のほうが練習になるかなぁ・・。そうかぁ。組み手もいいなぁ」
指をパキパキならす西条くん。
「あ!い、いえいえ。ちょうどスクワットしたいな〜って思ってたんですよ〜。僕たち〜。なぁ!」
「え、ええ!すぐ、すぐやります!いまやります!」
「そうか。よかったよかった。偶然でもそれはよかった!じゃぁ、はじめろ!俺がよしって言うまでやめんじゃねーぞ!」
「は、は、はいーーー」。
いきなり電車の通路で、並んでスクワットする高校生3人。すっごい奇妙な光景です。まわり、というか車両中びっくりです。
「あ。おばーさーーん。こっちの席、ガラっと空いてますよ〜」。
うわさには聴いていましたが、西条。こんなにすごいとは・・・・。
幾度か説明したように、この話は僕の視点で書いていますから、この10分間で井上くんがどういう話をしたのか、まったくわかりません。
しかし、2つめの駅についてみんなが降りた時、グレート井上くんはとても満足そうな顔をしていました。
「みんなーーーーーーー!」
窓から美奈子さんが手をふっています。
「ありがとーーー!また会おうねーーー!」
走り出す電車。見送る僕たち。
やがて電車は見えなくなりました。
「井上・・・」。
「ん。ダメだった」。
「そっか・・・」。
「ダメだったけど、伝えることはできたんだ。あの10分で」。
「うん・・・」。
「生まれて・・・。初めてだったな。恋も。告白も。失恋も」。
「・・・」。
「でも。悪くないな・・・・。恋も。・・・・・・・失恋も・・・・・・・」。
「ああ・・・」。
「ところで西条」。
村山くんです。
「なんかあいつら、まだスクワットしてたみたいだったけど・・・・」。
「あ・・・、よしっって言うの忘れてた・・・・・!」。
「あーあ。あいつらずっとやってるぞ。お前、前のほうに乗ってると思って」。
「そうだなー。今年のあそこの柔道部、強えーだろーなー」。
僕たちは笑いころげました。
もちろん井上くんも。涙は・・・きっと笑いすぎたからに違いありません。
ーーーー5章 最終話 花火盗人(はなびぬすびと)-------------
「これからどうする?」
「ん。ミカちゃん、呼んであるんだ。もう駅についてると思うんだけど」。
「え?ミカを?」
西条くん。
「ああ。絵日記、まだまだ足りないだろ?」
「お前ってやつは・・・・いい家来もって幸せだよ。ホント」。
家来・・・・。もう反論する気失せました。
駅舎の向こう側。タクシー乗り場のあたりに、お母さんにつれられたミカちゃんが、さかんに手をふっていました。
「ケライーーーーーー!」
世間ではめったに聴けません。6歳児が家来を呼んでいる声。
かけよる僕たち。
「あれ?ミカちゃん。今日は”サイジョー”じゃないんだね」。
「んーとね。昨日、カッコヨカッタから、ケライ1号のコイビトになることにしたの!」
「なんだよ。西条、6歳児にも失恋かよ!」
「さらにボーダーライン下がっちゃったな」。
「え!」
「でね!サイジョーは夕子おねえちゃんにあげることにした!」
「いや。それ絶対に無理だから」。
実の兄グレート井上くんが言うのだから間違いありません。
「う〜ん」。西条くんが唸ります。
爆笑するメンバーたち。
ひととおり笑いが途切れた頃。
「あの・・・。これ、みなさんに・・・」。
お母さんが僕たちに1枚の紙を手渡しました。
「それね!今朝、リョウくん描いたんだお!」
ミカちゃんが言いました。
「あ・・・・・」。
そこには夜空に上がる花火が、 2つ。 大きく、大きく描かれていました。
僕たちの上には、遠く、澄みきった空。
そこを一筋の飛行機雲が横切って行きます。
僕たちにとって一番長かった夏が、終わろうとしていました。
※リョウくんの描いたこの「2つの花火の絵」は、今でも森田くんの家の玄関先に飾ってあります
5章[花火盗人] ーーーー完結ーーーーー


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5章 あとがきへ
やがて駐在さんの車で送られた美奈子さんが、駐在さんと奥さんを連れ立って、ホームに。
「あら。井上くんひとり?」
奥さんが意外そうに言いました。
「ええ。みんなにも連絡はしたんですが。みんな、昨日、遅かったから・・・って・・」。
「村山くんとママチャリくんは?」
「村山は本家に行くとかで・・・」。
「そうなの・・」。
美奈子さんは、ちょっと寂しそうです。
「あの・・・。冬休みもいらしてくださいね・・・」。
「ええ。絶対に来るわ。みんなにもまた会いたいし」。
駐在さん。
「あー。みんなには会えないかもなぁ。その頃、何人かはブタ箱の中だろ。特に西条とママチャリは”面会”だろうな」。
勝手なこと言いやがって・・・。
「孝昭くん、西条くん、ママチャリくん・・・。ほんっと素敵な仲間がいて、井上くんがうらやましい」。
「ええ。僕もそう思います」。
グレート井上くんと美奈子さんは、本当に普通の世間話のような他愛もない会話をしていましたが、刻々と別れの時間は近づいていました。
やがて奥さんが言いました。
「美奈子。時間だわ。そろそろ電車に乗らないと」。
「うん、姉さん、ちょっと待って」。
そう言うと、
「井上くん」。
「はい?」
「あのね。私こんなエキサイティングで楽しい夏休み、初めて。いろいろ事件もあったけど・・・」。
「・・・」
「姫沼でのことね。ありがと。井上くんのこと、忘れないよ」。
そう言うと、美奈子さんは、井上くんのホッペに顔をよせました。そして
Chu!
行け・・・・!
「ひゃっほーーーーーーーーーーーーーー!」
「井上〜!うらやましいぞーーーー!」
「やったねー!」
「夕子ちゃんのクマくれ〜!」
電車の一車両から、突然飛び出す学生服を着た馬鹿騒ぎ高校生20人!
これには美奈子さんばかりでなく、ホームにいた人たち、みんなが驚きました。
そうです。僕たちは、この時を待って、電車の一車両を占拠し、ずっと身を隠していたのです。
僕たちは、井上くんと美奈子さんの手をとると、その車両へとずるずると引きずり込みました。
いえ。井上くんは、ほぼ荷物みたいに運ばれています。
「え?え?君たち?ずっと隠れてたの?」
僕たちに手をひかれながら驚きの美奈子さん。
「えー。途中、久保がトイレ行った以外はずっと」。
「お、お前ら、ひとが悪いぞ!だって、今日は都合悪いって・・・」
怒っているような、こまっているようなグレート井上くん。
「いや都合悪いのもいっぱいいたんだけどさ」。
「うん。俺、法事の真っ最中にさらわれた。すっげー長グ○だと思われてる」。
「俺なんか入院中」。
西条くんです。そうです。彼はなんとひとりだけパジャマ姿。孝昭くんと僕で、無理矢理脱走させてきたのです。
「い、いつから隠れてたの?」
「んー。1時間くらい?」
「い、1時間も?」
「はい。足、しびれてました。実は」。
実は僕たちは、花火大会を終えた夜中、井上くん以外で集まり、この時の作戦を練っていました。
そして始発をいいことに、1車両を占領。そのまま隠れていたのです。
もし、僕たちの中のひとりでもホームにいれば、キスなどもってのほか、とても告白などできません。それはいちかばちかの賭け事でもありました。
でも。グレート井上くんはみごとに美奈子さんのKissを獲得!とりあえずここまでは大成功です。
やがて車両の窓際に2人を揃って座らせると、僕たちは、各入口へとちらばりました。
再び他の乗客をシャットアウトするためです。
たまに乗り込もうとする人が来ると
「あー。ここ、今、冷房調整中ですよ〜」。
「あ?そ、そう?」
他の車両へと追いやります。
もうひとつの入口には孝昭くんたち。
「あー。ここ、今、霊気に溢れてますよ〜」。
「え?そ、そうなの?」
どういう車両だよ・・・。
そして車内の通路の入口には、それぞれ6名ずつが立ちふさがり、この時期にして車両は完全貸し切り状態。
「井上。いいか。2駅だけだ。2駅、他の乗客をカットするから。うまくやれ。だいたい10分とちょいはある」。
「お前ら・・・・」
「いいか。ちゃんと伝えろよ。伝えることが大事なんだ。結果はなんだっていいじゃないか」。
僕は井上くんに耳打ちすると、隣の車両の入口へと移動しました。
さすがに入口にむさい学ランの野郎がゴロゴロいれば、車両を移動しようとする人はいません。
このために僕たちは、暑い最中、全員(西条くん以外)学ランを着用してきたのです。
広い車両の中には2人だけ。
この様子を見ていた駐在さんが、外から怒鳴ります。
「こ、こら!お前ら!なに好き放題やってんだ!」
「駐在さ〜ん。駐在さんにはフルムーンのときにでもやってあげますから〜」。
「長生きしてくださいね〜」。
「そ、そーいう意味じゃねーーーーー!」
やがて電車は走り出し、窓から手をふる美奈子さん。
「姉さーーーーーん。お義兄さーーーーーん。また来まーーーす。元気でーーーーーー」。
田舎の始発とは言え、Uターンの時期。残りの車両はかなり満席に近い状態になっていました。なにしろ1両足りません。
予定外に、ひとりだけ、大きな荷物を持ったおばあさんが座れなくなってしまいました。
いえ。席は空いていないわけではないのですが、相席できないのです。
「ありゃ。座れない人、出ちゃったな」。
「まかせとけ」。
西条くんは、そう言うなり、3人の学生たちが座っている席へ行きました。
「んー。君たち!!」
「ああん?なんだお前?」
「こ、こいつパジャマだぜ!あったまおかしいんじゃねーの?ぎゃははは」
「ほ、ほんとだぁ。狂ってるぜ!こいつ!」
西条くんを笑い者にする3人。これは西条くんでなくとも、けっこうカチンときます。
「んー。俺、○高の西条。知らない?僕の格好、おかしい?」
「げ!さ、西条!?・・・さん?」
青ざめる3人。超有名人です。西条くん。この路線で知らない人はいません。「工業の札付き」茶木を病院送りにしてから、さらにその名声は響いていました。
「あ・・・いえ。おかしくありません・・。夏は、その、やっぱパジャマっすよね!」
「うんうん。それでねー、君たち何部?」
「じゅ、柔道部ですけど・・・」。
「ん。じゃ、君たち、そこでスクワットして」。
「は?」
「だからー。運動部なんだからスクワットしろっつってんの!それとも僕との組み手のほうが練習になるかなぁ・・。そうかぁ。組み手もいいなぁ」
指をパキパキならす西条くん。
「あ!い、いえいえ。ちょうどスクワットしたいな〜って思ってたんですよ〜。僕たち〜。なぁ!」
「え、ええ!すぐ、すぐやります!いまやります!」
「そうか。よかったよかった。偶然でもそれはよかった!じゃぁ、はじめろ!俺がよしって言うまでやめんじゃねーぞ!」
「は、は、はいーーー」。
いきなり電車の通路で、並んでスクワットする高校生3人。すっごい奇妙な光景です。まわり、というか車両中びっくりです。
「あ。おばーさーーん。こっちの席、ガラっと空いてますよ〜」。
うわさには聴いていましたが、西条。こんなにすごいとは・・・・。
幾度か説明したように、この話は僕の視点で書いていますから、この10分間で井上くんがどういう話をしたのか、まったくわかりません。
しかし、2つめの駅についてみんなが降りた時、グレート井上くんはとても満足そうな顔をしていました。
「みんなーーーーーーー!」
窓から美奈子さんが手をふっています。
「ありがとーーー!また会おうねーーー!」
走り出す電車。見送る僕たち。
やがて電車は見えなくなりました。
「井上・・・」。
「ん。ダメだった」。
「そっか・・・」。
「ダメだったけど、伝えることはできたんだ。あの10分で」。
「うん・・・」。
「生まれて・・・。初めてだったな。恋も。告白も。失恋も」。
「・・・」。
「でも。悪くないな・・・・。恋も。・・・・・・・失恋も・・・・・・・」。
「ああ・・・」。
「ところで西条」。
村山くんです。
「なんかあいつら、まだスクワットしてたみたいだったけど・・・・」。
「あ・・・、よしっって言うの忘れてた・・・・・!」。
「あーあ。あいつらずっとやってるぞ。お前、前のほうに乗ってると思って」。
「そうだなー。今年のあそこの柔道部、強えーだろーなー」。
僕たちは笑いころげました。
もちろん井上くんも。涙は・・・きっと笑いすぎたからに違いありません。
ーーーー5章 最終話 花火盗人(はなびぬすびと)-------------
「これからどうする?」
「ん。ミカちゃん、呼んであるんだ。もう駅についてると思うんだけど」。
「え?ミカを?」
西条くん。
「ああ。絵日記、まだまだ足りないだろ?」
「お前ってやつは・・・・いい家来もって幸せだよ。ホント」。
家来・・・・。もう反論する気失せました。
駅舎の向こう側。タクシー乗り場のあたりに、お母さんにつれられたミカちゃんが、さかんに手をふっていました。
「ケライーーーーーー!」
世間ではめったに聴けません。6歳児が家来を呼んでいる声。
かけよる僕たち。
「あれ?ミカちゃん。今日は”サイジョー”じゃないんだね」。
「んーとね。昨日、カッコヨカッタから、ケライ1号のコイビトになることにしたの!」
「なんだよ。西条、6歳児にも失恋かよ!」
「さらにボーダーライン下がっちゃったな」。
「え!」
「でね!サイジョーは夕子おねえちゃんにあげることにした!」
「いや。それ絶対に無理だから」。
実の兄グレート井上くんが言うのだから間違いありません。
「う〜ん」。西条くんが唸ります。
爆笑するメンバーたち。
ひととおり笑いが途切れた頃。
「あの・・・。これ、みなさんに・・・」。
お母さんが僕たちに1枚の紙を手渡しました。
「それね!今朝、リョウくん描いたんだお!」
ミカちゃんが言いました。
「あ・・・・・」。
そこには夜空に上がる花火が、 2つ。 大きく、大きく描かれていました。
僕たちの上には、遠く、澄みきった空。
そこを一筋の飛行機雲が横切って行きます。
僕たちにとって一番長かった夏が、終わろうとしていました。
※リョウくんの描いたこの「2つの花火の絵」は、今でも森田くんの家の玄関先に飾ってあります
5章[花火盗人] ーーーー完結ーーーーー


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5章 あとがきへ







もう、うるうるのうるるのうるるです。
いい夏、過ごさせていただきました。
ありがとうございました。
少し前から読ませていただいておりました。第5章、素晴らしかったです。(それ以前の記事ももちろん楽しく読ませていただきましたが。)
エンディングも、ちょうど夏の終わりのこの時期に、夏の終わりのシーン。
井上君の別れ。
りょうくんの絵も連発の花火じゃなしに2発の花火。
これはズルイですよ。泣かされるに決まってるじゃないですか!!
今後も楽しみにしております。無理のない範囲での更新で良いですから永く続けて下さい☆
いやいや。本当にひと夏使っちゃいました。
書いた本人も驚きの長さです。
次は秋物ですね。って、なんか季節限定ビールみたいになってきたなぁ。
まぁ。半ドキュメントの「読ませもの」でございますので、それなりの演出はございます。が、ここに関しては、けっこう筋通り、現実に沿っております。
絵は、本当にございます。2つの花火の。
それにしても、ちょっとコメント文の整い方がただ者じゃないですね・・・・。文章うますぎ・・・。
今後もコメントおねがいしたいのですが、僕の本文よりうまく書かないでください。お願いですから。
西条くんも素敵だけれど、やっぱりこグレート井上くん、ピカイチです!かっこいいしやさしいし頭いいし、なにより良家のお生まれだし(?
5章、堪能いたしました〜
------完結-----の文字見て泣けました。ああ終わったんだなーって。だってここ1ヶ月「ぼくちゅう」と一緒に歩んだと言っても過言ではありません。毎日ページ開くのが楽しみでした。
まるでそこにいるかのような臨場感とテンポに脱帽。
6章お願いしますね!ね!ね!
AIKOさん。はじめまして!
井上くんですかぁ。はい。
実際は、3章で書いたように村山くんのほうが圧倒的人気がありましたが、やっぱり文章で書くと、口べたは不利みたいですね。
でも、やっぱりこの話はママチャリにつきるでしょう!ママチャリに!
Majinaさん。はじめまして。
そうですね。僕も 「完結」の字。書くとうるっときます。
5章に限らず、ほかでもその文字書いたとき、かならず、うるっときます。
なんか。ひとつが終わっちゃったなぁ・・・って思うんですよね。
6章。しょーもない話にもどりますが、ご期待ください。
10ミニッツラバーってこういう意味だったんですね。
10分間の恋人。それも車両占拠!
32話の花火も感動しましたが、こっちもいいですね。なにかさわやかな感動があります。
それにしてもタイトルがいいなー。そのまま歌できちゃいそう。
終わり方も、なんかいいですねー。
二つの花火の絵・・・。
なんか、じんわりきました。
この章で西条くんのファンになりかけてましたが、
最後、井上くんのために車両独占しちゃうとことか、
みんなイイヤツで素敵です。
特に、ママチャリくん(笑)。
いろんなトコで地味に大活躍で、カッコイイです♪
この「車両占拠」は、本当にやりました。
でも、実際「井上くんのため」と思っていたのは、村山くんと、孝昭くんと西条くんくらいなもので、あとは「おもしろいから」です。
他のメンバーの会話があまり登場しないのは、そのためです。
この物語自体、ママチャリの視点で書かれているので、そう見えますが、実際は僕の知らないところで、さまざまなことが行われていました。
でもたいていは「西条くん」中心でしたね。それだけ魅力があったのです。彼には。
10ミニッツ・ラバー。もう、いつ「あゆ」に歌っていただいてもいいくらいです。
あー。そうですねぇ。今度は、コメントに「あゆのサインもらってあげる券」もつけましょうかね!
オファーですか?だからあるわけないでしょ!そんなもの!
これ映画にしたら「電車男」の比じゃないですね。
おもしろくって。
見てみたい〜!!!!!!!!
最高によかったです。
すごくさわやかな読後感です。
でも
寂しくなるなぁ
できればその後のサイジョーを知りたい
と思ってしまう、悪いコです〜笑
くろわっさん、こんにちは
4章から一気読みして、5章読破しました。
ほんとに面白い。傑作だ!!
映画になったら必ず見に行くよ。
こんなのが無料で読めたら、僕のブログなんて、誰も見向きもしないやね。
応援しなくても1位は安泰でしょうけど、念のため。
ポチィ!
電車男ですかぁ。見てない・・・。
ある意味これも電車男なんですが。占拠しちゃってますけどね。
これって今思うと電車ジャック?
なーんだ、訳せば「電車男」だぁ。お気楽。
その後のサイジョー、って、現在のことですかぁ?
うーん。書く事あるかも知れません。
でも、できれば時を超えず、ずっとこの中にいてもらいたい、とも思います。
映画になったらって言っても・・・。まったくそのような話ありません。当然ながら。
でも映画なったら僕も観に行きますね。作者のサイン会とかにも行っちゃうかも。
おもしろいか、おもしろくないかは客観ですからね。
でも、そうなんですよねぇ。タダなんですよねぇ。
これだけ苦労して書いて(笑)。
実は、悲しい結末予想していて、ちょっと怖かったんですが
感動した終わり方で安心しました。
素人で、高校生なのに実際の花火をあげてしまうなんて、
実はかなりおそろしいですよね?
けが人がでなくて、本当にほっとしました。
みんなのかばい合いがステキ!!
皆さんが言うように、是非、映画で見てみたいです。
っていうか、実は読んでる最中はいつも頭の中で
実写版にしてるんです。
残念なのは、皆さんの顔までは想像できないってこと。
それにしても、いいお仲間をお持ちでしたね。
(良くも悪くも、フフッ)
30年近くたっても、こうしてこんなにいい思い出として
残っていて、すばらしく濃い青春の日々だしたね。
西条君、悪さをするけど熱くて暖かい人ですね。
子供の扱い方、とってもかわいいです。
質問させてください。
なぜ、森田君の家に、りょうくんの絵が飾られることになったのですか?
その時のお仲間と、まだ仲良くやっていますか?
こちらの、ぼくちゅうのこと、仲間たちは知っていますか?
すみません、ちょっと気になってしまったので。
では、この先も楽しまさせていただきます☆
>ろすぎさん
お読みいただきましてありがとうございます。
>なぜ、森田君の家に、りょうくんの絵が飾られることになったのですか?
お母様にいただいてから、最も功労であった森田くんにあげることで満場一致で決まりました。
その後もつきあいがありましたので、彼の家におじゃました際、この絵を見つけました。森田くんにとっては、高校時代最高の思い出だったそうです。
>その時のお仲間と、まだ仲良くやっていますか?
一部しか会うことはなくなりました。
すでに30年もすぎていて、全員バラバラです。亡くなった人もいます。
ただ、駐在さんの定年退職の際、ほぼ全員が集まりました。
>こちらの、ぼくちゅうのこと、仲間たちは知っていますか?
ほとんどは知りません。フィクションである部分(特にメンバー構成)が多いので、知らせるつもりもありません。『俺たちはカメ』までですね。それまでは「ノンフィクション」としていました。
この話のどこがフィクションであるか、コメントなどで書かれては困りますから(笑)。
ジェミーと、西条くんだけが「ぼくちゅう」の存在を知っていました。
ご丁寧な、回答どうもありがとうございました。
ますます、楽しみになってきました。
次、いきまーす。
>ろすぎさん
はい。現在7章が終盤ですので、がんばっておいついてくださいね。
花火を上げる、ことは、実は運動会の合図などの花火と、仕掛けがまったく同じなので、それほどに無謀なことではありませんでしたが、それは今だから思えることです。
当時はビクビクでした。
このコメントは管理人のみ閲覧できます
この前半日かけて2回目読み終えました。
やっぱり5章は何回読んでも泣けます!!
5章大好きです!!
そして、「夕子ちゃんのクマくれ〜」にはやっぱり笑わせられます。
孝昭くんキッチリしてますね。
感動をありがとうございました。
はじめまして!! こんばんわw
今日(昨日)このブログを知り、
11時から読み始めてここまで来るのに、
いつの間にか莫大な時間が過ぎていました。
ブログが面白すぎて時間も眠気も忘れてました(笑)
僕も昔はやんちゃで色々な悪戯をやってきたたちなので、
このブログを読んでいたら昔の気持ちが甦ってきて、
毎回とても楽しく読ませていただきました。
花火泥棒は罪にはなんねーの終わりも感動したんですが、
番外編のリョウくんの描いたこの「2つの花火の絵」は、
今でも森田くんの家の玄関先に飾ってあります。の最後にもとても感動し、グワッときました。
あと僕にも妹がいるので、グレート井上くんの感情には共感するところが多々ありました。
クマはあげられませんね(笑)
読んでいて全然飽きがこなく、純粋にもっと詳しく知りたいと思いました。
映画化されたら是非僕を起用してください(笑)
これからもお忙しくなると思いますが、お体に気をつけて頑張ってさい。
長くなってスミマセンでした。
>ことがねさん
こんなとこにコメント入れてたとは・・・・。
気づきませんでしたよー
>この前半日かけて2回目読み終えました。
やっぱり5章は何回読んでも泣けます!!
5章大好きです!!
5章、お好きな方多いですよね。
6〜9章に比べると、ストーリーがまだ単純でわかりやすかった頃ですねぇ。
でも書くときは、これで読者さんいなくなっちゃうなーって覚悟でやってました。
[色:0000FF]>そして、「夕子
孝昭くんキッチリしてますね。
感動をありがとうございました。からね。
デートリッヒ。もう、おわかりかとは思いますが。
>ィヶっちさん
ようこそ、ぼくちゅうへ!!
>今日(昨日)このブログを知り、
11時から読み始めてここまで来るのに、
いつの間にか莫大な時間が過ぎていました。
ブログが面白すぎて時間も眠気も忘れてました(笑)
ありがとうございます。ならびにお疲れさまでした。
長いですからねー。ぼくちゅう。
まだまだまだまだあります。
>花火泥棒は罪にはなんねーの終わりも感動したんですが、
番外編のリョウくんの描いたこの「2つの花火の絵」は、
今でも森田くんの家の玄関先に飾ってあります。の最後にもとても感動し、グワッときました。
これは実際にありますね。たぶん今も。
森田くんには、もうお子さんがいらっしゃいますが、忘れられない勲章だったのだと思います。
>あと僕にも妹がいるので、グレート井上くんの感情には共感するところが多々ありました。
クマはあげられませんね(笑)
そ、そうでしたか。このクマ。ずーっと後ろ(9章)で図解されていますよ。
>読んでいて全然飽きがこなく、純粋にもっと詳しく知りたいと思いました。
映画化されたら是非僕を起用してください(笑)
えっと。なにに?
では、最新話でお待ちしております。